矛先のゆくえ
おかしい……。
急展開で物語が終わりそうです
腰を据えたお茶会
休日。私はアリシアを呼び出してお茶会をしていた。もうそろそろ悪戯のネタも尽きてきたのよね。
……髪切ったり、教科書石に変えるなんて出来ないから!もう心折れそうだから!
と、言うわけで、久々に穏便にオハナシアイをしたいと思う。そろそろ懲りて私のお願い聞いてくれるよね?
「ねぇ、アリシア」
「何でしょう?ベアトリス様」
「そろそろアーサーを諦める気になりました?」
アリシアは目を見開いた。え、なんで驚いてるの?最初に諦めなさいって言ったわよね?
「え、諦めるも何も……」
ん?どゆことよ。まさか相思相愛だから諦める気は微塵もないとでも?むぅ~~っ
私がこわーいオーラを出したら、アリシアはおずおずと切り出した。
「私はアーサー殿下を好きになったことはございませn「ダウト!」」
嘘つき!嘘つき!毎日じゃれあいながら帰ってるくせに!
睨み付けていたら、不意にアリシアが真面目な顔をした。
「ベアトリス様、私は本当に殿下に興味がないのです。信じられないようでしたら、明日ベアトリス様の前で殿下に別れを告げても構いません」
……言ったな~。
「っ!その言葉、覚えておくことね!」
「ええ、もちろんです」
笑顔で返された。心の余裕とか広さとかで負けてる気がする。……悔しいわね。
翌日。昼休み、私たちはアリシアとアーサーのクラスに来ていた。アリシアが有言実行するかを見届けるために。
そして、私は修羅場を見たの……。
「……アーサー殿下。もう、二度と私とお関わりにならないで下さい」
「ど、どうしたのだ?アリシア。私と君は毎日一緒に帰る仲だろう?どうして急に……」
「それは毎日私を追い回してるからですよね。逃げても逃げても捕まえて。私、最近は悪夢まで見ますの。これ以上付きまとえば修道院へ逃げます」
「な、何故そこまで嫌がるのだ。一緒に帰りたい人を探すのは、そんなにおかしいか?」
「嫌がる女性を追い回すのは当然おかしいですわ。それに、さりげなく私を抱きしめようとしたり、無理矢理手を繋ごうとするのも嫌です。ジンマシンが全身に出来ましたわ」
「それくらいはスキンシップとして許されるだろう!」
「それが恋人なら許されますが、ただのクラスメートにするとなると許されません」
「なっ?!私と君は恋人同士ではないか」
アリシアの表情が驚愕に染まる。そして、震えていた。
「ねぇ、酷いなアリシア。私の恋した君に私が抱きしめるのは当然だろう?まさか私をただのクラスメートとしか思ってなかったのかい?」
黙っているアリシアに言葉を重ねるアーサー。……やっぱりアーサーはアリシアに恋してしまったのね。
アリシアの顔は真っ白になっていた。そして、何かをこらえるように言葉を紡ぐ。
「……誰が?……誰と恋人同士ですって……?」
「アリシアとこの私だよ」
涼やかな声で告げるアーサー。
「……け………下さい」
『え?』
「ふざけないでください!アーサー殿下、貴方はベアトリス様という素晴らしい方がいらっしゃるでしょう!私は浮気男に興味なんてありません!」
毅然と言いはなった。ア、アリシア……カッコイイ。当然のことを言っただけなのに……。
アーサーは暫し呆然としていた。
それを見て、アリシアは踵を返した。
スタスタと教室から出ようとする。
しかし、出る直前にアーサーが口を開いた。
「浮気?浮気男だと……。なるほど、私が婚約してるのが嫌なのだな。それならそうと言ってくれればいいのに」
「なっ?!ち、ちがっ……」
ニヤリと笑ったアーサーに対し、何かを悟ってひきつった表情のアリシア。アーサーは何が言いたいの?
「仕方がない、別れたらよいのだろう?ベアトリス、君とは婚約破棄をしよう。何、理由など君が今までやってきた数々を挙げれば認められる」
急に私に飛び火した。はい?!
頭が真っ白になる。コンヤク、ハキ?
見れば、アリシアも真っ青な表情だ。アーサーだけがニヤニヤしている。
「アリシアに嫌がらせをしていたのだろう?私は当然知っているよ?品性が感じられない真似だよね、嫌がらせなんて」
「……っ」
婚約破棄。私が嫌がらせしたことが裏目にでるなんて……。まさか、破棄されるのは想定してなかった。
涙腺も決壊寸前の私にアーサーは追い討ちをかける。
「ねぇ、ベアトリス。品性が感じられない娘を婚約破棄しても問題ないよね?」
「そ、んな……」
た、確かに私は嫌がらせをしたよ。でも、そんな簡単に婚約破棄されちゃうの?品性がない真似はしないように心掛けてきたのに……。
ううん、本当は分かってる。嫌がらせをした時点で品性はないわ。気品あるような嫌がらせなんて詭弁でしかない。だから……自業自得、よね……。
分かってはいた。私が悪かったんだって。でも、どうして?涙が止まらない……。
お付き合いありがとうございました
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