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左利きで悪かったな  作者: @
第一章 理不尽という必然のストーリー
7/20

短いけど長い数メートル

ストックが切れました。

彼女は猫を探して欲しいと言った。その言葉に俺たちは驚愕する


「おい、川内。猫のぬいぐるみとかじゃないよな?」


「いえ、猫です」


否定された


「猫の餌とかじゃないよね」


「猫です」


カヅキの意見も否定された


「と、いうことは本物の猫か?」


「だからさっきからそう言ってるじゃないですか」


これは予想以上のインパクトだ。依頼が普通すぎて俺なんかに頼むなんて割に合わない。なんてことじゃない。

むしろその逆だ。ここがただの普通の一つの街だったら笑い飛ばせただろう。だが、ここは思念体の街。食料は全て既存の食物に似せた何かで味しか再現できてないものだ。そもそも生身の肉体と思念体の肉体では生身の肉体の方が優先されるため思念体の状態では何を食べても空腹感を満たすものでしかない。


何が言いたいのかというと、この思念体の世界には人間以外の生物がいない。牛の肉を使わなくても牛と同じ味が作れる。というか、そういう技術を発展せざるを得なかった。なぜなら、動物は思念体になれないとされているからだ。脳の構造が人間とは違うからダメとかそんなんじゃなくて、なぜかなれないのだ。

獣を使う陰陽師もいたが、あれは元から思念体で作られたものだ。猫又とかの力を受け継いでたりする。

というわけで、動物が思念体になるのは不可能だ。

それが…その定説がこんな予想外な突飛な場所で崩された。


「いや、まて、それはそもそも生身があるのか?元から思念体という線も…」


「生身の肉体あります」


「オウ!リアリー!」


「シンがあまりの衝撃に頭がおかしくなってしまったよ」


「はっ!クールな俺が一体何をしていたんだ」


なにはともあれ世紀の大発見だ。それと対面できたことを感謝せねば


「ってか、私たちじゃなくて警察に任せればいいじゃん。私たちじゃちょっと荷が重すぎるよ」


「それはそうなんですけど、警察の方々は自分の管轄じゃないから無理だって言ってました」


「そりゃそうだろ。警察が猫探ししてるの見かけたら鼻で笑える」


「なのであなた方に頼ろうと…」


申し訳なさそうに川内は言う。てか、なんで俺たちなんだ?


「もっと上級生に頼ればいいじゃないか」


「ただでさえトップの方々と話すなんて恐れ多いのに上級生の方となると…」


トップの価値なんてものは一般生徒にとって先生よりえらい立ち位置にある。その上級生だ。校長先生に気軽に物事を頼めないのと一緒の感覚だろう


「じゃあ、カズマサにも頼んでみなよ。あいつならきっと乗り気で協力してくれるよ」


「昨日の放課後すでに頼んでみたのですが…」


以下回想


「猫探していただけませんか?」


「よっしゃ!任せろ!」


「あの、詳しい習性などは……って感じで」


「なるほど!大丈夫だ!必ず俺が見つけ出してやる」


回想終了


「というわけで正直頼りになるのかどうか…私の情報も頭に入ってなさそうで」


「なるほど…大変だな。後で君から聞いた情報をカズマサにも伝えておくから具体的特徴とか教えてくれ」


「はい。研究所で飼われていた猫で、父がその研究のメンバーなので、その猫と一緒に遊んだりしました。特徴は全体的に白くてふわふわしています。大きさは普通くらいでしょうか?習性として狭い場所が好きなようです」


「ふむ、絵はかけたか?」


「あいよ!ばっちりだぜぃ」


俺が猫の特徴を聞いている間カヅキは猫の特徴をつかんだ絵を描いていた。写真があればベストなのだが生憎思念体は写真には映らない。


「よし、これを学校じゅうに貼ってくれ」


「あいさー!」


そう言ってカヅキは元気良く外へ飛び出していった


「で、川内。俺はトップだけどトップっていうのは学校の秩序を守る役職だ」


「え?どういうことですか?」


「つまり学校外で起こったことは俺たちは対処できない」


「じゃあ、探してくれないんですか?」


心配そうな顔でこちらを見てくる。上目遣いでこちらを見ているため見る人が見ればドキッとしてしまうかもしれない。まあ、俺は何も感じないが


「ああ、普通はそうだ。だから今回はトップとして動けない。でも、うちの生徒はなるべく守ってやりたいからな。まあ、いわゆる無償の救済だ」


俺は俺の言葉に驚く。なんで、こんなことするんだろう。猫探しなんていくら大発見でも俺にとっては無関係で、報酬もなくほとんどボランティアのようなことを俺は今進んでやろうとしている


「本当ですか!ありがとうございます!」


でも、川内の株を上げておいて口コミで俺の評価を上げるというのも悪くないかな


「よし!今から猫の捜索を開始だ」

















とかっこ良く開始の宣言をしたもののやることは地味だ。俺たちがやることは今のところ四つ


『カヅキの描いた絵を可能な限り街に貼る』


『聞き込み調査』


『カズマサに会ったら情報を交換する』


『狭い穴を探したりして直接猫を探す』


といったところだ。結局のところはこういうのは時間がかかる。効率を優先するために俺はカヅキと校門で二手に分かれた


だが、分かれたのは、否別れた本当の理由は効率とかじゃない。


少し歩いて、俺の目の前には警察署、正確には思念街治安維持組織の本部


俺はその中に入り受付のお姉さんに一言告げる


「あれだ。ここにいる奴百人くらい俺にかしてくれないか?」


受付の人は固まる。そりゃそうだ。新手の強盗かと思うだろう。でも、口下手なんだ許してくれ


「あのそれはどういうことですか?」


「そのままの意味だ。ここにいるやつを俺にかしてくれ」


「え、えーと?それはちょっと…え?なんですか?」


言葉の途中でその女性は上司らしき人に奥に連れて行かれ何やらコソコソと何かを話して、また戻ってくる


「あの、こちらにサインしていただければお望み通り百人動かすことができますけどどうします?」


どうしますって言われても


「もともと俺はそのつもりで来たんだ。構わん全員俺によこしてくれ」


「分かりました」







そうして集まった総勢百人の警察。俺がなぜこんなに警察を集められたかはもちろん家の事情で俺はこの街でかなりの権力を得たからだ。まあ、こんな職権乱用みたいなことをすれば親父が黙っていないだろうが今はそれでもいい。


「よし!お前たち今から猫を探してもらう。正真正銘の思念体の猫だ。詳細はこの紙に書いてある。よろしく頼むぞ。見つけたやつには報酬もだそう。では、解散!」


「「「「ウッス」」」」」


みんな元気良くというか暑苦しさすら感じる返事をして解散する。これで、猫を早く見つけられるはずだ。こんな猫探しなんて、足が速いやつ一人より、普通のやつ百人の方がいい。街には警察が必死になって猫探しをするというシュールな絵面で埋め尽くされるだろう。

俺もコンビニでアイス買ってゆっくりしてから猫を探そう


らしくないといえばらしくない。第三者の位置に立ってみると俺の行為はいつも通りじゃない。確かに猫のことについては驚いただろうが対策としては学校に猫の絵を貼って放置というのがいつも通りの俺だ。


何が俺をこんなにも変えたのだろうか?

思い当たる節ならある。カズマサとの出会いだ。あいつと会ってから俺の価値観は少しずつ変化していると思う。大体猫を探すにしても百人の人の運用はあまりにも規模が大きすぎる。だが、俺の感覚はそれに気づかないほど麻痺していた。

ただ今の俺は人を助けるのにこんなにも全力で取り組んで気持ちいい気分だった。しかし、その気持ちいい感覚は油断していたという解釈も出来るのではないだろうか。


だからあんなことが起きたのだろうか


俺は商店街の喧騒の中歩いていく。多分いつも通りの無表情で歩いているだろうが心の中は上機嫌だ。あとでどんなに面倒臭いことが起きようとたった今誰かを助けられるならそれでいい。


(シン…助けて…)


ん?


(シン…)


なんだ?カヅキの声がする。


俺はあたりを見回しカヅキが近くにいないか確かめようとする。しかし人が多く様々な声が入り混じっていて、カヅキの声ももう聞こえなくなったので俺は


気のせいだと判断してその場を後にした



















はい!どうも!カヅキです!

毎度同じ登場の仕方でつまらないですか。そうですか。だけど続けることに意味がある!私はこの登場の仕方しかしないぞ!おー!

まあ、こんな茶番は置いといて、私は今猫を探しています。ちょうど校門でシンと別れてから十分経過した頃だ。

私はちゃんとシンの言った通りに私の書いた絵を街の掲示板に貼り、いろいろな人から情報を聞き、積極的に狭い場所は探した。


「うーん。いないなぁ」


そして、私はたった十分猫探しをしただけで少し飽きてしまった。こういうことには私は向いていないのだ。まあ、何が得意?と言われても即答できる自身はないけど…。

とにかく少し休憩と思って近くにあるベンチに座ろうとした時先に座っている男の子がいた

てか、あれって…


「カズマサ?」


「おお…カヅキか…」


衰弱しきっているカズマサが顔を上げた。うわ、そこはかとなくシワが増えているような気がする


「どうしたの、そんなに弱っちゃって」


多分昨日は放課後からずっと猫を探して疲れているのだろうと私は予想を立てる


「いや、ちょっとさっき弁当を食べたらお腹が痛くなってさ」


予想は外れた。もっとかっこいい予想の外し方はなかったのか。例えば猫を探している間にちょっと抗争に巻き込まれてみたいな…。


「ああ、そういえば、シンと同じで川内さんの依頼をこなしてんでしょ。カズマサが依頼内容をろくに聞かず飛び出して行ったから川内さん困って私たちにも依頼してきたよ」


「え!マジか!悪いことしたなぁ。もちろんお前にも」


「いや、私たちはむしろやる気なんだからいいんだけどさ。そんなことより情報交換しようぜ」


これはシンからお願いされていた事柄の一つだ。カズマサと出会ったら川内から教えてもらったことを教えてあげろと。そして、逆にカズマサからも情報を入手しろ。とのことらしい


「とりあえず、これが私たちの成果ね。一応特徴とかはこの絵に書いてあると思うけど」


私は街に貼るために用意した大量の絵の一枚をカズマサにわたす


「おお!サンキュ!狭いところに行く習性があるのか」


「ところでカズマサの方は何か進展はあった?」


私が問いかけてみると急にカズマサは気難しそうな顔をする。一体何があったのだ?


「いや、実は猫の件はなんの進展もないんだ。俺、なんかヤクザみたいな奴らが抗争しててそれに巻き込まれて色々あったから」


色々ありすぎだろ!どんだけ問題に巻き込まれるんだ。小学生の時もなにかあったらだいたいカズマサが、関わっていたりしたものだ


「そんなわけで猫は何もないんだ。ごめんな」


「いや、大丈夫だよ。じゃあ、一緒に猫探し頑張ろう。シンも頑張ってるしきっと見つかるよ」


「へぇ、あのシンが動いているのか。なんか、らしくないな」


「うん、らしくないと言えばそれまでだけどシンもきっと迷ってるんだよ」


すると、さらにカズマサは首を捻る


「迷う?あいつが?あいつはこの前『迷いがないというのが俺の強みだ』とか言ってたような気がするんだけど…」


この二人が私の知らないところで普通に話していることに驚く。私が初めてシンに話しかけた時なんて


『あの、私編入生だからいろいろ教えてね』


『…失せろ』


『え?』


後で聞く話によるとあれは朝だから不機嫌だったらしいけどそれでも酷くないですか。

その点カズマサは人と仲良くなるのが早い。いつの間にかいろんな人を抱えている

すぐに誰とでも仲良くなることのできるカズマサとすぐに誰とでも険悪になれるシンは意外と釣り合いが取れているかもしれない。


まあ、そんなことは置いといてシンはカズマサに『迷わないことが強みだ』とか言ってたらしいけど確かにシンは迷わない。


「でも、シンは一応人間なんだよ。時には迷うよ」


「あいつが迷うなんて想像がつかないけどなぁ」


「まあ、私も想像つかないけどこの前までのシンならこんな依頼放っておくはずだから」


「そうだよなー」


二人してウーンと唸る。


「私はシンの親友だしサポート役でもあるからなるべく力になってあげようと思うけどね」


私が自分の意見を言うとつられてカズマサも思っていることを言う


「俺はシンのやり方が嫌いだ。だけどあいつは正しいとも思ってる。なら、シンが自分を否定するようなことがあったらぶん殴ってやるってことしかないかな」


その言葉に私は苦笑する


「野蛮だね」


「あはは、友達が道を踏み外しそうになったら無理矢理でも元に戻すのが当たり前のことだろ」


「うん、あんたの場合はそうだね」


「なんだよそれ」


その反応に少し笑う。シンと違ってカズマサは感情を表に出しやすいから分かりやすい


「まあ、とにかく二手に分かれて猫を探そう。シンはそっちの方が効率がいいって言ってたよ」


「そうだな。じゃあ、俺はあっちに行くからカヅキはそっちから行ってくれ」


「了解!」



〜商店街〜


なかなか賑やかな商店街だ。下校中なのか制服をきた学生が多い。


「まあ、狭い場所って言ってたしここなら隠れる場所なんてたくさんありそう。根性いれて探さないと」


まずはこのお店とお店の間にある細い路地。


まずはそこに猫がいるかどうか捜索してみることにした



ズリズリと肩が壁に当たるほど狭い路地。私は細身な方だと思うんだけどそれでも狭い。

これは期待できるかもしれない。お、ダンボールが逆さになって置いてあるぞ。これを持ち上げたら猫が出てきたりして


バッ!


「ミャー」


スッ


ちょっと落ち着こうか幻覚とか幻聴とか精神干渉系能力とか夢幻の力とかかもしれない


バッ!


「ミャー」


スッ


ど、ど、ど、ど、どうしよう。これが本物だったら私どうしよう。どうやって学校まで持って行くの?本物の猫だよ。悪用しようとする奴絶対いるって。黒服の奴らに狙われちゃうよ。私弱いから即死だよ即死。

お願いします幻覚とか幻聴とか精神感情系能力とか夢幻の力とかであってください


バッ!


「ミャー」


スッ


現実は非情だ。どうしようかな。私がこれを持っていたら殺される可能性が出るし、私がもうちょっと強かったらなぁ。

あ!そうだ!シンを呼ぼう。あいつなら速いからすぐにここに来れるし、強いからきっと大丈夫だろう。こうなったら携帯で…


パキャ


私が携帯を取り出してシンに電話をかけようとした時だった。なぜか私のガラケーの携帯電話が上下から圧力を加えたように潰れた。


「な、なに⁉︎どういうことよ」


私の耳はシンが褒めてくれるほどいい。だが、商店街からの喧騒で誰かが近づいてくる音を聞き取れなかったみたいだ。


「なぁ、その猫を渡して貰うぞ」


相手は細身の男。背が少し高いためヒョロヒョロとした印象がある。突けば倒れてしまいそうだ。だけどこの街の強さは見た目じゃ分からない。一人一人理解不能で千差万別の理不尽な能力があるからだ


「すみませんけど、この猫私のなんです。盗むのは犯罪ですよ?」


私はなんだか焦っているようだ。なんでこんな時に挑発みたいなことをするんだ。

だが、男はそんなこと関係ないとでも言わんばかりにダンボールを持ち上げ猫を拾い上げる。


「お前も来てもらわないとな」


「え?」


私はそれに続く言葉を言うことはできなかった。ものすごい力で男の方に引き寄せられて行く。


(この人の能力はただの念力。でも、かなり強い)


この思念体の街では情報源を潰すために殺したりするようなことはしない。殺せないのだから。だから、情報源を潰す最も有効な手段は『攫う』だ。そして、隔離しておけば情報は潰せる。


(やばい!誰か!誰か!!)


狭い路地の奥の光の部分。すなわち大通りにメガネをかけた白い髪の毛の少年が見えた


(シンだ!)


本当に奇跡のように思えた。ここで最後の力を振り絞って声を出さないでどうする


「シン…助けて…」


届いて…気づいて…


「シン…助けて…」


するとシンはその場に立ち止まる


「シン…」


シンは周りをキョロキョロし始めた。


だが、私のことは見つけられなかった。


たった数メートル。たったの数メートルでさえ私の声は届かない。


「うるせえ!黙れよ!」


男の拳が私の顔面にぶち当たり声を出せない状態でも、届くと信じて心の中で言い続けた


(シン…助けて…)


いやぁ、シンが警察を動かすところ雑ですが許してください。僕も口下手なんです。

あと、思念体の食料については某ライトノベルのゲームの世界へGOしたらゲームオーバーイコール死なんてことになっちゃうというやつの世界観で大丈夫です

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