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左利きで悪かったな  作者: @
第一章 理不尽という必然のストーリー
18/20

対となるもの

バトル難しいのでわからないところがあったらどしどしください

思い返せばカズマサとの一回目の戦いは一ヶ月半くらい前のことになる。あの時は情報がほとんどなく新しい戦い方に戸惑ったりしたものだ。だが、俺はあの時とは比べ物にならないほど情報を持っているし武器だって手に馴染んだものだ。でも、油断はできない。なぜなら人は一ヶ月半もあれば変わることができるからだ。


さて、なぜこんなことを言ったのかというと、負けるとはいえどうやら文化祭の一つの出し物みたいになっているらしく客が大勢俺たちの戦いを観戦しに来るらしい。そこで俺があっさりと負けてしまっては興ざめもいいところだ。だから、最初は本気で戦う。多分カズマサも俺の本気ごときですぐにやられるような鍛え方はしていないはずだ。そして、ここで一旦俺がカズマサより優勢に戦えていたのならばなお良い。逆転勝利なんて華があるだろ。


そう考えているうちに戦う場所、カッコつけて言うとバトルフィールドの一歩手前までたどり着いた。一旦そこで立ち止まる。面白いことに思念体の試合は他の格闘技の試合と違って始まる時間が明確に決定されていない。この、バトルフィールドの中に入った瞬間に戦いがスタートするのだが、その中に入るタイミングは個人の自由だからだ。そもそも思念体の試合というのはルールがほとんど無い。相手を殺すか気絶させるか降参させるかの三つで勝敗が決まる程度のルールしかないはずだ。それ以外についてはフィールドを出なければ何の武器を持ってもいいしどんなせこいことをしてもいい。

まあ、これが思念体の試合の売りだ。試合という名の殺し合いなんて生き返ることのできる俺たちくらいしかできないだろう?そんな刺激的すぎる刺激を求める人はたくさんいる。

話がそれたな。つまり何が言いたいのかというとこの一辺500メートル高さ30メートルの箱の中に入るタイミングは自由でこれが勝敗を分けることだってあるということだ。


「おーい、早く来いよ」


でも、あんなに箱の中で堂々と構えられるとタイミングを慎重に選んでいた俺がバカなような気がして気が抜ける。いち早く箱の中央に立って隙だらけの構えを取るなんてどれだけ自殺志願者なんだ。


「はぁ、今回は見せ物みたいな感じだから最初は堂々と戦うか」


そう言って俺も歩いて箱の中央に立った。そのことについてカズマサは首を捻る。


「どうした?質問があるなら受け付けるぞ。どうせじきに話す暇さえなくなるわけだしな」


「そうか、なら遠慮なく言うけどさ。今さっきの状況めっちゃ先手を取れるチャンスだったのになんで普通に歩いてきたんだ?」


ん?もしかして、中央で待っていたのは見せ物として盛り上げるための気遣いではないと。であれば、あえて隙を見せることでその隙をつかせカウンターを狙っていたということか?それとも攻撃をどうにか回避して先手が取れるというアドバンテージを失敗したことに対する精神的なダメージを受けさせるためか。なにはともあれ、こいつ、やはり前よりも強くなっている。(実際はさっさと負けたかっただけです)


「まあ、なんとなくだ」


答えをぼやかす。相手を全力で警戒する。今馬鹿正直に答えていたら俺の精神を鷲掴みにされそうな脅威がカズマサにはある。


「まあ、別にいいけど。さ、始めようぜ」


どうやら一応この回答で納得してくれたらしい。カズマサは左腰に納めてあった刀を抜く。それは灰がかかったようなくすんだ色の少しおどろおどろしい刀だった。明らかに学校からレンタルできるものじゃない。

こちらも刀を抜く。俺の黒刀は刀身が真っ黒でまるで闇を刀に内包しているかのような恐ろしい刀に見える。一言で表すと妖刀だろうか。でも、実際はそんなことはなく、妖刀のように癖の強すぎる刀とは真逆で俺にフィットする脅威の万能性を備えている。パワー重視とか、スピード重視とか、そんなんじゃない。バランス型。それがこの刀だ。


「3カウントで始めるぞ」


「ああ、いいぜ」


(俺とカズマサとの距離は数メートル。でも、向こうも策を講じているはずだ。ただまっすぐ馬鹿正直に行くだけでは回避又はカウンターを食らってしまう)


「3…」


(勝手にカズマサがカウントをし始めた。これでスタートのタイミングの主導権をカズマサに握られたことになる)


「2…」


ここで俺は動き始めた。ただの口約束を守る方が馬鹿馬鹿しい。先手必勝だ。

まっすぐカズマサに向かって走る。ここは不意をついた事になるので最速のルートが好ましいのだ。

そして、俺の刀はカズマサの首に正確な挙動で近づく。が、やはりというか、あと少しというところで別の刀に阻まれる。


だが、この程度で怯む俺ではない。ガードされた瞬間に刀を引き視線を使ってフェイクをかける。その視線にカズマサは釣られる。


(よし、フェイクにかかった。だが、ここで攻撃してもガードされるだろう。ここはさらに揺さぶるべきだ)


フェイクでできた隙を攻撃に割り振らずに次にした行動は…真上に刀を投げるというものだった。

カズマサは戦いに慣れていない。この試合中も黒く目立つこの刀を目で追っていた。確かに刀は明確な殺意を持っているし殺傷能力も高い。当然それを警戒するのが普通だ。でも、俺と戦闘する場合、本当に警戒すべきは刀なんかじゃない。俺の足だ。そんなことはカズマサにも分かっているだろう。しかし、見るからに強そうな殺せそうな刀が一番の脅威だと無意識に思い警戒してしまうのはもはや本能に近い。

だから、カズマサは上に放り投げた刀を目で追った。戦いの最中に敵を見失うなんてタブーもいいところだ。


俺は素早くしゃがみ込みカズマサの視界から消えると同時に鋭い足払いをした。


カズマサは大きくバランスを崩す。その、大きな隙を逃すわけがなく、しゃがんだまま手を床について、バッタのように左足をたたみ、カズマサの鳩尾を…


ドン!


クリーンヒットだった。カズマサの体が直線的な軌跡を描いて壁に激突した。そして、滑り落ちる。


「オェ、ガハッ、ハァハァ…ゲッホッ」


相当なダメージだったらしい。確か、あいつは筋肉を強化して防御力もあげられたはずだ。多分それも完全には間に合わなかった。口から絶え間無く血が流れている。かなり痛そうだ。


…つまり、チャンスだ。


もう、カズマサを蹴った瞬間には次の行動に移っていた。すでに地を蹴り痛みで震えているカズマサに秒速100メートルの飛び蹴りを放つ。

ドグワシャという音がこの箱に響いた。


(?。かわされたか。俺が蹴ったのはただの壁だ。反作用で足を少し負傷したか。まあ、戦いに支障きたすレベルじゃない。それよりカズマサの位置だ。一体どこにいる?)


そう考えているとそっと優しく首のあたりに少し暖かい何かが触れた。


「放電!」


パリッという静電気のような感覚が俺を襲う。たいした威力はない。所詮体に流れている電気を体外に放出しただけの攻撃とすら言えないようなものだった。そもそもカズマサは右手で首に触れ、そのまま生体電気を体の外に出すというこの行動は攻撃のつもりで出したものではない。

軽い電気を首に食らった俺は体をビクリと体を震わせる。そう、これが狙い。カズマサは俺に隙を作ることを狙った。


(少しやばいな。どんな攻撃を仕掛けしてくるか…。ここは完璧に受け身の姿勢で大丈夫だ。ん?左足の筋肉が…)


そう思った瞬間その左足が俺の横腹に迫った。すでに致命傷の攻撃を受けているにもかかわらずその攻撃はあまりにも速く鋭い。その蹴りを俺は素早く両腕を使って力のベクトルをわずかにそらし、全力で受け流す。その後バク転と後方宙返りをして大きく距離をとった。


その時俺の目の前に上に投げた黒刀が落ちてきた。


(基本カズマサの攻撃をまともに食らったらやばい。ガードしても強すぎる威力を完璧には抑えきれない。だから、威力を殺すのではなく受け流し自分に当たらないようにする技術を鍛えてきた。これはお前を倒すためだけに得た技術だ)


カズマサは自分の刀を構えるとバリバリと体に電気を流し、あの超高速の移動で俺に接近してきた。だが、その移動から放たれる単純な上段からの攻撃を焦ることなく軽々と刀を使って受け流す。こんな高速で動いて、こんな超威力のパワーを受け流せば当然力があっちこっちで暴れまわり安定しない。バランスが崩れるということだ。カズマサは両手で頭と胸をとっさに守れるような位置に両手を構える。

しかし、もともと俺は急所を狙ってなどいなかった。俺は左手に持っている黒刀でカズマサの四肢を浅く小さい傷を多くつける。そして、最後にフィニッシュとして蹴りを入れようとしたがそこは必死にかわされ、バックステップで距離を取られた。


(お前が高速で動く前兆として無意識に体外に電気を放電している。そして、その移動の後は必ずフェイクなしの単純な攻撃だ。これは別にこの攻撃に絶対の信頼があるとかじゃない。この攻撃しかできないはずだ。奴は思念体になって日が浅い。ということは能力に慣れていないということだ。急に車のフロントに縛られて「今から最高時速で走りますから目の前の敵に攻撃してくださいね」なんて言われているのと同じだ。むしろ、攻撃行動ができているだけでもすごいことだ。だが、高速移動するタイミングが分かり、攻撃手段も分かり、それに対抗する方法も知っている俺にとってはその攻撃はご褒美と変わらない)


「いいか、カズマサ。俺に勝ちたかったらこの前使った攻撃は使わない方がいい。俺にはそんなもの効かない」


俺の宣言にカズマサは「ううっ」という返事しかできない。それもそのはずだ。今カズマサは蹴りを食らうより大変な状態だからな。


(もし、カズマサが大ダメージを食らったらどうなのか。それは誰でも困ることだろう。動きは鈍るし痛みで正確な判断がしづらい。でもカズマサにはそれに加え能力自体に自らの体を犠牲にする形で力を得ている。その方法は体に電気を流すことによって筋肉を刺激するという方法だ。もし、その電流が体の傷に流れてしまったとしたら激痛だろう。そうだとして、カズマサが一番電流を流しそうなところはどこか。それは手足だ。機動力と攻撃の基本となるこの部位に特に電流を流す。だから、俺はこの部位に細かく傷をつけた。力を使えば軽傷は重傷になり、使わなければパワーで負ける)


俺はカズマサに近づき無理のない軽い攻撃を繰り出す。

しかし、こんなに軽い攻撃だというのについてくるのが精一杯と言った感じだ。それもそのはず、カズマサはすでに蹴りで腹を剣戟で手足を負傷しているのだから。それに比べて俺は無傷。


「オラァ!」


苦し紛れの電流を流しての刀による攻撃。その度に傷は広がり血は流れる。カズマサの刀は大したことない。学校でレンタルできる剣よりは強いのだが、この黒刀には劣る。


(やけになったか。いや、この状況じゃこれが最善か。まあ、あとはこれもかわすだけで決着がつく。こんなに冷静じゃない状態だ。かわすだけなら簡単だ)


「はぁ!リィャア!」


この気合も虚しく聞こえる。誰もがこんな戦い俺が勝つと思っているだろう。でも、奴は諦めていない。何かがあると信じている。だから、油断できない。

この虚しい気合が尽きるまで俺は気を抜いてはいけない。


カズマサはいつの間にか刀を両手で持っており、俺を上段から攻めてきた。俺はそれをたった左手一本で持った刀で受け止める。

すかさず防御されたというのに体勢を立て直し今度は横から水平に攻撃しようとしてきた。


(なんだ?何かが違う)


カズマサが水平に斬るモーションに入った瞬間そう思った。でも、一瞬のその思考は合っていた。


『ぎゃあああああああああああああ』


急にカズマサの刀が叫んだ。


なぜか俺の背中に悪寒が走る。


防御の体制からとっさに回避行動を取る。


ヒュンと後ろにバックステップしたため俺の目の前を刀が通る。


(ふぅ、一応攻撃は回避した。ひとまず距離をとって…)


再び悪寒がした。左からだ。でも、左には何もない。いや、しかし何かがあるような…。しいて言うならば俺が感じたのは透明な何か…


ドゴォ!


そこまで考えたところで急に壁まで吹き飛ばされた。


俺の言った透明な何かは本当にそこにあった。なぜなら、今ちょうどその何かに殴られたのだから。


(くっ、なんだ今のは、俺をこんなに吹き飛ばすなんて…。内蔵もいくつかやばい。外傷もなかなかだ)


危機を感じた。前を見る。何もない。でも、ある。


グォン!


追撃。壁にめり込んで身動きの取れない俺に透明ななにかはさらに攻撃を重ねてきた。


俺はなんとか壁から抜け出し床に手をつく。


息が荒い。傷も深い。ボロボロだ。いろんなやつと戦ったことがあるがこの攻撃は未知だ。わけがわからない。こんなことができるのは妖刀くらいだろう。


あの攻撃をもしカズマサがしたのならば多分あの刀は俺のやつと同スペックかそれ以上だ。そんなもの作れるのはニーナしかいない。


安定と不安定


名刀と妖刀


全く綺麗に対になるように作るなんて律儀な先輩だ。


「なら、なおさら簡単に倒れるわけにはいかないな」


俺は刀を鞘に戻した。



カズマサの刀の秘密は次で説明いたします。


技紹介


カズマサの放電


生体電気を故意に外に出す技。射程は1センチ程度で威力もないし電気を流すためこちらにダメージがあるというリスクがあるが当たったら相手に大きな隙ができる。



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