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左利きで悪かったな  作者: @
第一章 理不尽という必然のストーリー
12/20

優しさでさえも切り刻む

いやー、今回は少しシンっぽい話ですね。こういう話はずっと言葉だけで続けられそうで怖いです。

文化祭の二週間前になると専用の教室ではなく普通の教室に行かなければならない。

ニーナが作った文化祭委員会がトップに対して与えたルールだ。


そして、今日がちょうど文化祭二週間前。さあ、物語を進めて行こう


〜シンの家〜


このシンの家という書き方に違和感を感じるがあえて触れない方がいいだろう。

何はともあれ俺の家だ。現在の時刻は5時30分。早いと思うか?俺も早いと思ってる。なぜこんなに早くから起きているのか、それを説明しよう。

まず、同じ一年生のトップであるカズマサは一時期普通に授業を受けていた期間がある(と言っても数日だが、あえてそこには触れないで欲しい)


しかし俺の場合は全く普通授業を受けていない。入学式を終えたらすぐに校長に呼ばれ、トップの仲間入りだ。

つまり、普通の授業を受けるのはこれが初めてということだ。

新しいことに取り組むとはこんなにも緊張するものなのか。いや、緊張とは違う。気分が高揚している?

例えるとするならば遠足の前の小学生。又は修学旅行前の高校生といったところか。


フッ、だが、この時間に学校に行って一番早く教室に到着してしまえば、後からきたクラスメイトに「なにこいつ?もしかして、初めての授業で興奮してんのか?キモッ!」と思われるはずだ。

これではいきなり印象最悪だ。これから二週間お世話になるクラスとしてはなるべく友好的にクラスメイトと接していきたい。

ならばどうするのか。それはみんなと同じような動きをするしかないだろう。

俺の調べでは8時30分に自分の席に座ってないと遅刻ということになっていたはずだ。にもかかわらず、学校に来る時間帯がギリギリの人は多い。多分8時20分からの十分間が一番学校に到着する生徒が多いはずだ。この時間を狙って登校すれば、好ましい印象を与えることができるだろう。俺の家から学校まで歩いて三十分。走ったら一瞬で着く。登校は普通に歩いて行ってるし今日もそのつもりだ。ならば7時50分に家を出るということにしよう。


これで予定は決まり、その時間まで待つのみ…なのだが。


先ほど言ったように現在時刻5時30分。家を出るまで二時間以上の開きがある。そう俺は今暇つぶしをしなければならない状況なのだ。まあ、特に大したことのない事柄だが人の価値観は十人十色だ。トレーニングをしたいが時間通りに終わるとは限らない。勉強をするという手もあるが時間通りに終わるとは限らない。

没頭しすぎると時間を忘れるためこの二つは暇つぶしには向いていない。即除外だ。

だとすれば、他にするべきことは何か。文化祭のことを考えるか?いや、二時間も持つわけがない。読書なんてどうだろう?これも没頭してしまうためダメだ。テレビを見るというのは?これは俺がテレビを持っていたとしたら有効な手段だったかもしれない。だが、生憎テレビはこの家にはない。却下だ。ならば…………………………………




というわけで、長い俺の中の暇つぶしの手段の選択はついに決着を迎えた。

今回暇つぶしとして選んだものはゲームだ。家にゲーム機は置いていないが俺にはスマートフォンというものがある。このスマートフォンで暇つぶしとして使えるアプリをダウンロードすれば、確実に暇を潰せるはずだ。


さて、何分くらい暇を潰せばいいのだろうか。


俺は壁にかけてあるそこそこの大きさの時計をチラリと見た


8時20分……






笑えない冗談は嫌いだ






〜登校の道〜


俺はさっきまで家で暇つぶしの手段を考えていたが、まさか暇つぶしの手段を考えることが暇つぶしになるとは思っていなかった。何かに没頭すると時間を忘れるという俺の性格を考慮して暇つぶしを考えていたのにその考え事に没頭して時間を忘れるとはなんとも情けない話だ。

しかし、今はそんなことに嘆いている暇はない。今度は暇がないのだ。


たとえ、8時20分に家を出たとしても間に合うのが俺の能力だ。本来ならば落ち着いて歩いて通っていたであろう道をかなりの速さで走っていく。流石に全速力で走ってしまうと周りにも危害を与えてしまう可能性があるためそれなりの力で走っているが、それでも速いはずだ。


ほら、適当にボーッとしながら走っていたのにすでに校門が見え始めてきた。

靴の底を地面に擦りつけギュッと校門の前で急ブレーキをして止まる。


む、校門前で挨拶をしている先生たちが口をポカンと開けてこちらを見ている。

俺が何かしたのだろうか?一応俺も一般生徒だ。明るく元気に挨拶をしよう。


「おはようございます」


思ったより暗い感じになってしまった。朝だしみんなこんな感じの挨拶だろう。走って疲れているし仕方のない出来事だ


「お、おはよう」


む、やはり何かまずかったのだろうか。若干先生の挨拶がぎこちない。


いや、そんな風に考察している場合じゃない。8時30分までに席につかなければ遅刻だ。早く来るのもダメだが遅刻は最悪だ。初日から学校に遅刻したらいじめられる。


俺は時間もないので一年一組の教室まで走っていく。すでに教室の位置は把握済みだ。まあ、周りには歩いている生徒もいるので時間はまだ余裕があるのかもしれないがそれでも一応急いでおく。

そして、とうとう辿り着いた一年一組の教室。俺の目の前にある扉。この扉を開けた瞬間に俺の新生活が始まる。

さあ、勇気を出してこの扉を開けよう。新しいことを怖がるな。


ガラッ


俺は心の中で無駄に長い決意表明をして教室のドアを開けた。すると騒がしかった教室が急に沈黙に包まれる。


む?これは……俺が悪いのか?知らない奴が入ってきてキモッみたいな感じなのか?


「おーい!シンこっちこっちぃ」


そんな重苦しい空気の中明るく俺に話しかけてくる奴。こんな素晴らしいやつは誰だと思い声のした方を向くと見慣れてしまった顔があった。


「なんだ、カヅキか」


ここのクラスで最も親しいであろう人物…カヅキだ。


「なんだとはなんだ。シンのせいでクラスの空気が悪くなったからわざわざ空気を戻してあげたのにひどいなぁ」


「それほど空気が変わったようには思えないな。逆に悪くなっているような気もする」


すると、カヅキはぐいっと俺に近寄り、少し怒った風に雰囲気を出してきた。


「なにおぅ!そんなことはないはず。ってこんなことしてる場合じゃないし。シンは自分の席がどこかわからないだろうから良心で教えてあげようと思っていただけなのにどうしてこんなことに…」


「む、そういえばどこに座ればいいか把握してなかったな。もうそろそろ始業のチャイムがなる。知っているなら教えてくれ」


「むー、頼む奴の態度には思えないけど…まあ、いいや。シンの私の隣だよ。一番後ろの列の黒板から見て右から三番目のところ」


「ん、どうも」


偉そうな口ぶりでそう言ってやっと自分の席という教室の中での自分の領土を手に入れることに成功した。俺の左隣にはカヅキが座っている。そのまた左隣(カヅキにとっての左隣)にはカズマサが座っている


「カズマサを一番後ろの端の席にして大丈夫なのか?授業中に居眠りするだろ」


会った瞬間皮肉を言う俺。いや、最初は普通に嫌がらせ目的で言ったが、本当に居眠りしそうだ。根拠の無いことだと思っている。だが、野球部が積極的なイメージがあり、放送部は消極的なイメージがあるように、カズマサにも授業中に居眠りしそうなイメージが俺の中で纏わり付いているのだ


「朝から悪口とはお前らしいけどさ。久しぶりの授業だぜ。全てが懐かしくて寝てる暇なんて絶対ないね」


うむ、なぜこんなにも説得力がないように聞こえるのだろう。まあ、本人もああ言っているし、ひとまず有言実行できるのか観察しておこう





既に俺が教室に入って来た時の静寂は取り払われていた。あの重苦しい沈黙は何だったのかという謎が残る。だが今それを考えたとしても俺一人の力では答えが出るはずもないので諦めて、頬杖をつきながら始業のチャイムがスピーカーから煩く鳴るのを静かに待つのだった


〜朝のHR〜


チャイムがなれば何かが変わる。それは全ての学校の法則だろう。それは例えば授業の開始、終了を知らせるものであったり、下校を急かすものであったりと多種多様だ。で、今回のチャイムによって何が変わったのかというと、上の方に書いてあるように朝のSHRが始まった。

担任の先生であろう人物が教壇で連絡事項を伝えようとしている。その内容は俺にはあまり関係のない話ばかりなので聞き流していた。いや、このまま聞き流していたかった


「あの、海堂君?」


唐突に横から声をかけられた。カヅキではない。右隣に座っている女子生徒から話しかけられたのだ。

補足だが俺の名前は海道 進だ。忘れている人もいるだろうから一応な。

まあ、そんなことはどうでもいいとして、とにかく俺は話しかけられたので首だけそちらに向け彼女を見る。

可愛い女子だった。少なくとも世の男子にこの子の容姿を見せると大多数が俺と同じ感想を抱くだろう。

ただ、容姿がいいだけで優秀ではないみたいだ。


「お前は今なんの時間か理解しているか?」


「え、えーと」


ただ少し話しかけただけなのにいきなり冷たい声で返事を返されたら戸惑うだろう。カヅキからは俺のことを人と険悪になるのがうまいという評価を受けている。多少心外だが否めないのも事実だ。実際に今その状態なのだから。


「もしかしたら君の現状把握能力が極めて低いのかもしれないから教えてやるが、今は朝のHRの時間だ。君にとって必要な情報、俺にとって必要な情報が先生から伝えられる。そんな時間のはずだ。そんな時間に話しかけるとは俺の作業を邪魔したいのか?もし、良心で話しかけてきたとしてもTPOをわきまえろ」


「あ、うん、ごめん」


そこからは先ほどと変わらず先生の話を聞き流す作業に移った。


〜朝のHR終わり休み時間〜


最初の授業は数学か。


バックから教科書やノートを取り出し綺麗に机に並べる。


よし、授業だ。皆のレベルに追いつけるか心配だ。今回はとにかく頑張るしかないな。


「あの、今なら話しかけても大丈夫だよね」


この意気込んでいる時右隣から声をかけられた。この声には聞き覚えのある。

そちらに首だけ動かすと、予想通りというかなんというか、HRの時間に話しかけてきた女子生徒がいた。

実際には授業前の興奮している時にあまり話しかけて欲しくなかった。しかし彼女を今拒絶する理由も特にない。


「ん、大丈夫だ」


俺が肯定の意思を示すと女子生徒はホッとしたように胸を撫で下ろした。なんとなく先生のところに提出が遅れた課題を職員室に持って行って先生に渡す時意外にも怒られずに済んだといった感じの反応だ


「あの、私このクラスの学級委員の川崎 咲。わからないことがあったらなんでも聞いてね」


これを俺以外の誰かに言えば普通の挨拶だ。その後に「こちらこそ、よろしく」など言えば和やかな一風景となっていただろう。だが、俺はどうしても一つのフレーズが気になった。


「川崎さん。君は今自分のことを学級委員と言ったが、なぜだ?自分がこのクラスで一番偉い存在だと誇示したかったのか?それともただ単に俺とは事務的に付き合うだけでお前なんてどうでもいいと暗に言うためか?どっちにしろ俺にとってあまりいい印象はない」


「え?いや、別にそんなつもりは…」


「君にそのつもりがなくても俺はそう捉える。ただの価値観の相違だ。俺は少なくとも学級委員としてではなくてクラスメイトとして接するからそのつもりでいてくれ」


「う、うん。分かった…」


カヅキは俺が人と険悪になるのが得意と言った。それは間違いかもしれない。本当は人と険悪になることしかできないと言った方が正しいのかもしれない。


最初から隣の席の女の子と険悪になった俺。だが、新しい学校生活ではこんなものは前哨戦だ。さあ、本線への扉を開ける前に少し息抜きをしようか。


つづく〜




このシンのベースは完璧に僕です。この話を見ていると僕ってこんなにひどいやつだったっけ?と思ってしまいます。実際はコミュ障すぎて「あっ…あっ…」ってなるだけだと思いますが。

まあ、ともかくこの言葉遊びは次の話に持ち越しますので読者の皆さん耐えてください。

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