へこへこさせてやるんだからっ!
小説の初心者は、「A面B面でつくったほうがいい」と友人に聞きました。
ホントだろうか? 奴め、ワタシに嘘を教えたんじゃないだろうな!?
……と、いうわけでその他もろもろ感想ください。
大量の食料と水を詰め込んだ袋。
よっこいしょっ、と息を吐いて、手に持っていたそれらの荷物を机におろすと、カトランはミスティルを見た。いや、睨んだ。
「――で、なにが、誰のせいだって?」
「い、いや、あ、あの…………え、ナンノコトデショウカ?」
声震えながらも考えた結果、ミスティルはとぼけることにした。所詮、婆だ。問題ない。
「ほう――あんなにはっきりいったのに、とぼけるっていうのかい。随分な度胸だね」
「(げっ、やっぱり聞こえてた!)師匠! どうしてそんなにいっぱい買い物したんですか!? ご旅行ですか!?」
「今度はごまかすのかい。まあいいさね。これは少し『入り用』で買ったんだよ。おまえには関係ないものさ」
「でも……」
――これ以上は聞くな。
少し苛立ち気に見るカトランの目には、明らかな拒絶の色が含まれていた。
「…………」
ミスティルもその意図を解釈する。とばっちりは御免だ、と。
そうして、この話は飽きたとばかりに肩をすくめ、カトランはぐるりと店の中を見回した。
「今日は――なにも売れてないようだね。……客は何人来たんだい?」
「え!? (ギクッ)ゼ、「ふう」……ゼロです」
急に触れたくない話題に触れられ、びくっとしたミスティルが言い終わる前にカトランはため息をついた。
わかってるなら聞くなよ。
やれやれとカトランは呆れながら言う。
「……まったく。少しのあいだ留守を任せたら、これだ。あげく、それを人のせいにするとは情けない。おまえには商売の才が皆無だね」
「す、すみません、師匠」
「まさか、客一人――男一匹捕まえられないとはね。……女の色気も無いんじゃないかい? 貧相なのは胸だけじゃなかったみたいだね」
「ぐっ……す、すみません、し、師匠」
言いたい放題されながらも、ミスティルはぐっと耐えていた。口元がひくついてはいるが。拳が思いっきり握られているが。胸が小さいのは事実だが。
――このクソババア! いつかヘこへこ頭下げさせてやるんだからっ!
腹の中で考えていることはまっくろだが、どうにか溜飲を下げる。
今だけ、今だけだ。そう自分に言い聞かせて、ミスティルは姿勢を正す。
自分の目的のためだ――
「し、師匠! き、今日もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますっ!」
「はいはい、わかったよ。先に工房で準備して待ってな。あたしは部屋に荷物置いてくるから」
ひたすらに頭を下げるミスティルを横目で見ると、手をひらひらさせながら二つ返事でカトランは店の奥へと消えていった。
「…………」
そのとき――ミスティルはカトランに気づかれないよう、上目遣いでそれ(・・)を見ていた。
去り際に見せたカトランの薄気味の悪い笑み。皺だらけの顔に、不釣り合いの艶めかしい銀色の髪をなびかせ、闇影に解けて消えていく婆。
その姿はさながら、
――魔女、だった。