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8.地下に眠る石像

「……ん」


 気がつくと、私は寝台の上にいた。


 ここ最近で見慣れた、魔王城のふかふかの布団。そのいつもどおりの光景に、思わず安心してしまう。


「ふぁぁ……なんだ、夢か。良かったぁ……」


 びっくりした。白猫に化けた魔族に誘拐されて目の前で魔族二人殺して平然としてるネロっていうイカれたやつに色々話聞かされて……いや忙しすぎんか私の夢。


「なんだかやけにリアルな夢だったな、特に魔王城そっくりの城……」


(……ん?)


 魔王城そっくりの城。嫌な予感がする。


ガバッ!


 ベッドから起き上がり、急いで窓に向かう。カーテンを開けるとそこには。


 緑。鬱蒼と茂った木々。


 要するに一面、森。


「……うわぁぁぁ」


 声にならない悲痛な叫びとともに、私は膝から崩れ落ちた。


(夢じゃ、無かったぁっ!!!)


 つまりこういうことだろう。


(この偽魔王城の執務室でネロの話を聞いた後、気絶させられて)


 そのまま、すぐとなりのこの部屋に連れてこられたと。


「そっくりだから全然分からなかった……っていうか私、これからどうすれば」


(ネロの話を聞く限り、私はノワをおびき出すための餌……ってことだよね)


 「弱み」とも言っていた。確かにそれはその通りで、だからこそ。


「……結局、迷惑かけることになっちゃうな」


 なんの力にもなれないから、せめてお荷物にだけはこれ以上ならないと決めたのに。


「私のことなんか見捨てて、これまで通りに」


 呟いてみるも、心のなかではそんな事ありえないと分かっている。


(なんて、そんなことする人じゃないよね。ネロも言ってたし)


『あいつはきっと来る』――と。

 

 たとえ敵であっても、認めるくらいには……それくらいに、ノワは仲間を大切にする人なのだろう。


(……それなら、どうして)

「どうして、ノワは」


 勝利を目前にして、唐突に戦いから去ったというノワ。結果的に魔王の命と、数多の魔族の命が失われた。


「……いや、考えたって無駄だ!やめだやめ!」


 そもそも真実かもわかりませんからね、それよりも今はできることをしよう。


「んー、今はとりあえず……」


 そう言って、私は扉へ向かう。


(この城、微妙に魔王城と違うところあるんだよな。共通点とか見つけたら、何かわかるかも)


 外に出て、捜索でもしようと思い取っ手に手をかけると。


ガタガタッ


「……ん?」


 動かない。びくともしないのだ。


(いやいやいや、まぐれかも!!まぐれかもしれないよね!)


 全身の力を込めて、もう一度。


「ふんぬっ!!!」


(……)


 だめだこりゃ。おそらくネロによって外側になにかひっかけられているのだろう、内側からはどうやっても開かないようになっている。


「……なるほど、閉じ込められたなこれ」


 よくよく考えたら誘拐されているから正しい状況ではあるのだが、なにぶん自分が普段生活している部屋と瓜二つである。なんだか変な気持ちで周囲を見回していると。


「……そういえば、あの化粧台とか鏡って完全に女物だよね。本物の魔王城にもあったけど」


 寝台の高さも、私でも苦労せずに登れるくらいかなり低めである。


(それに、何より)


「あの机の角とか尖ってるところが、やわらかい布で覆われているのも全く一緒だ」


(てっきり、私が来るからハクが整えてくれてたのかと思ったけど)


 それなら、この偽魔王城の仕組みは一体どうなっているのだろう。無条件に本物をリアルタイムでコピーするのであれば、これまでに少しずつ異なる部分が見受けられたのはおかしい。


「とりあえず、この部屋で他に違うところがないか見てみるか」


 ガサゴソガサゴソ。


 普段目に入るところをすべて見て周り、もはや普段は全く気にしていないところまで手を伸ばしかけた、その時。


「……あれ?」


 部屋の奥の隅におかれた本棚。しかしそこは、ほんの少しだけ隅からズレているように見えた。


「本物の魔王城なら……うん、ハクが許さないだろうな」


 1グラムの埃もズレも許さない、それがハクである。まるで姑のようだ。


(いや、でも流石にあれは私でも気になるな……揃えておこうっと)


 近づいて、棚を動かそうとしたその時。


 スポンッ


 突如として、その本棚の近くにあった床が抜けた。


(……え?)


 いや、正確に表現するなら「下に開いた」のだ。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 会ったことはないけど魔獣ってきっとこんな風に鳴くのかな!みたいな雄叫びをあげながら、私はその下に落下していく。


(しぬ!これ侵入者用のトラップだったら私しぬ!!)


 自分の家そっくりの城で罠にかかって落下死。


「想定してなかった死に方だぁぁぁ、やだぁぁぁぁぁ


……って、あれ?」


ストン


 叫びながら落下……と思ったら、思っていたよりも早く地面についたらしい。


「いてて……」

(思ってたよりも浅いな……?罠じゃないのか?)


 尻もちをつきながら上を見上げると。


「か、かいだん……!?」


 光が差し込んでくる、人一人分が通れるかというくらいの小さな穴に向けて階段が伸びていた。


(んお、下にも続いてる。私今、階段の途中にいるのか)


 どうやらここは、侵入者用の罠などではなく。


(隠し扉、ってやつかぁ……)


 それにしては、床を踏んだ途端に発動するなんて不親切すぎやしないだろうか。


「んー……どうしようかな」


 勿論、進むべきか戻るべきかということである。


「……何が起こるかわからないし、やっぱもど――」


 戻ろう、と言いかけて私は静止する。


ピカッ……ピカピカッ


(おっ……!?)


 決してこれは、某黄色い生物の鳴き声などではない。何やら階段の下から、弱々しいが光が漏れているのだ。


「よし」


 さて、前世孤児時代の名残から生まれたリーナちゃんの非常に悲しい性質、その1。


『光ってる!お金になるかも!よし行こう!』


 まるでカラス。しかしもはや私の本能レベルに刻まれている性質のため、自分ではどうしようもないのだ。


 まあそういうわけで。


「行こう!」


 迷いのない足取りで石造りの階段をずんずん降りていくと。


(なんか、急に開けたな)


 周囲に何本も立てられた柱に高い天井が支えられた、広場のようなところに出た。


「ん?なんだアレ」


 真っ白い円形の広場の中心には、謎の石像。まるでこの広場自体が、そこに向かって祈りを捧げるかのような構造だ。


(この石像、女の人……だよね)

「すごく、綺麗」


 その石像は、まるでフォルテの神話に出てくる女神のように美しく、職人の丁寧な仕事とその信仰心が見えるかのよう。


(あ、でもここ魔国で、しかも偽とはいえ魔王城だよな……そんなところに女神像があるわけないか)


 フォルテ国内なら、きっとあちこちでその姿を見ることが出来るのだろうが。


(私、女神関連のもの見たこと無いんだよな……教会とか絶対入っちゃダメだし)


 なにしろ黒髪である。侵入しようものならどうなるか……うん、考えたくもない。


「……とりあえず、特に収穫はなさそうかな」


 お金になるものも見当たらず、流石に女神像を運び出して売るわけにもいかないので引き返そうとすると。


『……ナ、ん……』

(……ん?)


 今なにか、声が聞こえたような。


(え、人……?いや、誰もいないよな)


 気のせいかな、と思い再びその像に背を向けようとすると。


 突然、私の脳内に声が響いた。


『……った、ようやく……がった!


……リーナちゃん!!!』

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