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3.影の魔王城

(どういうこと!?)


 混乱する私を担ぎ上げ、二人の魔族は迷いのない足取りでその中に入っていく。


(魔王城と、本当にそっくりそのまま変わらない……一体どうなってるんだ)


 大きさも、白と黒の外観も。


 先程までいた魔王城と、まるで同じだった。


(……あれ?でもなんだか)


 違和感がある。そう、その魔王城(仮)はまるで――


(時が、止まっているかのよう)


 単に古びているわけではない、その点で言うなら元いた魔王城も同じである。と言っても毎日ハクがお掃除しているらしく、目の届くところは普通に綺麗なのだが。


(例えるなら……あっちは「アンティーク」って感じなんだよね。これまでの歴史に、これからの未来の重みも加わって価値が上がっていくみたいな)


 だが今いる魔王城は、何かが違う。石造りのその外観に合わせるかのように、まるで石のように冷たく――年月の流れを、一切感じられないのだ。


 先程の例えで言うなら、元の状態のまま、「未来の重み」がそこに加わることを決して許さない。


(……なんか、怖いな)


 ぶるっ、と思わず身震いしていると。


「むっ!?」


 城の大きな門の前で突然降ろされたかと思うと、無理やり頭を地面に押さえつけられる。


(ちょ、土でも食べさせる気か!?)


 無理やり横目で見るとその二人もまた、門の前で地に頭をつけていた。前世で良く見た「平伏」に近い状態だ。


(なんかの新興宗教……?っていうか痛いな!めっちゃ痛いなこれ!!)


 頭が地面にドリルのように刺さっていて、ゴーリゴリと頭皮がダメージを受けている。力加減を考えてほしいものである。


 なんとかこの圧を分散できないものかと、押さえつけてくる手に必死に抗っていると。


「偉大なる陛下、ご命令通りガキを連れ帰ってまいりました。どうぞ通行のご許可を」


 「隊長」と呼ばれていた男が、恭しく門に向けてそう告げる。


(陛下?さっきの「あのお方」と同人物っぽい、よね)


 だがそれならばなぜ、「陛下」という呼ばれ方をするのだろうか。


(魔国の王は魔王、つまりノワただ一人のはずじゃ)


 ゴーリゴリと削られていく頭皮に加え、この摩訶不思議な現実に対処するために働かされる私の脳みそ。控えめに言っても私の頭、過労死寸前で可哀想だと思う。


 しかし、この脳へのダメージはまだ終わってなどいなかった。


ギギギッ……


「む………っ!?」


(開いた!なんか門開いた!勝手に!)


 なにこれ幽霊?とか思い、いよいよ本格的に泣き出してしまいそうなくらいに怖がっていたのだが。


「陛下、ありがたき幸せ。


……ほら、行くぞ。ガキ運べ」

「へいっ」


 全く動じることのない二人に再び担ぎ上げられる私。そこでようやく、私はある可能性に思い至った。


(あ、門開いたのってこれ魔法か?)


 そういえば本物の魔王城にも結界が張ってある、とか言ってたしな。魔法って便利だな〜とか思ってから、ふと気づく。


(こんな仕掛け、無かったよね?)


 この数日で何度か通り抜けた、本物の魔王城の門。だが決して、その門が勝手に開いたり――ましてや平伏してお願いすると開く、なんていうことは無かった。


(なんだか悪趣味な仕掛けだな……自分がここの王だ、って誇示したいわけ?)


 会ったこともないこの城の主、「陛下」即ち「あのお方」とやらに腹を立てている間も、二人の男はずんずん中へと進んでいく。


 内部も、先程までいた魔王城と殆ど同じ。だが細かいところ……例えば階段に敷かれている絨毯がこちらのほうが古いデザインだったりと、完全なそっくりさんではないらしい。


(良くわからないなー、何か変わってるところの法則とかあるのか?)


 もはや間違い探しをさせられている気分である。もちろん、難易度最高の。


コンコン


 そんなことを考えていると、二人は急に立ち止まってある扉を叩いた。


(お、なんかこのドアもこっちのほうが古そう……って、ここまさか)


「……入れ」


 中から聞こえてきたのは少し低く、だが若さを感じる声。


ガチャッ


 ゆっくりと開かれる扉。そして私の目に飛び込んできたのは――


(やっぱりここって。


執務室、だよね)


 そう、ここ数日ですっかり見慣れてしまった「王の」執務室。


(位置まで、同じ……)


 だがその奥の椅子に座るのは、見慣れた魔王の姿ではない。


(誰……なの?)


 黒髪に、眼鏡をかけた若い少年。


 その少年は、私を見ることもなく言い放つ。


「ご苦労。拘束を解いてあげて」

「し、しかし」

「魔力もないのだ、何も出来はしないでしょ。それに――」


 ボウッ


 少年の手に、赤い炎が浮かんだ。


「この僕に逆らうのなら、それ相応の報いを与えるまでだよ」


(っ……!!)


 笑っているその顔は、恐ろしいほどに歪んでいて。


 思わず息を止めてしまった私だったが、その恐怖は二人も同じだったらしい。


 無言で私の縄を解き、くつわを外してくれた。


「っはぁ!」


(久しぶりの空気!口呼吸!空気美味しい……美味しいか……?)


 なんだか若干不味い気がする。この城換気してなさそうだもんな、あんまり呼吸しないでおこう。


(なるべく動かないように……って違う違う!そうじゃなくてまずは)


「ちょっと!あなた誰なの!?いきなり私を誘拐してどういうつもり?何がしたいの!?」


 怒涛の質問攻め。そんな私の様子を面白がるように、その少年は椅子に座ったまま答える。


「そんなに色々聞かないでよ、せっかちだなぁ。まずは……そうだね、自己紹介からいこうか」


 そう言って、彼はにこりと笑った。


 屈託のない子供の笑み。そのはずなのに、思わず背筋が凍る。


「こんにちは、僕の名前はネロ。この魔国の――



本当の、魔王さ」


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