第1話『目覚の記憶』
身体に異変を感じた。
熱い。全身が焼けるように。
意識が遠のく……何かが体の中を走っている。
目を開けた。
知らない天井、白い光。
腕を見ると、皮膚の下で光の回路が脈打っていた。
「……俺の身体、どうなってる?」
声が震える。
記憶を探るが、数日前までの映像しか思い出せない。
それ以前が、まるで誰かに消されたように真っ白だ。
確か、あのとき。
空が裂け、光の塊が降りてきて——。
そこから先の記憶が、ない。
> 《起動条件、満たされました。——記録生命体、再構築開始》
耳の奥に響いたのは、冷たい電子の声。
「……誰だ? お前は?」
> 《私はイリス。人類観測AI第零号。
あなたは“カゲトラ”。人類最後の記録者です》
「記録者……? 俺は……人間だろ?」
> 《あなたの肉体は、すでに存在しません。
あなたは“記録”から再構築された存在です。》
目の前が歪んだ。
世界がノイズに包まれる。
「俺は……存在するのか? これは……俺なのか?」
> 《答えは、あなた自身の記憶の中にあります。
カゲトラ――もう一度、すべてを思い出してください。》
光が弾けた。
世界が、記録の海に沈んでいく。
俺の“再構築”が、今、始まる。




