第七章〜
御早う御座います。宜しく御願い申し上げます。
「何歳だと思う?わかるでしょ?だいたい」
「鏡見てみなきゃわかんないよそんなの。わかるわけない。あの時、あなたを殆ど見られなかったの」
あの時とは、もちろん転落して欄馬が巻き込まれながら落ちた時であろう。
まだ欄馬の歳ではそれほど身体にガタがきているわけでもないのだし、体感では意外にわからないのかもしれない。
夏美が、もともと欄馬の持ち物であったエレメスのケリーバッグの中から何かを探し始めた。おそらく、探しているのは自分を見る為のハンドミラーなのどろうと欄馬は推察した。が、生憎、欄馬にはハンドミラーで顔を確認するような習慣はなかったから、バッグの中にある筈もないのであった。
探し出すのを諦めた夏美が言った。
「ねえ、欄馬クン。もう夏美って呼んだ方がいいのかしら?その、あたしのバッグの中から!あたしのミラー取り出してくれる?」
「もう。何で自分が命令できる立場だと思ってるんだよ」
愚痴りながらエルメスのケリーバッグの中身を探ると、すぐにピンク色の柄鏡が出てきたので夏美に渡した。
欄馬になった夏美はそれを受け取り、自分の顔を写してみるとすぐに言った。
「十八歳。高校は卒業してそうだけど、大学生という感じでもない。微妙な歳に見えるわ。車乗るって言ってたし」
「そんなに老けてみえるか・・・。なんてね。さすが。そのとおり。免許取って間もない十八だよ。病気らしい病気もないから安心してオレの身体、使ってよ」
夏美はサラッと受け流して続けた。
「服装のセンスは まあまあ いいわね。Tシャツもジーンズ・パンツも安っぽくはない」「ちょくちょく上から目線だな」「ただ、もうちょっと痩せないとね」
「女基準の体重でみないでよ。無理だよ」
と夏美が思い出したように言った。
「でも、お財布の中身が心配ね。やっぱり財布だけはもともとの自分のものを使いましょ。お互いが貯めたお金よ。ひとのを遣うわけにはいかない」
「そうだね」
ふたりは財布の中身を入れ替えた。
有難う御座いました。