第七十四話〜誘導尋問から探る
山田 書かせていただきます。彼女と彼の初デート。蘭馬の運命は一体どのように展開していくのでしょうか?お楽しみいただけましたら幸いです。お読みになっていただけましたら嬉しいです。
連れて行かれたのは、キャンバス内にある喫茶コーナーだった。自動販売機がいくつも並んでいて、その中にホットコーヒーの販売機もあった。
後は古びたベンチと薄汚れたスタンド式の灰皿が置かれているだけだった。でも一応空調は聞いていて寒くもなければ暑くもなく とても過ごしやすかった。
「ごめんなさい この前は少し話したきりでいきなり こんなところに誘っちゃって…」
井伏は言った。気弱そうな物言いである。
━━この前話した?
蘭馬は引っ掛かりを感じた。それなら、おそらく、蘭馬と夏美がまだ入れ替わってない頃の話なのは間違いなさそうだった。何を話したか、蘭馬が知る筈もない。
周囲にはタバコを吸いながら ホットコーヒーを飲んでいる学生風の男たちが多かった。最近数 少ない 喫煙所の類なのだろう。
そこで気がついたように、井伏が、
「コーヒー、ホット、アイス、どちら?」
気弱なのか、いちいち丁寧なだけなのか、わからなくなってきた。
「ホットのお砂糖無しでお願い致します」
自然と蘭馬も丁寧な口調になった。井伏が自分の分も含めた2つの紙カップコーヒーを運んで来るまで、このことは一応夏美に報告すべきだろうか、と考えていた。お互い好きにしようと合意はしたものの、その言葉をどれだけ真に受けていいか測りかねていたのだ。
井伏は戻った。
━━なんか考え事でもしてたの?そんな感じだった。蘭馬は答えた。
「えー、よくわかったね。そだよ考え事してた。サークルどうしようかな、って」
蘭馬としては、うまく誘導尋問をしなければという思いだった。なんの誘導かって?
井伏は不思議そうな顔をして、
「どうしようって?君は確か、文学研究会に入ってたよね。まさか辞めるつもり、だとか?」
「ううん。そうじゃないよ。今日あたり、サークルに顔出そうかな と思っただけ」
言いながら、誘導尋問が成功したのを悦んだ。そうか、夏美はやっぱり文学少女だったんだ。
━━文学研究会ね.わかったわ。いわゆる文研ね。会のスケジュールを調べて、近いうちに顔を出すか。そこまで考えてふと思った。
文研て大抵の場合、自分の小説作品なり エッセイなり詩でもを書いて会に持って行って発表するんだったよな。その作品はどうする?俺には書けねえよ。それに、夏美には夏美の作品スタイルというものがあっての作品なんだろうから…。
そうか、自宅の彼女専用のパソコンでもあったら、その中に作品のメモリがなされており、彼にも閲覧できる状態にあるかもしれなかった。そのパターンに賭けるしかあるまい。
蘭馬は少し安心した。彼女の作品は無駄にするわけにはいかなかった。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。




