第六章〜意外にややこしい
書かせて頂きました。宜しくお読みになってくださいませ。
「お互いの持ち物はそのままにしておきましょうよ。だって、いきなり男の子が女物の持ち物を使い出したら怪しまれるでしょう?逆もまた然り。あたしの身体のあなたが急に男っぽく振る舞ったらおかしくなるのよ。だから、あなたはあたしである演技をしっかりしてね。あたしも貴方を演じ切ってみせるから」
そう。話は既に決めてあったのである。
━━ふたりは、性別と人格が入れ替わったまま怪しまれないように生活をしながら時を待ち、そのうち何かのきっかけでもとに戻るという展開に期待しようということで同意していたのだ。
どうせ、新宿駅の階段で転げ落ちたらふたりの人間が入れ替わったなどと助けを求めたところで、誰も信じてはくれないだろうから。何処かの頭の狂ってしまったひととしか思って貰えないだろうから。その状態を復旧してくれるような病院もないだろうし、医師もいないだろうから。
欄馬を演じ始めた夏美は続けた。
「あ。それから、な。ご厚意は有り難いのだけれど、遠慮しとく。車は、な。車に関しては、あたしにはどのみち運転は無理。身体は入れ替わっても、きっと反射神経とか運動能力とかは受け継げないのに違いないから。怖くて運転なんて出来る気がしねえの」
若い男の使う言葉遣いを彼女は上手く模倣しているようだった。欄馬は、
「そうか。それならいい。ただ、盗難が怖いから、たまに駐車場まで見にいってみてはくれないだろうか?」
「お安い御用なり。だけど、もっと女言葉を学ぶこと。それじゃバレるよ。それと、あなたは女の子の身体なんだから身の安全はしっかり図ってね。襲われちゃやーよ。あたしの身体を傷
つけないで」
夏美は少し深刻な表情になる。
「もちろんだ」
欄馬は安心させるように言い切った。彼女は少し安心したように今度は問うた。
「ところであなたは何歳?というか、あたしは何歳なの?何歳の男として振る舞えばいい?」
誠に有難う御座いました。




