第十章〜反撃
引き続き改訂、加筆修正しております。終了次第、新章へと進みます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
「おや、お連れさんかい?」
声はそう聞こえた。男が、夏美の方へ一歩、歩み寄った。
夏美が身構えるのが、欄馬にもわかった。
「お?やるかい?」
男が嗤った。
男は腹の出た巨漢で、歳の頃は欄馬より少し上に見えた。白いTシャツに黒のスウェット・パンツというラフなスタイルであった。
「おや、連れの男、目つき悪いな。格好つけてんのか?女を守ろうってか?」
男は知りもせずにそんなことを言って嗤い、さらに欄馬に近づいた。
「やめときなよ」
欄馬が威嚇した。
だが、今の欄馬の身体は、いかにもか弱そうな夏美のものだ。それを傷つけないためにも手荒な真似はできないし、第一もともとの欄馬には喧嘩の経験もなく、勝てる自信はまったくないのだった。
「おやめなさい」
欄馬の身体の夏美も凄んでみせた。
が、こちらもからっきし自信はない。
巨漢男が嗤った。
「なんだ、コイツ。女みてーな喋り方しやがって。腰も引けてるぜ。本当にやる気なのかよ?」
巨漢が夏美の胸倉を掴んだ。
「ひとを舐めてるとロクな目に遭わねえぞ」
巨漢が拳を振り上げようとしたその時、であった。
━━ぐばん
大きな音がして、通行人の何人かが、振り返った。巨漢男と夏美の間に欄馬が割って入っていた。
欄馬が、手にしていたケリーバッグを巨漢の上から思い切り振り下ろしたようだ。
「いてぇっ!なにしやがる」
「さすがブランド・バッグ。頑丈に造られているようだね。ちっとも壊れないわ」
今度は欄馬が笑った。
「いくよ」
欄馬は、夏美の腕を掴んだ。
「さあ!走って!」
御読みになっていただきまして誠にありがとうございました。




