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王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません  作者: きぬがやあきら


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継母との再会 2

「……お継母様はいったい、私に何をお望みなのです? 他国に嫁に出した娘など、他人も同然でしょう」


 腕を掴まれて、アシュレイはキューベルルをキッと睨んだ。


 アラウァリアの客人には違いない。だが、もう今までのように言いなりになる気もない。


 キューベルルはアシュレイの言にカチンときたらしく、扇を持つ手に力が籠った。


「久しぶりの再会だと言うのに、憎らしい女ね。萎らしくしていれば、王女の身分に戻してやることも考えてあげるのに」


「戻してやるですって?」


 ぞっと怖気が走って、アシュレイは肩を震わせた。


 それを関心の表れと受け取ったのか、キューベルルは満足げに目を細めた。


 ニヤリと笑う唇が、下品に歪んで見える。実に底意地の悪い笑みだ。


「そうよ。頭を下げて、セレンティアへ戻って来るのなら、貴女を王女へ戻すよう口添えしてあげてもいいわ」


 アシュレイは目を瞠り、言葉を失った。


 何を馬鹿なことを……と思ったが、キューベルルは本気で言っているらしい。


「……恐れ入ります、込み入った話になるようでしたら、場所を移されたほうがよろしいかと」


 不穏な空気を察して、リックがアシュレイとキューベルルの間に割って入る。


「そうね。今日はお祝いの席だもの。お継母様、ちょっと外に出ましょう」


「まあ、何ですの。其方、目上の者の話に割って入るとは、無礼であろう。それに外に出ろとは何事なの」


 しかし、リックの介入がキューベルルの気に障ったらしい。アシュレイの腕を掴むと、扇でリックの頬を打擲した。


「リック!」


 その刹那、アシュレイは考えるより先に身体が動いていた。


 腕を振りほどいてキューベルルを突き飛ばすと、リックの元へ駆け寄った。


「大丈夫!? ごめんなさい……継母が」


「ええ、問題ありません。これは、失礼を」


 リックは頬に手をやりつつ、キューベルルに頭を下げた。


「リックは悪くないわ。お継母様、私にならともかく、異国の殿方に手を上げるなんてあんまりです。リックに謝ってください」


「何を世迷いごとを。親し気に男の名を呼ぶなど、どこまで恥知らずなの。その上わたくしに謝罪しろですって?」


 火に油を注ぐ結果になり得るとわかっていても、我慢できない。


「私のことなら構いません。アシュレイ様、どうか」


 リックは気を遣って申し出るが、退きたくない。


 リックは共に勝利を勝ち取った戦友だ。しかし、即位式の祝宴を揉め事で汚したくもない……。


「どうなさいましたか。私の侍従が何か失礼を?」


 わなわなと震えるキューベルルと、どう収拾をつけるべきか迷い始めたアシュレイが対峙していると、幸か不幸かギルフォードが現れる。


 対立する面子に不穏な空気を感じたのか、会場の耳目は集まりつつあった。


 ギルフォードは目敏く部下の騒動を察知したらしい。


 アシュレイとリックは揃って頭を下げる。


「申し訳ございません。全て私の不徳の致すところです」


「伯爵様……! ご無沙汰しております」


 キューベルルは口元を扇で隠して、目を吊り上げる。


「貴方がこの者の主人ですの? いったいどのような躾をしておられるの?」


「私はベラミ領伯の代理を仰せつかっているギルフォード・ベラミと申します。私の部下が何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?」


 ギルフォードは変わらずの、穏やかな口調で尋ねた。


「そうよ。この者が立場も弁えず、私に指図したのです。ですから、身の程を教えて差し上げようとしただけですわ」


 キューベルルは鼻息荒く言い放つ。


「それは大変失礼いたしました。ところで、貴女様は……」


「こちらはセレンティア国王妃、キューベルル様であらせられます」


 アシュレイは間に入るようにして進み出た。


 ギルフォードもアシュレイにとっての大恩人だから、キューベルルの理不尽に巻き込みたくない。


 強い思いが働いた。


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