五月雨
いつかはゆーちゃんも大きくなって、一人で小学校に通うようになるんだろうな
今は傘をさすだけで飛ばされなそうなくらい小さな身体だけど、いつかは大きくなるんだろうな
ゆーちゃん:ママ!水たまり!
ママ:ホントだ、大きいね
飛びたい?
ゆーちゃん:いいの?
ママ:今日はかっぱ着てるし、初めて自分で傘をさした記念にね
でも、パパには秘密だよ?
ゆーちゃん:はーい!
水たまりー!!!!
大きく水が飛び跳ねた姿をみて、あの日の事を思い出した
一9年前の夏の夜一
???:もしもし?
???:ちょ、ちょっと待ってな!今準備する!
???:全然待つよ、誘ったの私だし こんな時間に連絡したのにありがとね、ひろき
ひろき:ん?休みだしな
あとはまあ ゆりの頼みだし、?あー、あと俺も眠れなかったし、、、
ゆり:ふ~ん そっか、
ひろき:そんで?ゆりの事だし来週の本番でミスしないか心配なんだろ?
ゆり:まあ、ね練習は何回もしてるけどやっぱり不安っていうか、、
私達は高校3年生最後の文化祭を1週間後に控えている
うちのクラスは劇をするが、私やひろきは照明の係をすることになっている
ただ照明をやるだけ、ならもう少しだけ緊張も解けている
どうしてこんなにも緊張しているのかというとクラス賞というものを狙っているからである クラス賞は文化祭の出し物で一番評価が高かったクラスへ送られる賞のことで、特別景品あるわけでもないしかし、高校生というものは最後の文化祭というだけで全力で挑みたくなってしまう生き物なのだ
それは私も例外じゃない だからこそ、クラスで一丸になるからこそ、照明係であっても気を抜くことができないのだ
ひろき:練習の段階じゃ失敗なんかしてないし大丈夫だと思うんだけどなぁ
というか、むしろ俺が失敗してるし
ゆり:たしかにひろきはもう少し気を引き締めたほうがいいかも
ひろき:おい、そこはフォローしてくれよ
ゆり:やだよ〜笑
やっぱり、やっぱりひろきと話すと心が落ち着くな
ひろきとは高校1年生の時から同じ
クラスで今年で3年目だ だからこそこういう時に頼りやすかったりする
ひろき:ゆりはさ、すげえよな
ゆり:急に何~?おだてても何も奢らないよ?
ひろき:あーいや、おだててるわけじゃなくてさ ただ純粋にそう思うんだよな
1年の時から見てるからわかるけどさ、ゆりって絶対に調子に乗らないっていうか、いや調子に乗る時はあるけどさ?
ゆり:それ褒めてるの?笑
ひろき:一応?笑 なんか、自分の事ちゃんとしてんなあって
ゆり:ほんとに急にどうしたの?
ひろき:いや、なんていうかなあ~、ゆりなら大丈夫っていうか
ゆりは十分ってとこからもう少し頑張ろうってできる奴だからだから、見ててかっけぇんだよな
ゆり:ほんとに褒めてるだけじゃん笑
ひろき:あ~、なんか上手く言えねえわ笑 とりあえず、ゆりなら大丈夫だ俺が保証する
2年以上見てきたし、ゆりの事
ゆり:ん~、そう、かな?私なら大丈夫かな?
ひろき:おう、大丈夫
ゆり:そっ、か、
それからもしばらくひろきと言葉をかわした ひろきと話す時は時間も忘れるくらい楽しくて、気づいた頃には月が西に落ちかけていた
ゆり:ひろき、ってさ、文化祭の時に誰かと回る予定あったりする、、?
ゆり:ひろき?
もうこんな時間だしね、さすがに私も寝ようかな
(さすがに夢中になり過ぎちゃったな でも、やっぱりひろきと話すのって楽しい)
窓から入る夜風が気持ちよくて、この時間が心地よくて、ずっと続けばいいのにと思ってしまう
それでも朝は来るから、今日はおやすみ
ひろき、いつもありがとう おやすみ
一9年後のある朝一
ゆーちゃん:せーのっ!
パシャンッ
ゆーちゃん:きゃー!!ママ!みてみて〜!ビシャビシャ〜!
ゆり:ほんと、ビシャビシャになっちゃったね!
ゆり:それじゃあゆーちゃん、いってらっしゃい!
ゆーちゃん:ママ、いってきまー
す!
さて、帰ったら家事をしないとな
ゆーちゃん:ママー!おーだんほどーは右と左をみてね!
ゆり:うん、ありがとう!ゆーちゃん!
あ、雨が上がってる
きれいな飛行機雲だ、、、!
たしか文化祭の日も、ひろきと2人で飛行機雲を眺めてたんだっけ?
あ、あじさいが咲き始めてる今度3人であじさい畑に行こうかな
すっかり晴れちゃったな
ゆーちゃん、今頃傘がさせないって落ち込んでないかな?
いや、ゆーちゃんはひろきに似てるからな
晴れたら晴れたで元気いっぱい遊んでそうだな
大きく育ってね、ゆーちゃん
ゆりー!!!忘れ物したー!!!
えー!?何してるのひろきー!!