ドグマ教司祭
「ギルをやった程度で勘違いしてはダメですよ。あなた1人くらい私だけで充分です!」
司祭は祭服の懐から、刃物のついたブーメランを取り出した。
「切り刻んでやりましょう! くらえ!」
ブーメランは、弧を描き豆田に迫る。
「子供騙しだな。コーヒーシールド!」
豆田はコーヒー銃をシールドに変え、ブーメランの攻撃を弾いた。
椅子の陰に身を潜めるポロッポは、戦いの様子を伺う。
(これは私が出て行っても役に立ちませんね。焼き鳥になるだけです。リルさん達は、拮抗してますねー。アルルさんが相手だと、こちらからは攻め切れませんし。んー。やっぱり豆田さんだよりですか……)
司祭は、豆田を警戒し距離をとる。
「仕方ありませんね! さらに追加しますよ!!」
(少なくともコイツは支配する能力を持っているはずだ。ブーメランは、単なる武器と考えるべきか……)
豆田は、シールドを銃に持ち替え、司祭の動きを注視する。
司祭は祭服からもう一つのブーメランを取り出と、2つのブーメランを同時に放ってきた。
綺麗な弧を描き、左右から豆田に向かうブーメラン。
「仕方ない。コーヒーシールド&ゼリーランス」
豆田の持つコーヒー銃は形をプレート状に変え、左手の横に装着される。豆田は懐からコーヒーゼリーを取り出す。
ガラスの容器に乗ったコーヒーゼリーはモリモリ盛り上がり、ランス状に形状を変えた。
豆田は、左手にシールド。右手にランスを持ったナイトの様な装備になった。
「コーヒーとゼリーを操るのか?!」
豆田はニヤリと笑うと、迫り来るブーメランの一つを左手のシールドで弾き、もう一つにランスを当たる。ランスは、バネのように縮みきると、一気に元のサイズに戻る。
シールドと、ゼリーのバネのパワーに弾かられたブーメランは、加速しながら司祭の元に戻った。
「弾いただと?!」
司祭は慌てて回避行動をとるが、ブーメランの刃に太ももが切り裂かれる。血が滲む。
「ぐっ! 強い! このままではやられる! だが!! アルル!!!」
アルルは、突如戦闘をやめ。司祭の元に駆け寄った。
「お姉ちゃん!!」
アルルは司祭の横に立ち、その手の平に炎を宿す。
「いいか。お前ら。抵抗してみろ。この炎でアルルの顔を焼くぞ!!」
「ひどい!! お姉ちゃん!!!」
「なんて卑怯なの!」
シュガーは司祭に向かい銃を構えた。
豆田はリルとシュガーに視線を送り、手の平で静止するように合図を送る。
司祭は高々と笑い出した。
「形勢逆転だな!!」
「そうか? こちらはアルルの魔力が尽きるか。貴様がその出血で倒れるのを待てばいいだけだ」
「ふふふふ。バカめ。私は洗脳できる力があるんだ。お前を操れば、こちら勝ちだ!!」
(どんな手で、洗脳をかけにくる? 音か? 道具? 薬物か?)
豆田は、コーヒー銃を手に取り身構える。
「警戒しても無駄だ!! エリア展開!! 私のこだわりの力を思い知るがいい!!」
(しまった!! コイツ『こだわリスト』か?!)
司祭を中心に光のドームが広がっていく。
「みんな逃げろ!!」
豆田は大声で叫んだ。
「もう遅い!!」
光のドームが、司祭と豆田を包み込む。
「いやぁぁぁー-!! もうダメだ!!」
リルは、その場に崩れ落ち泣き出した。
「どうなってるの?」
シュガーは呆然とする。
「この光の壁が出来ると、外からは何もできないの」
リルは、泣きながら必死に説明する。
「こちらから手出しができない??」
リルは頷く。そしてキリっと前を向き、
「風の聖霊よ! 我に力を!! ウイングカッター!」
『バシン!!!』
ウイングカッターは光の壁に弾かれ、消えた。
「私たちの魔法では無理なの。中の様子も見えないし」
「豆田まめおが、中からこじ開けれれば良いけど」
「あそこから出てきたとき、もうお姉ちゃんは洗脳されていたの。もう。豆田さんもだめかもしれない」
リルは再度泣き出した。
シュガーはリルの肩をそっと抱いた。
洗脳されていた信者達は、動きを止めている。
(豆田まめお。大丈夫よね?)
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光のドームの内部は、外部と完全に遮断され、真っ白な空間になっていた。
司祭は仁王立ちして、豆田を待ち構える。
「もう君の負けだ!! わははははは」
「えーー。笑っているところすまないが、説明してもらえるか?」
豆田は異空間に閉じ込められても冷静た。
「ふははは。いいだろ!! 説明してやる!!」
「まず、なぜシーソーがあるんだ?」
豆田は、司祭の横に置いてある大きなシーソーを指さし、戸惑っている。
「ふふふ。この中に入った者は皆よく似たことを言う」
司祭はオデコに手を当て、大袈裟にのけ反る。
「いや、カッコつけてるところ悪いが、シーソー」
豆田は再びシーソーを指さす。
「まー。良い。ここを出るときには君も洗脳されていることになる」
(バカみたいな現象だが、こいつ強いな。明らかに自信に満ち溢れた姿勢をしている。)
「コーヒー銃!!!」
「無駄だ!!!」
豆田のコーヒーは、何も反応しない。
「なに? コーヒー銃がでない!!」
「ふふふ。この光のドームの中では、攻撃は禁止されている。お互い攻撃することはできない」
焦る豆田を無視したまま司祭はゆっくりと移動し、シーソーに乗った。
豆田は警戒をさらに強める。
「ふふふ。さー。君もシーソーに乗りたまえ」
「乗るわけないだろ」
「良いのかい? この中からでもアルルは操れるんだぞ」
司祭は手を光のドームの外にかざす。
「彼女に死んで貰うか?」
「くそ!」
「さー。座りたまえ」
司祭は豆田に再度シーソーに乗るように促す。
豆田は諦めて、シーソーに乗ろうと、持ち手に手をかけた。
(くそ。なんて恥ずかしいんだ。シュガー達から見えないのが救いか。このおっさん。このシーソーの能力を使い慣れている。羞恥心が全くない)
「この能力を使うには相手にも説明が必要でね」
「なに?」
「このシーソーは、体重で動くのではなく。信仰心で傾くのだ。つまり信じる強さが強い方が勝つ。そして勝つと相手を洗脳できるのだ」
(なんて厄介な能力なんだ!! 単純な戦闘力が意味をなさない)
「気付いたようですね。このドームの中に相手を入れた時点で私の勝ちなのです」
(くそ。失血死を待つにも、このドームの中に入ってから、なぜか奴の出血は止まっている)
「残念ながら、お前のゲームに乗るしかないようだな!!」
「お早い理解でありがたい」
豆田がシーソーの上に乗ると、二人の座面が地面と平行になった。
「では、始めますよ」
(恥ずかしい。奴がノリノリなのが余計恥ずかしい)
豆田は、あまりの恥ずかしさに下を向く。
司祭は腕を胸の前でクルクル回す。そして、大きな声で、
「シーソータイム!!!」
豆田は恥ずかしさのあまり顔を手で覆う。
「信仰ターーーイム!!! 私の信じる者!! ドグマ教の神! 聖獣ギアス!!と教組ゼロム様!!」
司祭はリズムに乗りノリノリだ。
その声に反応して、シーソーから音声が聞こえる。
『確認しました。信仰心89ポイント。一級レベルです』
「ふはははは。今日も素晴らしい!! 圧倒的だ!!」
司祭の方にシーソーが大きく傾いた。
「さー。君の番だ! 君の神に対しての信仰心はどうかな? どう考えても、信仰に厚い方ではなさそうだが」
「なるほど。理解した。質問だが、信じる者は神以外でも良いのかな?」
「ん? 貴様は悪魔でも崇拝しておるのか?」
豆田の質問に反応して、シーソーからの音声が流れた。
『システム上。何を信じていても問題ありません』
「まー。なんでもよい。私を超える信仰など有り得ないからな」
「……。すまん。信仰タイムと、言う必要は?」
「もちろん必要だ! そのセリフの後、シーソーに認識される!」
(くそ! 開き直るしかないか!!)
「信仰タイム。私の信じる者は……」
シーソーから音声が流れる。
『申し訳ありません。声が小さく認識できません』
「く。なんて恥ずかしいんだ。くそ!!」
豆田は大きく呼吸する。
(いいか。豆田。お前なら出来る。幼稚園の先生や体操のお兄さんになったつもりだ。)
豆田は自分を必死に説得する。
豆田は目の色が変わる。開き直ったようだ。
「しんこうううターーーイム!! 私の信じる者は……」
豆田はノリノリだ。
(コイツは何を信仰している??)
司祭に緊張が走る。
「私だ!!」
「え? 自分を? わはは。何を言うかと思えば!!」
豆田の声を聞き取ったシーソーからの音声が流れる。
『確認しました。信仰心15万6822ポイント。超ウルトラレジェンド級です』
「はぁ?? 嘘だろ!!! え……。け、桁が違う」
あまりに想像していなかった展開に司祭はプルプル震えている。
「はは。私は自分を信じている。自分を信じないでどうする?」
豆田の方にシーソーが完全に傾いた。
「そんな。バカなことが。私の信仰心を超えるものが現れるとは!!」
「さー。この後はどうするのかな?」
シーソーからの音声が流れる。
『勝敗は決まりました。勝者。挑戦者。チャンピオンが洗脳されます。この洗脳は、挑戦者の任意でいつでも解くことが出来ます』
豆田は、少し考える。
「なるほど。では、とりあえず、洗脳開始で!!」
豆田の声を認識したシーソーからの音声が流れる。
『了解しました。元チャンピオンの洗脳を開始します……』
「やめろ!! 私だぞ!! シーソー!!」
司祭はシーソーを掴みガシガシ揺らす。
シーソーは司祭の行動を無視する。音声が流れる。
『洗脳完了。ドームを解除します』
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洗脳されているアルル達の動きが止まってしばらく経つ。
光のドームの外では、シュガーとリルが豆田と司祭の戦いの結果を待っていた。リルは、両手を重ね祈っている。
すると、光のドームがひときわ強く光り、砕け散った。
光の中から豆田と司祭の姿が浮かび上がった。
「リルちゃん! 警戒して!」
「はい!」
シュガーとリルは、もしもの事態に備えて、慌てて身構えた。
光の中から現れた豆田は、片手をあげ、
「や-。シュガー!」
「豆田まめお! 洗脳されてないの?!」
「ああ。逆に。ほら!」
豆田は司祭を親指で刺した。
「え? 司祭が洗脳されてる状態? どうやったの?」
「ん? ああ。激しい戦いの末、支配の攻撃を跳ね返したんだ」
(嘘は言っていない。)
「凄い!! 豆田さん凄い!!!」
リルは大喜びし、その場で飛び跳ねる。
リルの喜んだ姿にシュガーは微笑む。
口角を上げた豆田は司祭に命令する。
「司祭よ! まず、今まで洗脳していたものたちを解除しろ!!」
「ハ、イ」
司祭は両手を上げる。
すると、洗脳されていた者の身体から、黒い霧のようなものが吹きだし、空に消えた。
アルルの洗脳は解け、自由に動けるようになった。その光景を涙を溜めながら見つめるリル。
「リル!! 動ける!!」
動き出したアルルは、満面の笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん!!!」
「リル!!!」
リルはアルルの胸に飛び込んだ。抱き合う二人。
「豆田まめお。ありがとうね」
シュガーは、2人を見つめながら涙を流した。
「シュガー。そんな事より、コイツはどうしたもんか」
困惑した表情の豆田は横目で司祭を見る。




