南の森の教会
豆田達は、ドグマ教信者の証言通り、街の南にある森までやってきた。
「ポロッポ。この近くに建物がないか見てきてくれ」
「豆田さんは、鳩使いが荒いですねー。ちょっと待ってくださいね」
ポロッポは、『パタパタ』と羽ばたき上空に上がった。
「あー。あれですね。豆田さん。すぐ近くにそれらしき建物がありましたよー!」
「よし! では、そこまで案内してくれ」
「了解です。しっかり付いてきてくださいね」
ポロッポの案内で豆田一行は、ドグマ教の教会らしき建物の前にたどり着いた。
(お姉ちゃん! もうすぐ助け出すからね)
リルは、決意の表情で拳を強く握った。。
豆田は、そのリルの頭に軽く手を置き、
「いいか。作戦通りいくぞ!」
と、言った。一同、静かに頷く。
ドグマ教の教会は、平屋の割に背の高い建物で、異様な雰囲気を放っていた。
建物内部から音が漏れ聞こえる。
「イザカザイザカザ。聖獣ギアス様。イザカザイザカザ。魂を救いたまえ」
大人数の合唱が聞こえる。
(リルの情報通り、信者が沢山いるようだな......)
豆田は、教会の壁に背をつけ、突入のタイミングを計る。
(覚悟を決めるしかないな......)
豆田は、シュガー達に視線を送る。一同小さく頷いた。
扉に手をかけた豆田は、一気に開く。
『バン!!』
大きな音が鳴ったが、その音に反応する信者はいない。合唱に没頭しているようだ。豆田とシュガー、それにリルは教会内に侵入した。
教会の礼拝堂には、中央の通路を挟んで、左右に3人掛けの椅子が10脚づつ並んでいる。
正面中央の壁には、槍と竜のエンブレムが大きく描かれている。
「イザカザイザカザ。聖獣ギアス様。イザカザイザカザ。魂を救いたまえ」
合唱は鳴りやまない。
(槍と竜のエンブレム? ベンノのステンドグラスを狙っていたヤツらか……)
前方にいた司祭らしき人物だけ、こちらに気付いたようで、ゆっくり豆田達に向かって歩いてくる。
「おや、これはこれは、お客様ですか?」
白々しいセリフ。そして不自然な笑顔。
司祭らしきその男が手で合図すると合唱がピタリと止まった。
「お姉ちゃんを返して!!」
「おや、人聞きが悪い。彼女は望んで、信者になられたのだ」
司祭は前から2列目に座るアルルの肩に手を付き、振り返らせる。
そして、司祭は振り返ったアルルを見るように促した。
「ワ・タ・シ・シ・ン・ジャ。」
「ほらね?」
リルは歯を食いしばり怒りをあらわにする。
このやり取りの間、豆田は周囲を観察する。
(呼吸の乱れや、姿勢の変化が、全く見られないのは5名。この5名は洗脳されているな......)
豆田は、リルと司祭のやり取りを完全に無視したまま、部屋の隅に移動する。
司祭は、豆田の動きを気にしつつ、リルに言葉をかける。
「リル。どこの誰を連れてきたのか知りませんが、死人が増えるだけですよ。あなた達も死にたくないでしょ? リルを置いて帰って頂けませんか?」
「断るわ!!」
シュガーは間髪入れずに答えた。
いつの間にか司祭の真横まで移動していた豆田は信者たちの様子をさらに観察する。
(先ほど観察した5名は完全に洗脳せれているな。他に警戒心をあらわにしているのが3名。護衛か? 合わせた8名とは戦闘になると見た方が良いな......。残りの12名は単なる騙されている信者か......。面倒だな)
豆田はシュガーに目で合図を送った。
その合図を確認したシュガーは懐から銃を取り出し構える。
「ふはは。決裂ですか。では、仕方ありませんね!!」
司祭は手を上にかざす。
「今だ!! ポチ!!!!」
『バリン!!』
豆田が立っている後ろの窓ガラスを割り、ドラゴン『ポチ』が室内に侵入した。
そして、すぐに大声の咆哮。
『グガガガガーー!!』
「ひえー」「きゃーー!!」
先程まで、祈りを捧げ、じっとしていた信者たちが驚き慌てる。
「皆さん! 今ですよ!」
『バサバサバサ!!!』
次いで、ポロッポの合図で鳩の大軍が教会内に侵入する。大量の鳩は信者の頭を突く。
混乱は一気に広がり、信者たちは我先にと教会から逃げ出した。
「こら、行くな!」
司祭の必死の声掛けにも関わらず、12名の信者は逃げ出した。
残されたのは、洗脳されたであろう5名と、こちらに向かって構える3人。
豆田は、場が落ち着くより先に動き出す。
「コーヒー銃!!」
豆田はコーヒー銃を作り出し、銃口を身構える信者に向けた。
「殺しはしない! いけ!」
コーヒーの弾丸が空を切る。
「ぐわ!!」
顎先を打たれた信者は、その場に崩れ落ちる。
「え? メグ!」
倒れる信者を振り返ってしまった女。豆田はその隙を見逃さず、次弾を発射した。
側頭部を打ち抜かれた信者は、気を失った。
「なんなのあなた達!!」
1人残った信者は、懐から銃を取り出し応戦する。
『パンパンパン』
狙いも定めず空間に向かって乱射する。
豆田は椅子の陰に身を隠した。ポチも真似をして隠れる。
(やはり、武器を所持していたか。あと司祭を入れて2名。と、洗脳された5名か)
「なんだと!! あっという間2人が!! アルル。あいつらをやっつけろ!」
「ハ・イ」
洗脳されているアルルは、炎の魔法を唱えた。
司祭とアルルを守るように炎の壁が出現した。
「お前たちも働け!!」
司祭は大きく手を振る。すると、洗脳された残りの4名も動き出したす。
「アルルよ! アイツらをとっととやっつけろ!!」
アルルは、手を前方にかざす。
その手の平より、炎の弾丸がリルたちに向かって飛ぶ。
リルは慌てて呪文を唱える。
「風の聖霊よ! 我に力を!! ウイングカッター!!」
炎の弾丸に風の刃が当たり相殺する。
司祭は苦い顔をしながら、大声で指示を飛ばす。
「あなた達は、リルとそこの女、それにドラゴンを何とかしなさい!!」
司祭は手をかざし、洗脳された人達に命令を送る。
そして、豆田の方を振り向き
「私とギルで、この帽子頭をやる!!さー。ギル!行きますよ!!」
「はい!!」
ギルと呼ばれた女は、銃に弾丸を補充した。
「やれやれ、実力差が分からないのは問題だな」
「何を言うか。2対1で出すよ? その余裕面はもう終わりです!!」
豆田は、大きなため息を付くと、コーヒー銃を構えた。
ーーーー
リルは、アルルの洗脳を解こうと呼びかけている。
「お姉ちゃん!! 元にもどって!!」
「ド・グ・マ。シ・ン・ジ・ル」
シュガーは、襲ってくる洗脳された信者を攻撃をかわしつつ、最低限の攻撃を加える。
「邪魔する。殺す」
(この信者泣いてるの?)
涙を流しながら襲い掛かかってくる信者達。
『ガルルルル』
ポチは、ブレス攻撃の為にエネルギーを貯め始めた。
「ポチ! ダメ! この子たちは洗脳されてるの! ポチは攻撃しちゃだめよ!!」
『グギギ』
ポチは、口元に集約していたエネルギーを解いた。
「テ・キ・ウ・ツ!」
アルルが放った炎がシュガー目指して飛んでくる。洗脳されている信者達の攻撃に気を取られていたシュガーは、それを避けきれない。
「あ、避けられない!」
『ギイイイイ!』
ポチはアルルが飛ばした炎に向けて、ブレスを放ち相殺させた。
「ポチ! ありがとう!!」
『グルー』
ポチは少し得意げな顔をした。
「ニ・ゲ・テ」
アルルもその攻撃的な動作とは裏腹に涙を流している。
「お姉ちゃん……」
司祭はアルル達の戦いを横目で見た。
「これでは、また信者を集めないといけませんね。ま、すぐ集まりますがね」
「何だと?」
「洗脳なんて私にとっては簡単ですからね。さー!ギルやりなさい!!」
「はい! 司祭様! 帽子男め! くらえ!!」
『パンパン』
ギルの放った弾丸が豆田に向かって飛ぶ。
豆田は、それを軽々と避け、上方に飛ぶ。
「足場ゼリー!!」
豆田が上方に飛んだ足元にコーヒーゼリーのブロックが出現する。その足場を頼りに豆田はさらに高く飛ぶ。
「上?!」
ギルは困惑しながら、それを目で追う。
「コーヒーソード!!」
コーヒー銃は形状を変えソードになる。出来上がったコーヒーソードを豆田は頭上から振り下ろす。
「うそ?! 刀? キャー!!」
『バキ!!』
ギルの目の前の椅子が両断される。ギリは腰が抜け、その場にへたり込む。
「コーヒー銃!!」
豆田は着地と同時にコーヒーの弾丸を飛ばす。
「あ。」
その声が出たときには、ギルは眉間を撃たれ、意識を飛ばされていた。
「さー。あとはお前だけだ」
「ふふふ。それで追い詰めたつもりかい?」
司祭は不敵な笑みを浮かべた。
豆田は顔をしかめる。
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人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




