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リルの依頼

4章開幕です

「お、お姉ちゃんが捕まったの!! 助け出せる人を探しているの!!」


 豆田達を襲った少女は、泣きながら訴えかける。


「お姉ちゃんが捕まった? どういうこと?」


 シュガーは少女に親身に話しかける。


「おい! シュガー。ほっとけ! 帰るぞ!」


 少女は歯を食いしばり涙を止めると、豆田に向かって気丈に話し始めた。


「僕はリル。一月ほど前に元居た世界から、こちらに来てしまったの」

「元居た世界から?」


 シュガーは、その言葉に首を傾げる。


「え? あなた達もそこから来たんでしょ? だって、そのドラゴンと一緒だから......」

「私たちは、この世界の人間なんだけど、この前、異界に行ってドラゴンを連れてきたのよ」

「え? 私たちと同じ世界のヒトじゃないの?」


 リルの顔が一瞬でくもり、再度身構えた。


「やめておけ。お嬢ちゃんは、どうやっても私には勝てない」


 リルは、視線を落とし構えを解いた。


「なんで、こちらに来たんだ? 帰らないのか?」

「ゲートに飲み込まれて、こっちに来たんだけど、着いたらすぐゲートがなくなってて......」


 リルは目に涙を貯める。


「お姉ちゃんと、こっちに来たのよね?」

「そう。僕お姉ちゃんと来たんだ。二人で! で、ここのヒトたちに助けを求めたんだけど、みんな僕たちのことが見えないみたいで」

「ああ。エルフだからな。エルフはこの世界の一部のヒトにしか見えないからな」

「豆田まめお。この子はエルフなの?」

「ああ。そうだ......。だな、お嬢ちゃん」


 頷いたリルは髪をかき上げ、特徴的な耳を見せた。


「僕たちが見える人を探して、何日もさまよっていたら、白と紫のフードを被ったドグマ教信者と言う人たちが話しかけてきたんだ」


 リルは言葉を発しながら、小さな拳を握った。


「話しかけてもらった事が嬉しくて、その人達に付いていったのが間違いだったんだ」


 リルにまた涙が貯まり、流れ落ちた。


「何があったの? 話せる?」


 シュガーはリルの目線まで腰を落とすと、優しく語り掛けた。

 リルは、泣き顔のまま頷いた。


「はじめはその人たちは優しかったんだけど、昨日の夜、僕たちをどこかに売る約束をしているのをたまたま聞いたんだ。お姉ちゃんと、どういう事か聞きに行ったら激昂してきて......」


ーーーー


 小さい部屋にデスクが一つ。そこに四角い帽子を被ったドグマ教の司祭が座っている。

 そのデスクを挟んで反対側に、バターブロンド色の長髪の女性。その腰にくっつくリル。


「私たちに優しくしたのは、売り飛ばすつもりだったの?!」

「ふふふ。アルルさん。当たり前じゃないですか。この世界ではエルフは高く売れる」

「く。なんてことを!!」

「私たちの目的のためには、お金と信者が必要でしてね」


 司祭は、そう言いながら、ゆっくりと立ち上がる。

 危険な気配を察知したアルルは、自身の後ろにリルをやる。


「リル。逃げて!」

「そうはさせませんよ!!」


 アルルは、左手を司祭に向け、


「炎の聖霊よ! 我に力を!! ファイヤーウォール!!」


 アルルが手をかざした先に、炎の壁が出現した。

 司祭は、炎の壁から後退する。


「素晴らしい力だ! これは高く売れそうだ。」


 司祭は余裕の笑みを浮かべる。


「お姉ちゃん! 僕も戦う! 風の聖霊よ! 我に力を! ウイングカッター!!」


 リルの作り出した風の刃が司祭に向かって飛ぶ。

 しかし、司祭は取り出した教典で、その刃を弾いた。


「ははは。お前も素晴らしいではないか!!」


 大きな口を開けて笑う司祭は、両手を高く上げた。


「しかし、どんだけ強くとも私の洗脳の能力の前では無意味だ」


 司祭を中心にドーム状の光が現れ、それが次第に大きくなる。

 広がった光にアルルは飲み込まれてしまった。


「お姉ちゃん!!」


 光が鎮まった後、そこには表情の消えたアルルが立っていた。


「し・さ・い・さ・ま」


 アルルの声から、表情が消え、機械のように話す。


「ふふ! 成功だ!! 早速売るか?! いや、何かに使うかー?」


 ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる司祭。


(逃げて......)


 アルルは最後の力を振り絞り、リルにテレパシーを送った。


「うー。お姉ちゃん!」


 リルは唇を噛みしめながら、魔法を唱える。


「風の聖霊よ!! 我に力を!! スピードウイング!!」


 リルの身体が床から浮びあがる。

 キリっと前を向いたリルは、自身の身体に魔法力を込め、開いていた窓から飛び去った。


「ふふふ。逃げましたか......。まあいい。すぐに見つけてあげますよ」


 司祭は、逃げるリルを見つめながら、そう言った。


ーーーー


「で、街に飛んできて、お姉ちゃんを助けてくれる人を探していたの!!」


 リルはシュガーに向かって必死に話した。


「そう。お姉さんは、ドグマ教と言う人達に洗脳されているかもしれないのね」

「お願い! お姉ちゃんを一緒に救い出してくれない!!」


 リルは豆田達に訴えかけた。


「んー。かなり危険だな。洗脳してくるとなると」

「豆田まめお。どうにかできないかしら?」


 腕を組みながら豆田はしばらく悩み、こう切り出した。


「やれやれ。シュガーがこう言いだしたら止まらないな。嬢ちゃん。どこにその教会はあるんだ?」

「町の外れなのは覚えているんだけど、正確な場所は覚えてなくて......。必死に逃げてきたから......」


 また涙を溜めたリルは、地面を見つめた。


「なるほど。なにかヒントは無いか?」

「逃げ出したのは夜で。この町の明かりを求めて、必死に逃げてきたの」

(なるほど、少し距離がありそうだな。)


 豆田はアゴに手を当てながら、思考をまとめる。


「そう言えば、フードを被っていたと言っていたな?」

「紫と白のローブをきてた! あと、槍と竜のマークがローブに書いてあった」

「なるほど。分かった。十分だ」


 リルが顔を上げる。


「え? 探してくれるの? 助けてくれるの?」

「これは依頼で良いわね? リルちゃん」

「依頼? あのお金は全く無いんです」


 豆田は片眉を上げながら、困ったフリをする。


「はー。お姉さんを助けたら、二人で何か仕事でもして貰おうか」

「え? やります!!! なんでもやります!!」


 シュガーはニッコリ微笑んだ。


「はは。では、とりあえず敵の施設を探すのと、救出の準備。あと腹ごしらえだな」


 豆田は視線を路地の奥に向けた。


「おい! ポロッポ」


 ポロッポがひょこりと顔を出す。


「豆田さん。終わりましたか?」

「いや、急遽依頼を受けることになった」

「そうなんですね」

「で、だ。ポロッポ。紫と白のローブを町で見つけたら連絡して貰えるように、街の鳩達にお願いできないか?」

「えー。お願いするんですか? そうなると私も報酬を頂かないと……」

「分かった! ポロッポには永遠の眠りをプレゼントしよう。やれ、ポチ!」

『ガルルル!!』

「あーー!! 豆田様! 嘘です! 喜んでさせて貰います!」

「分かればいい」

「では、町の鳩たちに連絡してきますね!」


『パタパタ。』


 ポロッポは、逃げるように空に消えた。

 シュガーは、リルに微笑みかけると、


「じゃー。とりあえず、私たちのお家に行こうか」

「え? お家?」

「お腹も減ってるだろうし、それにそのボロボロの服も何とかしないとね!」


 リルは、ボロボロになった自身の服を見て赤面する。


 豆田達はリルを連れて自宅を目指した。


ーーーー


帰宅した豆田は、すぐにキッチンに向かった。コーヒーを淹れるようだ。


「シュガー。私はコーヒーを淹れる。とりあえず、嬢ちゃんをシャワーに入れてやってくれ!」

「分かったわ。リルちゃんこっちね」


 洗面所にリルを案内するシュガーしたシュガーは、使い方を説明する。


 その間に豆田は買い物袋からポチの為に買った物を取り出した。


「ポチ! 先に餌を食べようか」

『ガルルルル』

「ほれ、フランスパン!!」

『ガルーーーーーー!!』

「嬉しそうで良かった!」


 ガツガツ食べるポチを見て豆田は満足そうだ。


(さー。どうやって、嬢ちゃんのお姉さんを救出したもんか……。洗脳された人物もこちらに攻撃してくると考えた方が妥当か。と、いう事は、殺傷能力が高い武器は危険だな。しかし、弱すぎても。んー。どうしたものか)


 シュガー達はシャワーを浴び終わり、リビングに出て来た。


「豆田まめお。お風呂から上がったわ。とりあえず、ご飯にするね」

「ああ。頼む」


 リルはカウンターでコーヒーを楽しむ豆田に近寄り、


「豆田さん。ありがとうございます」

「嬢ちゃん。いや、リル。とりあえず、しっかり食べてから今後の事を考えよう」

「はい!!」


 リルは、にこやかな笑顔を見せた。

 シュガーは、パスタを茹でカルボナーラを作った。


「はい。リルちゃん。ゆっくり食べてね」

「うわー! 美味しそう!」


 空腹だったリルは、口いっぱいに頬張りながら、目を輝かせて食べる。


「凄く美味しいです!!」

「少し落ち着いた?」

「はい。でも、この間にもお姉ちゃんが」

「リル。まだリルが逃げ出して、1日しか立っていない。もう売られたとは考えにくい」


 それを聞き、リルは少し安堵した。


「それに売るにしても姉妹が揃っている方が良いと考えているだろう。じゃー。リルを捕まえに来るだろうな」


 リルは怯えた表情をみせた。


「まー。良い風に考えれば、ドグマ教の連中はリルを探しに来るわけだから、そいつらを先に発見して尾行すれば、施設を簡単に発見できる」

「なるほど!」

「ま、尾行はポロッポに任せれば、安全に施設は発見できるだろう。問題は敵の戦力だ」

「豆田さん! 僕も戦います!」


 豆田は冷静な口調で


「としても、私とリル。あとはシュガー。場合によって役に立つポロッポかぁー」

『ガルルルル!!』

「あー-。ポチも戦ってくれるか」


 豆田は帽子を被り直しながら、思考を巡らす。


「しかし、こちらの戦力は厳しいな。他に信者は何人ほどいた?」

「全員を見たわけじゃないけど、多分20人は。」

「多いな。しかも騙されているだけだとすると攻撃も出来ない」

「豆田まめお。どうするの??」

「んー。そうだな……。まずは……。ブツブツ……」

「?」


 豆田の行動に困惑するリル。


「あ。豆田ワールドに入ったわ。リルちゃん。こうなると長いから先に寝た方がいいわ」

「え? 豆田さんをほっといても良いんですか?」

「ん? 大丈夫よ。本当に長いから。寝よっか。あ。私のベッドを使う??」

「あ。僕は、どこでもいいです」

「じゃ。ベッドにしようか」


 豆田を置いたままロフトに上がるシュガーとリル。

 ロフトに上がったリルは驚愕し、口をパクパクと動かす。


「ん? あ! そうなの。我が家のロフトには異界ゲートがあるの」

「えー!! これは使えるのですか?」


 リルは驚きつつシュガーに尋ねる。


「使えるわよ! 二人の元の世界に戻れると思うわ! でも、出た先が島だから、そこからどうするかは、また考えないといけないと思うけど」

「じゃー。帰れるんですね」


 リルの瞳は潤む。


「そうね。でも、まずはお姉さんを助けないとね」

「はい」


 リルは嬉しそうに大きく頷いた。


「さ、明日の為に今日は早く寝てね」


 シュガーは、ロフトの電気を消した。


(お姉ちゃん……。助けに行くからね)


 リルは天井を見ながら、再度決意した。


 メインフロアでは、まだ豆田が『ブツブツ』言っている。



ご覧いただきありがとうございます!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――――――

人物紹介


・『豆田まめお』 

主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』

コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。

コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。


・『シュガー』

ヒロイン。ココア色のロングヘアー。

世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。

『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。


・『クロス』   

豆田の幼馴染。刑事。

箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。

天然ボケ。


・『ポロッポ』

ハト。王様に使える伝書鳩。

鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。


用語説明


・『こだわリスト』

こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。

戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。


・『純人』

純粋な心で物事をみる人々。

職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。


・『異界の者』

違う世界から現れたと言われる人々。

『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。

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