ポチの餌
ドラゴン『ポチ』の餌になりそうな食材を探す為に、街に繰り出した豆田一行。
「よし! とりあえず、お店を一軒づつあたり、ポチが食べられそうな物がないか探そう!」
「そうねー。じゃー。まずは、食材屋さんからかしら?」
「そうだな。まずは家から一番近い店に入ってみるか」
『カラカラ』
食材屋の扉を開け、豆田達は店舗内に入った。
「いらっしゃいませ。」
店員の対応は、いつも通りである。ポチの姿は見えていないようだ。
(このお店は、『こだわリスト』はいないみたいね)
「シュガー。とりあえず、ここで数点買ってみるか」
「分かったわ! ポチ、これは?」
シュガーは、手に取ったリンゴをポチの鼻先に近づける。ポチはお気に召さないようで、首を横に振った。
「じゃー。これは?」
シュガーは食パンを鼻先に近づけた。ポチは首を横に振る。
「ポチ。少し食べてみたらどうだ?」
『主様。食べなくてもわかる。凄く臭い』
豆田は商品を手に取って匂う。
「そうか? 仕方ない。次の店に行くか」
食材屋を同様に2軒回るが、ポチが食べられそうな物は見つからない。
「豆田まめお。難しいわねー」
シュガーは、少し悩んでから、
「豆田まめお。パン屋『ショパール』さんや食材屋『リスフランス』さんは??」
「んー。良い物はあるだろうがなー。餌代は出来れば安上がりにしたかったんだがな」
「いいじゃない! 食べられるものが無いより良いでしょ!」
「んー。確かに。ま、ダメ元で行ってみるか」
豆田達は、『エスタ通り』を進み、パン屋『ショパール』に入った。
『カラカラ』
「きゃー!!」
扉を開けると、店員『カエデ』の悲鳴が聞こえた。
「ド・ドラゴン!!」
「カエデ。久しぶりだな」
「あ。豆田さんとシュガーちゃん」
「カエデさん。すいません。このドラゴンが食べられる物を探してまして」
「え? 私は美味しくないですよ!」
「いえ、パンを」
「......」
赤面したカエデは、少し固まったあと、早口で話し出した。
「ああ。あー。そう! そうよね。パンよね。大丈夫? 私を襲わない?」
「ああ。大丈夫だ。ポチ。ゴロン」
ポチは豆田の指示に大人しく従い仰向けになった。
(またも我がこのような恰好を! 何たる屈辱!!)
豆田は、不貞腐れるポチの口にフランスパンを詰めた。ポチの瞳が瞬時に輝く。
(ん―!! 何たるもの!! 美味じゃ!)
『ガツガツ』
「あ、うちのパンを気にってくれたのね!!」
ポチは、仰向けのまま尻尾を振った。
「良かった! 食べてくれた!!」
シュガーは、美味しそうにパンを平らげるポチを見て、安堵した。
『ガルルウル』
ポロッポは、すぐさま訳す
『こんなに美味しい物は、はじめて食べた!! もっと欲しい!!』
「ポチ。食べられる物が見つかって良かったな!」
「ほんと。コレで、一安心ね」
「よし。では、他にも食べられる物がないか、探しに行くか」
「そうね」
シュガーは、パンを数個購入すると、パン屋『ショパール』を後にした。
「また来てくださいね! ポチさんも!」
カエデは、にこやかな笑顔を見せながら手を振った。
***
続いて、豆田達は、行きつけの果物屋さんの門をくぐる。
「あら? 珍しい。今度はドラゴンの子供も一緒かい?」
「ああ。すまないが、ドラゴンが食べれそうな物はないか?」
「豆田さんには飽きないねー。これはどうだい?」
丁度、ポチの口に収まるサイズのリンゴを貰う。
豆田はすぐにポチの口にリンゴを突っ込んだ。
『ぼりぼり』
ポチは、眼を輝かせ、鼻息荒く食べきる。
『主様。これも凄く美味しい!!』
「なるほど。どうも『こだわリスト』が作ったものは食べられるようだな。なんて、贅沢な餌だ」
豆田達は、溜息をつきながら、棚から美味しそうな果物も数点撰び、購入した。
***
豆田達は、最後に『おやじの豆屋』にも寄ることにした。
『主様。ここもいい匂い』
「お!! 豆田の旦那。今日はドラゴン連れか」
(凄いわ。オヤジさん全く驚かないのね)
「ああ。この前の『豆田ブレンド超遠距離用』で、退治したドラゴンだ!!」
「えらい小さいドラゴンだったんだな!」
「いや、デカかったんだが、倒したら小さくなった」
(あ。豆田まめお。説明が面倒だったな)
シュガーは豆田の考えが分かるようになってきた。
「へー。そんなこともあるんだな。で、ところで、今日はどの豆だい?」
「そうだな。今日もいつものコーヒー豆を頼む」
「はいよ!」
オヤジは、袋にコーヒー豆を詰める。
『主様。我もこれ食べたい!!』
「ん? これは直接食べる物ではないぞ?」
『でも食べたい!』
「オヤジ!! このドラゴンが豆を食べたいと言っている。すまないが、少しだけ与えても良いか?」
「ん? そうか。ほれ!」
オヤジは、ポチの顔を掴むと、その口の中にコーヒー豆を流し込んだ。
『ぐいいいいいいい』
「ポチ! 大丈夫?」
心配するシュガー。
『凄くポリポリしてて美味しい!!』
「はは。そうか。よし! 追加で買ってやろう! オヤジ。あと3袋追加で!」
「はは。了解!」
「待てよ。豆を食べれるって事は、コーヒーも飲めるか? よし、試してみよう。オヤジ! キッチンを借りる」
「好きに使ってくれ」
購入した豆を受け取った豆田はオヤジにキッチンを借りると、早速コーヒーを淹れはじめた。
「流石。オヤジ。今回の豆も良い香りだ!」
「だろ??」
オヤジは得意気な笑みを見せた。
「ポチ。さー! コレを飲んでみろ」
ポチは差し出されたコーヒーに口をつけた。
『主様。さっきの豆のままの方が美味しいです』
「んー。そうか。残念だ。では、ポチは豆のままだな。ま、これで餌の問題は何とかなりそうだな。オヤジ。キッチンを貸してくれて、ありがとう。では、帰るとする」
「そうか。また寄ってくれ」
豆田は手で挨拶すると、飲みかけのコーヒーを持って、店を出た。
ポチの餌になる食料を沢山持った豆田達は家路を急ぐ。
「シュガー。コレでポチの餌問題は解決だな」
「ほんと、一安心ね」
『エスタ通り』を出た時に、豆田は自身に突き刺さる視線に気付いた。
(ん? つけられているな)
「シュガー。気を付けろ。誰かが尾行している」
豆田は、小声でシュガーにそう伝えると、コーヒーカップから、『こだわりエネルギー』を浮かび上がらす。
「ほんとに?」
真剣な顔の豆田は、手に持った荷物をシュガーに手渡した。
「いいか。シュガー。次の角を曲がった路地で捕まえる」
「分かった。私は?」
「シュガーは、ポチと一緒に距離をとってくれ。尾行者の目的が分からない以上どんな危険があるか分からない」
シュガーは小さく頷いた。
豆田は『こだわりエネルギー』を銃に変え、背後から見えないように構える。
「シュガー。今だ!」
豆田達は通りの角を曲がった。シュガーは一目散に路地の奥に向かって走る。
豆田は、コーヒー銃を構えつつ、尾行者を待ち構える。
尾行していた人影も豆田を追いかけて、角を曲がった。
「どうして、私たちを尾行するのかな?」
「バレてる?」
人影は慌てて距離を取ると、両手を目の前でクロスし構えた。
「僕は強い人を探してるんだ! 悪いけど、試させてもらうよ!」
「ん? なんだ?」
人影は豆田に向かって殴りかかる。
豆田はそれをいとも簡単に避ける。
「えい! えい! ええい!」
しかし、人影は攻撃の手を緩めない。豆田の半分ほどの背丈の小さな人影は、必死にパンチやキックを繰り出し続ける。
「なんだ? 格闘技経験者か? 私に小さな君を攻撃する理由がないが……」
「言っよね? 僕はすぐに強い人を探さないといけないんだ!」
「ん? こんなけ攻撃を避けているんだ。充分じゃないか?」
人影の手が止まった。両手を膝につき、肩で息をしている。
「これだけじゃダメなんだ!! じゃー。今度は、これを試させてもらうね」
「こら! 小さいの! 話を聞け!」
人影は、後方に飛び、豆田と距離をとった。
「風の聖霊よ! 我に力を! エアーーズ!!」
魔法を唱えた人影の周りに、風の刃が5本浮かんだ。
「くらえ!!」
緑色の先が鋭利に尖った風の刃は、豆田に向かい加速した。
「コーヒーシールド」
豆田は、コーヒー銃を瞬時にシールドに変えた。
風の刃はコーヒーシールドに弾かれる。
「何?! まだだ!」
「んー。この子は、話を聞かないな」
人影は、うろたえながら再度魔法を唱えた。
「エアーズ!!」
「コーヒーソード」
豆田は、シールドをソードに変え、向かってくる風の刃を切り落としながら、人影に近づく。
「うわ! 風の聖霊よ! 我に力を!! フアジョン!!」
人影は、地面からフワリと離れる。
豆田は、その様子を見ると、
「コーヒー銃」
今度は銃に持ち変え、弾丸を人影のおでこに向かって飛ばす。
『ペチ!』
「痛ったい!!」
弾丸がオデコに直撃し人影はバランスを崩して落ちてきた。
『ドシン!』
「あいたたた」
「これで話す気になったかい? お嬢ちゃん」
シュガーは、物陰から姿を現し豆田に駆け寄った。
「うう。強い」
「で、強い人をどうして探してるんだ?」
「あのお願い! 協力してほしいの!!」
「ん? 急に襲ってきたくせに都合がよいな」
「ごめんなさい。急いでて。緊急なの」
「悪いが、他を当たってくれ」
豆田は、その場を立ち去ろうとする。
「お、お姉ちゃんが捕まったの!! 助け出せる人を探しているの!!!」
泣き出す小さな女の子を見て、豆田は少し困った顔をした。
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次回から4章です!
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人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




