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ポチの住処

『ギース』討伐祝いの宴を終えた豆田達は、『ギース』こと『ポチ』の住処に向かう事にした。

 

 余った食材をカタル達の小屋に置き、豆田達は火山に向かって歩き出した。

 

「爺さん。ポチの住処はどこにある?」

「豆田様。『ギース』様の住処は……」

「『ギース様』ではない『ポチ』だ」


 じい様は、一瞬困惑し、固まるが、すぐに適応する。


「豆田様。『ポチ様』の住処は……」


 じい様は、豆田の方をちらりと見る。豆田は満足気な表情を見せた。

 安堵したじい様は、続きを話です。


「住処は火山の噴火口の中にありますのじゃ。『ポチ様』が復活するまでは、月に一度お手入れをしに行っておりました」

「ほう。何が置いてあるんだ?」

「先祖より代々授かった宝箱が数個と、剣と盾がありますのじゃ。豆田様の気にった物がありましたら、お持ちになって下さいませ」

「んー。コーヒーに関係ある物は無さそうだな」

「豆田まめお。見てみないと分からないわよ」

「まー。そうだな。見てから考える事にしよう」


 ポチは豆田達のやり取りを聞き、冷や汗が止まらない。

 

 火山の山頂までの道のりは、『ギース』の暴れた痕跡が生々しく残る。破壊された岸壁の残骸と血痕が到るところにあり、戦闘の激しさを物語る。


 その光景を見て『良く生きていたな』と、シュガーは思った。

 岩だらけ道は、過酷を極める。

 

「豆田様。わしはもう歩けそうにもありません。後はカタルに任してもええですかな?」

「爺さんのその膝にはキツイな。ここまでで十分だ。」


 じい様は、腰掛けるのに丁度良い岩を見つけると、そこに腰を下ろした。


「じゃー。後は僕について来て下さいね」


 豆田達は、じい様をその場に残し、山頂に向かって進むことにした。

 

『ギース』が睡眠弾に撃たれ、落下した場所から山頂までは一気に傾斜がきつくなる。


 豆田とカタルはスイスイ登っていく。シュガーはその後ろから、息を上げながら続く。

 ポチは背中を押し、シュガーを補助する。

 

 山頂にたどり着いた一行の目の前には、大きな噴火口が広がっていた。


 眼下には、熱帯雨林の森が点在する島の全貌が見える。円形の島の外には綺麗なピンク色の海が広がっている。

 

「凄い景色だな」

「本当、凄い景色!」


 登頂にたどり着いたシュガーは、大きく息を吸いこみながら伸びをする。


「海はピンク色なんだな。どんな魚がいるんだ? そもそも生物はいるのか?」

『グルグルガー』


 ポロッポは慌てて通訳を始める。


『主様。3メートルほどの小さな余り美味しくない生物は、うじゃうじゃいます』

「3メートルほどの大きな生物がうじゃうじゃ?!」


 シュガーは、びっくりする。


『我の元の大きさからすれば、小さいもんです』

「確かにな。あのデカさからならな。そう言えば、ポチ。この島から出たことはあるのか?」

『5年前にココで目覚めてからは無いですね』

「ん? その前は?」

『その前は600年ほど、ガラスの中に閉じ込められてました』

「ガラスの中にか?」

『はい』

「その前は?」

『それ以前の記憶があんまりないんです』

「ん? 記憶がない?」


 豆田は急に鋭い眼光をポチに向ける。


『正確に言うと、光の中、髪の長い人が何か言っている記憶があるんですが』

「何を言っていたんだ?」

『主様。それがさっぱりで』


 豆田はアゴに手を当て、考え込む。

 

「5年前に目覚めて、何故この島から、出なかったんだ?」

『それは、魔法壁が島の周りを囲っていて、邪魔で出れなかったんです』

「ん? 何故、魔法壁が覆っていたんだ?」

『さー』


 豆田は首を傾げる。つられてポチも首を傾げる。

 

「まー。いい。とりあえずポチの住処に向かうか」

「豆田まめお神様!! こっちから火口におります!」


 カタルは、噴火口の一部のなだらかな場所をから、火口に向かい降りて行く。

 豆田達もそれに続く。

 

 赤茶色の脆い砂のような場所を滑り降ると、平らな火口の底についた。薄暗くなった底から横に伸びる通路が見えた。


 通路と行っても深紅のドラゴン『ギース』の巨大が充分に通れる幅がある。


 カタルは、そこを指差し、


「豆田まめお神様。この先がポチ様の住処です」


 と、言い。1人で中に入っていった。

 豆田とシュガーは用心しながら、それに続く。


 うす暗い通路の側面は、簡単な装飾がなされているだけだが、年季のせいか神々しさを感じる。


 しばらく歩くと、大きく開けた場所に出た。ドーム状の空間には、天井から所どころ光が漏れ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。中央には舞台のような盛り上がりがあり、四隅に石でできた燭台がある。

 おそらくこの中央に深紅のドラゴン『ギース』は封印されていたのであろう。


「あー!!」


 カタルは、叫び声を上げ、地面をバタバタ踏む。


「カタル少年! どうした?」


 涙を浮かべながら、カタルは、前方を指差す。


 そこにはこの空間に似つかわしくないガラクタの山があった。沢山の物が積まれ、ごちゃごちゃしている。


「ん? なんだ?」


 ポチは、豆田の後方でソロリとその場から逃げようと試みる。


「ポチ!」  


 全身をビクッとさせたポチは、そーっと豆田の方をみた。


「ポチ! コレは何だ?」

『し、知りません』


 ポチをギロリと睨んだ豆田は、ごちゃごちゃした一角にしゃがみ。漁りはじめた。

 その中の物を次々と確認する。


「靴。右だけ。傘の骨だけ……」


 シュガーもしゃがみ込み豆田を手伝う。


「豆田まめお。手袋の左だけ。コレはまな板? 腐ってるけど……」


 ポロッポもガラクタの周りをパタパタと飛ぶ。


「豆田様、人間の入歯もありますねー」

『ぎやあややかかいあ』


  鳴き声をあげたポチは、頭を抱え恥ずかしそうである。


「え――っと。折れた杖……」

「何これ? 臭い。タオル?」

「ポチ。ろくなもんが無いな」

『主様。だから、なにもないって言ったじゃないですか!』

「ここに元々あった宝はどうしたんだ?」

『キラキラしたのが眩しかったので、捨てました』

「えー! 捨てた?」


 カタルは、ショックのあまり、立ち尽くす。


「って、事は、ゴミしかないってコトか?」


 豆田はガラクタの中から立ち上がり、ポチに再度問う。


『だから、本当に何もないって言ってたじゃないですかー』

「しかし、このゴミはどこから取ってきたんだ? カタル達の他には、この島に人はいないんだろ?」

『それは主様。月に一度ほど人間の船がやって来て、我を攻撃してくるんです。鬱陶しかったので、船ごとぶっ壊してやりましたが、その時、海に浮かんだ物を珍しい物をとってきて、集めてたんです』

「なんで、そいつらはポチを襲うんだ?」

『さー』


 豆田は、首を傾げ、思考に入る。


(ポチをこの島に閉じ込めて、討伐しようとしていた? なぜだ?)


 ブツブツ呟きながら、豆田は大きな『ポチ』の住処の中をブラブラと歩き回る。


 豆田は思考を続けながら、周囲を観察し始めた。


(ん? あそこの質感だけ違うんじゃないか?)


 豆田は壁に一角に歩み寄ると、壁に触れ確認する。

(やはり……)

「ポチ。ここだけ壁の質感が違うが何だ?」


 ポチは、しばらく考え、ハッとする。


『主さま。そこは怖い絵が描いてあったので、土で隠した後です』

(ドラゴンが怖い絵って?)


 シュガーはツッコミたかったが我慢した。


「豆田まめお神様。そこには確か壁画があったと思います」

「ん? どんな壁画だ?」

「どうと言われると説明しにくいのですが」

「とりあえず、確認してみるか」


 そう言うと豆田は、壁の表面に盛られた土をどけ始めた。

 シュガーとカタルも駆け寄り手伝う。


 5分ほどの簡単な作業で、盛られた土の中から、壁画が現われた。

 豆田は、表面の細かな土を丁寧に払い落とすと、全体像を見る為に、壁から離れて距離をとる。


 壁一面に描かれた壁画は見慣れない文字が並び。壁画の中央には何かの儀式を行っている暗号のような物が見える。

 

 大きい三角の、それぞれの角に、傷ついたドラゴン。竜巻のような模様。珠のような物が描かれて、三角の底辺の部分には沢山の人が両手をあげているように見えた。


 残念な事に、三角の中心部分は、意図的に大きく削り取られていて、全容は分からなかった。


「なんだ? 削られているぞ? この壁画は何を意味しているんだ?」

「豆田まめお。何かしら?」

『主様。ね。怖いでしょ。隠しましょう』

「ま、全く分からん。が、大事な何かだろうな……」


 豆田は短時間の思考の後、考える事をやめた。


「今は考えても分からないな。とりあえず、もっかい隠しておくか!」

「そうね。良く分からないもんね」


 豆田達は、再度壁画に土を塗り見えないように隠した。


 そして、結局何も手に入れず、ドラゴンの『ポチ』の住処を後にしたのだった。

 

「豆田まめお。あれは何だったのかしら?」

「何だろな? あ! そういえば、大切なことを思い出した」

「何? さっきの壁画のことで?」

「いや、ポチ! お前は何を食べるんだ?」

「あ、もう壁画には興味ないのね」

「考えても分からないことは、考えるだけ無駄だ。それより目前の餌の問題の方が大切だ」

『私は基本的には何でも食べますが、嫌いなものが沢山あります』

「それは面倒だな」


 カタルは豆田の服を引っ張っぱり、


「豆田まめお神様。今までお供えしていた、穀物はあるのですが……」


 と、伝えた。


「ん? いや、それはいらない。それを貰ったら、この島を平和にした意味が何もないからな」

(豆田まめおのこう言うところは素敵ね)


 シュガーは、朗らかな表情を浮かべた。

 

「と、言うわけで、シュガー。家に帰って、町に出かけるか」

「町? ドラゴン連れて、大丈夫?」

「ああ。それは大丈夫だ。どうせ、ポチは『こだわリスト』か『純人』にしか見えない」

「あ、妖精さん達と同じなの?」

「そういう事だ」

 

 豆田達は、じい様と合流した後、のんびりとゲートの前までやってきた。


「 さぁ、とりあえず帰るとするか。またな。爺さん、カタル少年」

「豆田様。何もお礼が出来ず申し訳ありませんじゃ」

「大丈夫だ。ま、また何かあったら、協力してくれ」

「ええ。それはもちろん! 何でも申しつけ下さい!」


 豆田は口角を上げると、ゲートに手をかざした。

 黒と紫の渦巻きは、振動音をあげ、時計回りに動き出す。


「豆田まめお神様。シュガー女神様。また来てくださいね! お待ちしてます」


 にっこり微笑んだカタルは、豆田達に向かって大きく手を振る。


 豆田達は、動き出したゲートに足を踏み入れ、異界から消えて行った。


***


 ゲートを抜け、自宅のロフトに戻ってきた豆田達は、早速ポチのエサとなる食料を探しに街に出かける事にした。


 と、言っても、もちろんコーヒーを淹れてからである。


 豆田がコーヒーを淹れる間、カウンターに大人しく座るポチとシュガー。ポロッポはカウンターに専用のコースターを敷き、その上に足を折って座る。


 豆田はコーヒーを淹れながら、急に吹き出す。


「何だ。この光景は!」


 シュガーも自身の左横に座るポチを見て笑う。


「本当だわ。奇妙な光景よね! カウンターにドラゴンと鳩がいるなんて!」


 昨日の激闘が嘘であったかのような穏やかな時間が過ぎる。


(あの『ギース』がこんなに可愛くなるなんてねー。何が起こるか分からないものね)


 キッチンでコーヒーを淹れる豆田の姿を見て、シュガーは、数ヶ月前の自分からは本当に考えられない生活をしている事に、一瞬目頭が熱くなる。


 それを察されないように、シュガーは、スッと席を立ち、


「豆田まめお。お出かけの用意をしてくるわね」


 そう言いロフトに上がった。


 コーヒーを淹れ終わった豆田は、土間にかかる帽子を1つ選び、深く被ると、コーヒーカップを片手に階段を降り玄関に向かう。


 後に続くポチ。その頭上にチョコンと座るポロッポ。


「豆田まめお! 待って! すぐに降りるわ!」


 買い物バックを肩からたすき掛けたシュガーは、ロフトからの階段を駆け降りる。


***


 太陽の日は傾き、空を赤く染め始める。


 グロアニア王国の首都『コルト』は、比較的治安も良く、夕方に差し掛かる時間帯にも関わらず、メイン通りの『エスタ通り』には多くの人が行き交う。


 仕事帰りの人や、夕食の買い物をする人。カップルも多く、街が栄えている様子が良く分かる。


『主様。ここは人が沢山いるんですねー。これが今晩のエサですか?』

「エサじゃない! ポチ。食べるなよ」

『エサじゃないんですか! 食べ放題だと思いました』

「食べたら、即あの世行きだ!」


 ポチは、目を丸くして驚く。


『1匹もダメですか?』

「1匹もだ!」

『では、何を食べろと?』

「それを今から探しに行くんだろうが!」

「そうよ。美味しい食べ物って沢山あるんだから! 探しに行きましょう!」


 ポチの腕を引っぱるシュガーの笑顔につられてポチも何だか楽しい気持ちになった。


***


 夕焼けが少しづつ暗闇に染まる時間帯。店舗には明かりが灯まりはじめ、レストランからは、美味しそうなトマトソースの香りが立ちこめる。

 大きな袋を持った買い物帰りの人々で、『エスタ通り』は、いつも通り賑わっている。

 が、いつもと違う事と言えば、なぜか、道行く人々が、豆田達の方をチラッと見てくる事だ。


「豆田まめお。おかしいわ。皆こっちを見ているわ。もしかしてポチがみんなにも見えてる?」


 ポチの方を向き、しばらく思考した豆田は何かに気付いた。


「あ! すまない。忘れてた」


 と、シュガーに耳打ちながら笑う。


「ん? 何を忘れてたの?」

「ポロッポがポチの上に乗ったままだ。じっとしてる鳩が浮いて移動してたら、そら不思議だよな」


 シュガーもようやく気付く。


「あ! 確かに」


 シュガーは、肩を震わせ笑う。


 ポロッポも「あ!!」と、気付き慌てて、ポチの頭上からパタパタ飛ぶ。


 豆田達は笑いを堪えながら、メイン通りを歩いていく。


 その豆田達のやり取りをメイン通りから一本外れた路地から、見つめる人影が一つ。

ご覧いただきありがとうございます!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――――――

人物紹介


・『豆田まめお』 

主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』

コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。

コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。


・『シュガー』

ヒロイン。ココア色のロングヘアー。

世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。

『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。


・『クロス』   

豆田の幼馴染。刑事。

箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。

天然ボケ。


・『ポロッポ』

ハト。王様に使える伝書鳩。

鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。


用語説明


・『こだわリスト』

こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。

戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。


・『純人』

純粋な心で物事をみる人々。

職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。


・『異界の者』

違う世界から現れたと言われる人々。

『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。

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