ドラゴンポチ
ドラゴン『ポチ』の卵と契約を結んだ次の日の朝。
早朝から豆田は白いシャツの上に黒いエプロンを身に着け、キッチンに立つ。
まず始めにガラス瓶に保管してあるコーヒー豆から、今日の気分にあった豆を吟味する。次いで、ヤカンに水を入れ、お湯が沸くまでの間に、豆を挽きはじめる。
心地よい『カリカリ』音と共に、リビングにコーヒーの優しい香りが漂う。
「んー。豆田まめお。おはよう」
リビングのソファーで寝ていたシュガーは寝転がったまま背伸びをする。
「シュガー。おはよう」
「今日は、珍しい香りのコーヒーね」
「ターメリア産のコーヒーなんだ。少しチョコのような香りがするだろ?」
「ホントね。少し甘い香りがするわ」
豆田は、満足そうな表情を浮かべながら、フィルターに挽いた豆を入れ、お湯を注ぐ。
香りは更に広がり、リビング中に安らぎを与える。
「豆田様ー。緊張して、しっかり寝られませんでした」
情けない声の主が、ロフトからパタパタと降りてきた。昨日より明らかに二回りほど大きく太っている。
「ん? ポロッポ。何で、太ってるんだ?」
「豆田様。ほんと凄く美味しいケチャップで、舐め切ってしまいました」
「全部か?」
「はい! 少し足りませんでした」
タプタプのお腹を揺らしながら、そう言うポロッポを見て、豆田は楽しそうに口角を上げる。
「そのまま焼いたら、味付けはいらないな」
「豆田様―!!!!!」
「はは。ウソだ」
豆田は、ポロッポの分のコーヒーも用意し、カウンターに置く。
『ギガガグガ』
ロフトからドラゴン『ポチ』の卵が唸っている声が聞こえる。
「あ。ポチが話しているのを訳しますね。えーっと」
ポロッポは、腕を組み、胸を張り、声色を変えドラゴンが『話してる』っぽい演出をする。
『もう孵ってよいですか? 主様!』
「ん? ダメだ。朝御飯を食べてコーヒーを飲み終わってからだ」
『主様。分かりました』
ドラゴン『ポチ』は、大人しく朝食の時間が終わるのを待つ。
トーストを焼いたものにジャムを塗っただけの簡単な朝食を済ませて、食後のコーヒーも味わった豆田達は、コーヒーカップに熱々のコーヒーを入れて、ロフトに上がる。
ドラゴン『ポチ』の卵の前に横一列に並ぶ豆田達。ポチに舐められないように、腕を組み偉そうな雰囲気を出す。
「よし! 準備はできた! ポチ。いいぞ!」
『主様。では、早速はじめます!』
ドラゴン『ポチ』の卵は、小刻みに振動し、発光し始めた。
『グギギガガガー』
ブルブル震える卵の上部から亀裂が入り、その裂け目から、赤い光が漏れる。
次いで、狭い裂け目から鋭い赤い爪がわずかに見えた。
『ぐぎー―――!』
気張った声をあげたポチは、その鋭利な爪で裂け目をバリバリと広げ、自ら殻を割る。
大きくなった裂け目から、深紅のドラゴンがニョキっと顔を出す。
大型犬と同じくらいの大きさの顔は、大きな目がクリクリとし、愛らしい顔。
その目は犬と言うより、猫に近い。ゴールドに少し緑が混じったその瞳は、見る物を魅力する。
『ギース』の面影は微かに残るが、小さな口と牙からは怖さを全く感じない。
「え! ウソ! 可愛い!!」
シュガーの顔が、一気にニヤける。
ポチは残った殻を内部からバリバリ押し割り、その身体すべてを外に出す。
深紅のドラゴン『ポチ』は、1メートルほどの大きさで、全身がキラキラした細かい深紅のウロコで覆われているが、腹部のみ黄土色だ。
頭部には小さなとがった角が2本。そして、大きなクリクリした目。子竜だと一目見て分かる。
短い首、しなやかな胴体、四本の足に鋭い深紅の爪。折り畳まれた翼は、深紅の骨組みからフワフワとした白い羽が生えている。
尾は細長く、天辺に小さなトゲトゲが並ぶ。
子竜『ポチ』は、その小さな羽と尻尾を目一杯伸ばし、大きな伸びをする。
「おおー。ポチ!」
ドラゴンの卵が孵る事を反対していた豆田も何故か嬉しそうだ。
「ポチ! よろしくね」
シュガーは、ポチの前に座り、頭を優しくなでる。
ポチはグルグル喉を鳴らし、嬉しそうである。猫っぽい。
豆田は、ポロッポの体を掴むと、ポチの頭に乗せた。
「ドラゴンの上に鳩。面白いし、可愛い!!」
「しばらくは通訳が必要だからな」
「なんで?」
「今から異界に行って、色々確認したい事がある」
「あー」
シュガーは、納得した様子。
「まずは、ドラゴンの卵から孵った事をカタルと爺さんに報告しないとな」
「分かったわ。異界に行く用意をするわね。カタルくん達とのお祝いの用意もしなくちゃ!」
「ああ。そうだな。用意を頼む」
シュガーは、嬉しそうな顔を見せると、二階に降りて行った。
キッチンに入ったシュガーは、一通り食糧庫と冷蔵庫の食材を確認する。
「豆田まめお!! コレだけじゃ足らないし、ちょっと買い物に行ってくるわ」
キッチンからシュガーの声が聞こえた。
豆田はロフトから身を乗り出し、手で合図を送る。
シュガーは、バスケットを片手に買い物に向かった。
ご覧いただきありがとうございます!
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!
どうぞよろしくお願いいたします!
――――――――
人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




