決戦の後
光の泡となったドラゴン『ギース』は大きな卵になってしまった。
ほんのりと赤色の光を放つ卵は、豆田と同じくらいの大きさであった。あの巨体から考えると不自然なほど小さい。
「豆田まめお。この卵は?」
「ドラゴンが卵になったということだろうな。どうしたものか」
腕を組み悩む豆田のシャツは所どころ破れ、帽子の後ろ半分は焼けて変形している。
全身は傷だらけの砂まみれであった。
「ぷっ。あはは。ダメ。豆田まめお! 凄い恰好よ!」
大笑いするシュガーも、涙と砂でぐちゃぐちゃになった顔に、ぼさぼさの髪の毛。黒色のパンツは、膝の部分が破れている。
「はは。シュガーも中々だぞ!」
改めてシュガーの方を見た豆田は、吹き出す。
シュガーは、『え?』と、言う表情をして、ぼさぼさの髪の毛を触った。
「ホントだ! あはは。良く生きてたわね」
「確かに! 流石に死んだと思ったな!」
「ホント……。あー!! 思い出した! 豆田まめお!! あなたバカなの!」
シュガーは、笑い顔から一変。豆田に激しく『つっこむ』。
「いやー。まさかカフェインの効果があそこまでだとは」
「それもだけど!」
「ガラス瓶な。ポケットに入ってて良かったな!」
豆田は満足そうな顔をしている。シュガーは、その表情を見て、呆れるのと同時に安堵する。
「で、この卵はどうするの?」
「そうだな。とりあえず、今のうちに確実に仕留めるか!」
「どうやって? コーヒーはもう無いわよ」
「叩けばいけるだろ?」
豆田は、ギースが暴れて砕いた岩肌の残骸を手に取り、卵にぶつける。
『ガン!』
「硬っ! シュガー。ビクともしないな」
ドラゴンの卵には、まったく傷がついていない。
「豆田まめお。とりあえず持って帰る?」
「こんなデカい卵。持ち上げられないだろ?」
豆田は、そう言いながら、ダメ元で卵を持ち上げる仕草。
「あれ? 軽いぞ!」
豆田は大きな卵を簡単に持ち上げてしまった。
「豆田まめお。凄いわ」
「いや、かなり軽い。これなら、持って帰れるな。いや、転がして帰れるか」
「転がすの?」
「ああ。傷も付かないしな。ま、傷が付いても良いんだが」
そう言うと、豆田は大玉転がしの要領でドラゴンの卵を転がし始めた。
ボロボロの恰好の2人は、疲れた体に鞭を打ち、キラキラ光る卵を転がす。
***
ドラゴンの咆哮が鳴りやんでから、かなりの時間が経った。
静寂が支配する中、小屋から出たカタルと爺さまは、空に向かって、手を合わせ、豆田達の無事を祈る。
「じい様。豆田まめお神様は、大丈夫かな?」
「大丈夫じゃ。豆田様は、きっと誰よりもお強い」
爺さまは、カタルの肩をギュッと抱きしめ、静かになった空を見上げる。
『ゴロゴロゴロゴロ』
爺さまとカタルは、奇妙な音の出処を探し、あたりをキョロキョロする。
火山へと続く山道から転がり落ちる大きな玉が微かに見えた。
「じい様!! あれは?」
「なんじゃ。なんじゃアレは?」
ゴロゴロ転がる大玉の方を凝視すると、その後ろから、シュガーが顔を出し、大きく手を振っているのが見えた。
「あー!!!! じい様!! シュガー女神様だ!!」
「なんと、まさか!! 本当にギース様を!!!!」
カタルは、嬉しさの余り、その場でピョンピョン跳ねながら、じい様に満面の笑みを見せた。じい様が微笑み返すと、カタルはその腕に思いっ切り抱き着く。
「じい様。豆田まめお神様が倒してくれたんだ! うわーん!」
今度は、笑顔から一転、涙をボロボロこぼし泣き出した。じい様も涙ぐみながら、何度も頷き、カタルの頭を撫でる。
豆田とシュガーは、大玉をゴロゴロ転がしつつ、カタル達の目の前までやってきた。
キラキラした瞳で豆田を見つめるカタルは、大きな声で感謝の言葉を伝える。
「豆田まめお神様! シュガー女神様! 本当にありがとうございます!」
言葉を発し終わると同時に、また涙がボロボロこぼれ落ちる。
嬉し泣きでくちゃくちゃになった顔のカタルは深々と頭を下げる。
「豆田様。これでドラゴンのギース様に怯えて生活する日々から解放されますじゃ」
じい様は、豆田に深々と頭を下げ、感謝の気持ちを表す。
「お爺さん。カタル君。コレで毎日安心ね」
シュガーは、カタル達の嬉しそうな顔を見て、笑みが溢れる。
じい様は、ボロボロになった豆田達に気付き、急に心配する。
「豆田様。シュガー様。お怪我は御座いませんか?」
「あー。大きい怪我はない。大丈夫だ」
「おー! さすが豆田様。さぞ、激しい戦いだったのでしょう」
「ああ。ギリギリの戦いだった」
シュガーは、豆田のせいでギリギリだった事は黙っておこうと、決めた。
「ところで、豆田様。この大きな球は、なんでしょうか?」
じい様は、傍らに転がる大きな球を見上げ尋ねた。
シュガーは、ドラゴンを退治すると卵になったことを話した。
「な、なんとそのようなことが!!」
「爺さん。この卵どうする? コーヒーソードで割って食べるか?」
「豆田まめお! 食べないの!!」
「ん? シュガー。しかし食べないでどうする? また復活したら大変じゃないか! このサイズだぞ」
豆田はドラゴンの卵を持ち上げ、隅々まで観察した。
「よし! 爺さん! この卵は、爺さんにあげよう!」
「いえいえ。困ります! ギース様が復活して暴れられたらなすすべが」
「ん――」
豆田は腕組みをしながら、悩む。
「豆田様。卵は、そうすぐには孵らんでしょう。とりあえずは疲れを癒されてはいかがでしょうか?」
「んー。爺さん。確かに」
「豆田まめお。そうね。体も埃とドラゴンの血でベタベタだし」
「では、ここで休まれる用意を!」
じい様とカタルは、おもてなしをする為に小屋に急いで戻ろうとするが、豆田は手をかざし静止させる。
「いや、いい。ゲートから帰る」
「そうねー。ベタベタだし、帰ろうかしら」
豆田とシュガーは、ゲートに向かって歩き出した。
黒と紫の渦巻きの前に立った豆田は、
「爺さん。カタル。またな」
と、言い。渦巻きに手をかざした。
渦巻きは、時計周りにゆっくりと動き始める。豆田が片足をゲートに入れたその時、じい様は焦りながら、豆田に駆け寄る。
「豆田様!! 卵をお忘れです! 持って帰ってくだされ!」
(く! 爺さん。気付いたか!)
豆田はしぶしぶ卵を受け取ると、ゲートに入って行った。
シュガーは、カタル達の方を振り返ると、
「じゃー明日、改めてくるので、美味しい料理でお祝いしましょう!」
と、言い。手を振りながらゲートに足を入れる。
「お祝い!」
カタルは、そう言いながら満面の笑みを浮かべた。
豆田とシュガーと、ドラゴンの卵と共にゲートに消えていった。
***
豆田とギースが激しい戦闘を繰り広げた場所に1人の青年が佇む。
ドラゴンと槍のエンブレムが描かれた白いローブを纏う青年は、赤い液体が入ったガラス瓶を見つめ、感慨深い表情を浮かべる。
「まさか。ギースを討てる者がいるとは」
ガラス瓶を握りしめ、一度瞳を閉じると、ゆっくりと口角を上げる。
「今は、このドラゴンの血が手に入った事を素直に喜ぶとしよう」
そういうと、ローブをなびかせ、地面に手をかざす。青年の足元に浮かびあがった魔法陣は青白く光った。
その光は円柱型に伸び、やがて消えた。
白ローブの青年もその場所から消えていた。
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人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




