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山頂への歩み

 豆田とシュガーは、ドラゴン『ギース』を打ち取る為に、山頂に向かって、歩みを進める。


 ごつごつの岩が点在する道だが、連日ドラゴン観察の為に、この山を登っていた豆田は、道を熟知しているようで、軽々と登っていく。


 登り始めて15分ほど経つと岩山の裂け目から初めてギースを見た場所にたどり着いた。


 豆田は、岩陰から頭を出し、ギースの様子を観察すると、納得した様子で、戻ってきた。


「豆田まめお。いよいよ。ここからね! 山頂まではここからどの位かかるのかしら?」

「ん? シュガー。何のことだ?」

「え? ドラゴン退治でしょ?」

「ああ。ドラゴン退治だ」

「だったら、先に進まないと……。え? まさか?」

「流石、シュガー。察しが良いな」


 豆田は口角を上げると、トランクを開け始めた。


「噓でしょ。ここから? どうやって」

「ん? ここから狙撃する」

「え、500メートルも先よ!」

「だから、職人の『こだわリスト』のお店で色々買っただろ?」

「え? あれをどう使うの?」

「まー。何でも閃けば使えるようになるもんだ」


 レジャーシートを広げた豆田は、トランクから中身を取り出すと、その上に並べだした。


「まず、これだ。コーヒーセット!」

「それは、いつも通りね」

「で、これがオヤジの豆屋で買った『豆田ブレンド超遠距離用』だ!」


 豆田はコーヒー豆が入った缶を見せながらそう言った。


「超……。遠距離用。それでここから狙うのね」

「ああ。で。後は前に購入した職人の『こだわリスト』の作品達から吟味した。これだ! 眼鏡屋『ガンリキ』で、手に入れたスーパースコープ」


 トランクから黒ぶち眼鏡を取り出し、レジャーシートの上に置く。


「で、これが、インテリアショップ『トライアングル』で、お願いした。形状記憶マットレス」

「形状記憶?」

「ああ。一流のスナイパーである『ククピ』さんに協力してもらって、狙撃時の姿勢の型を取らせてもらった物だ。『純人』がコレに触れると、その姿勢の型が再現できるマットレスなんだ」

「凄いわね」(ククピさんが、気になりすぎるけど……。今は触れないでおこう)

「だろ? まー。シュガーの能力が有りきの話だがな。で、次は、この睡眠液」

「睡眠……。液?」

「ああ。そうだ。クロスに無理を言って、拘束中の睡眠の『こだわリスト』から絞り出して貰った」

「え? あのアギト支部のボスの?」

「ああ。こいつでドラゴンを眠らせる」


 豆田は、ガラスの瓶に入った液体をシュガーに見せた。

 そこには、ドロリとした薄い青色の液体が入っていた。


「え? どうやって眠らせるの?」

「まー。見といてくれ。で、これが最後のアイテム。文房具屋さん『鉛筆の誇り』で、作って貰った。高性能分度器だ」


 豆田は、トランクから分度器を取り出し、シュガーに手渡した。

 すると、分度器は淡く光り、空中に半円と数字が浮かび上がらせた。


「シュガー。それをここに置いてくれ」

「分かったわ。ここ?」


 豆田は、浮かび上がった数字を頼りにマットレスの角度を細かく調節し固定した。


 どうやら繊細な作業のようで、豆田は険しい顔で微調整を繰り返す。豆田の額には汗が滲んでいた。


 納得いく位置にマットレスを置けた豆田は、コーヒーの準備に早速取り掛かる。


 ガスコンロに火をつけ、水を温める。沸騰するまでの時間にコーヒーミルに新しい豆を入れ挽きはじめる。『オヤジの豆屋』でブレンドして貰った新しい豆は、レモンやオレンジの皮のようなシトラスフルーツの香りをほんのり漂わした。


 コーヒーフィルターをドリッパーにセットし挽いた豆を入れ、カップの上に直接乗せる。


 少量のお湯を注ぐと、コーヒー豆の粉はムクムクと膨らんできた。あたりに、コーヒーの爽やかな香りがひろがる。


 シュガーは、ドラゴンの目前にいる事を忘れ、その香りに浸る。


 カップ一杯分のコーヒーが出来上がった。


「豆田まめお。凄く爽やかな香りね」

「味見してみるか?」

「え、良いの?」


 シュガーは、手渡されたコーヒーカップに口を付ける。


「んー。凄い! コーヒーじゃないみたい!」

「だろ? 酸味を効かしたコーヒーは、それはそれで良いものだ」


 豆田は、シュガーからカップを受け取ると、黒ぶち眼鏡を装着し、気合を入れる。


「ま、このままでは、ただ私がメガネをかけただけだが、コレにシュガーが触れれば、形状が変わる。触ってみてくれ」

「こう?」


 シュガーが豆田の装着したメガネに触れると、形状が変わる。左側のレンズが筒状に伸び、スコープに変わった。


「どうだ? 面白いだろ?」

「面白いけど、私はずっとコレに触れたまま?」

「はは。狙撃する時だけで大丈夫だ!」


 シュガーがメガネから手を離すと、形状は元に戻った。


「さ、次はコレだ。コーヒーライフル!!!」


 コーヒーカップから、浮かび上がった『こだわりエネルギー』は、黒い液体となり、浮遊する。その半径30㎝の球体になった黒い液体に、豆田は右手をかざす。


 すると、液体は大小2つの球形に分離し、それぞれが高速回転しながら、素早く形状を変える。


 大きい塊は、長身のライフルの形状に、小さな塊は、さらに分離し、6つの弾丸へと姿を変えた。


 浮遊する6つの弾丸のうち、半分は、鋭い先端の見るからに硬質な弾丸。そして、残りの半分は、先端はそこまで鋭くなく、一回りほど 小さい。


 豆田は、小さな弾丸を手に取ると、先端を持ち、パカッと開く。


「シュガー。そこのガラス瓶を取ってくれ」

「この睡眠のエネルギーが入ったガラス瓶?」

「ああ。それだ。」


 豆田は、シュガーからガラス瓶を受け取ると、呼吸を止めながら、ガラス瓶の中の液体を弾丸へ流し込み蓋をした。


「良し。これで睡眠弾の出来上がりだ」

「この弾をドラゴンに当てて、眠らせるのね!」


 シュガーは合点がいった様子。


「ああ。だが、それが難しい。硬質の弾丸の方で、皮膚に傷をつけた後、全く同じ部位に睡眠弾をねじ込む」

「そんな難しい事できるの?」

「それをやる為の装備だ」


 そう言うと豆田は、マットレスの左隅にコーヒーカップを置く。


「シュガー。ここに座って、マットレスに触れてくれ」

「こう?」


 シュガーがマットレスに触れると、全体がボコボコとうねりつつ形状を変化させた。


「シュガー。この形がスナイパー『ククピ』さんの狙撃時の型だ」

「ちょっと、よく分からないわ」

「あー。この上に綺麗にハマるようにうつ伏せで寝るんだ」


 豆田は、うつ伏せになりつつ、マットレスの窪みに身体の各部位を収めて行く。


 両肘を立て、上半身を軽度起こし、股を開いた狙撃手のプローンポジションが出来あがった。


「こうだ!」

「豆田まめお。凄いのか、凄くないのか良く分からないわ」

「はは」


 豆田は何故か嬉しそう。


「で、この眼鏡にも触れてくれ」


 シュガーは、左手はマットレスに触れたまま、右手でメガネに触れる。左のレンズが前方に伸び、スコープ状に形状を変える。


 浮遊していた長身のライフルが豆田の腕に収まり、弾丸が装填される。


 コーヒーライフルを山頂に向けた豆田の顔から笑みが消え、一気に緊迫感が漂う。

 

 シュガーはマットレスとメガネに触れたまま息をのむ。


 豆田の意識は研ぎ澄まされ、周囲の音が消えいく。

 ドラゴン『ギース』に照準を合わせ、狙いを定めた豆田は、引き金に少しの圧をかけ、その時を待つ。


ご覧いただきありがとうございます!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――――――

人物紹介


・『豆田まめお』 

主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』

コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。

コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。


・『シュガー』

ヒロイン。ココア色のロングヘアー。

世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。

『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。


・『クロス』   

豆田の幼馴染。刑事。

箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。

天然ボケ。


・『ポロッポ』

ハト。王様に使える伝書鳩。

鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。


用語説明


・『こだわリスト』

こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。

戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。


・『純人』

純粋な心で物事をみる人々。

職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。


・『異界の者』

違う世界から現れたと言われる人々。

『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。

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