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カタルの小屋

 カタル達の小屋は、木陰にあり、大空を飛ぶドラゴンからは死角になる。


 小屋の中は、ゴザが敷かれ、数個のツボが置かれているだけである。家具などはなかった。


「豆田まめお神様。女神様。こんなところで申し訳ないですが、お座りください」


 豆田とシュガーは、ゴザに座る。ボロボロのゴザはチクチクし、座り心地の良いものではなかった。


「じいさん。ここはどこだ?」

「どこと申されましても困るのですが、ドラゴンギース様が封印されていた島になります」

「ここは島なのか。ここ以外にも島や大陸はあるのか?」

「わしは、この島から出たことがありませんので、詳しい事は分からないのですが、大きな船がたまにこの島に来ているのは見たことがありまする」

「なるほど。この世界にも船があるのか……」


 豆田は、鋭い目つきに変わり、何か考えているようだ。


「わしらは、ギース様が封印されていた祠と豆田まめお神様が出て来られた渦巻きの祭壇を代々守り続けているのです」

「代々?」

「はい。言い伝えでは、600年前、聖杯をもつ天使が、あの渦巻きから現れ、ドラゴンを封印したといわれております。それ以来600年間、代々わしらの一族が祠と祭壇を見守っております」

「なぜドラゴンは封印されたんだ?」

「なぜでしょうか? わしらは聞かされておりません」

「じゃー。なぜ封印したドラゴンの名前に様をつける?」

「それも分かりませぬ」

「そうか。分からない事だらけだな」

「すみませぬ」


 じいさまは申し訳なさそうに、謝った。


「で、その封印が解けたと」

「そうなんですじゃ。5年前にドラゴンが復活してしまい。それからと言うもの、平和とはほど遠い状態の毎日なんですじゃ。わしらは、渦巻きから天使様が現れることを願い日々祭壇に祈りをささげておりました。」


 じいさまはカタルの方を見つめる。


「僕は、毎日真剣に祈ってたんです。そしたら、豆田まめお神様が現れました!」


 カタルのすがるような視線に豆田は気付かないフリをした。


「大変失礼なお願いですが、ドラゴンを退治して頂けないでしょうか?」

「僕からもお願いします! お礼ならなんだってします!」


 じいさまとカタルは深々と頭を下げる。

 豆田は沈黙したまま何か考え込んでいる。


『ゴゴゴゴガガガガー!!』


 ひと際大きなドラゴンの咆哮が聞こえた。かなり近い距離のようだ。


『ボワン!! バシン!!!!』


 凄まじい轟音と共に、衝撃波が発生し、小屋の中を強風が通り過ぎる。


「きゃ!」


 シュガーは、豆田に捕まり、身を小さくする。

 豆田は冷静に帽子を押さえて、風が通り抜けるのを待つ。


「ギース様がブレス弾を撃たれたようです」

「この凄まじい衝撃の主が、倒せと言うドラゴンか?」

「はい!!」


 カタルは、豆田に向かいハッキリと答える。


「ん――。無理だ!!」


 カタルは、予想しなかった答えに悲壮な顔をみせた。


「そこを何とか!!」


 豆田の目前で、土下座をするカタル。


「ん-。勝てる気がしない」


 豆田は素直にそう答えた。


 しかし、この機会を逃せば、『死ね』と言われることに等しいカタルとじいさまは食い下がる。


「ドラゴンの住処には財宝があるとも言われているのですが」

「んー。財宝があろうが無理なものは無理だなー」


 じいさまは顔にしわを寄せ知恵を絞る。


「近くで見て頂いてから、考えて貰えないですか?」

 カタルは泣きそうな声で訴える。


(あー。ダメ。私、この顔と声には弱いわ)

「ねー。豆田まめお。見るだけ見て、帰ればよくない?」

「んー。仕方ない。一目だけ見に行くか。」


 カタルとじいさまは、希望が繋がった事に安堵した。


 豆田は持参した小さいガスコンロで一人分のコーヒーを淹れ、もしもの場合に備える。


 一行は、ドラゴンの住む火山に向かって歩き出した。


***


 ドラゴンの住む火山は、赤茶色の地面にごつごつの岩が点在する。


「くそ! 歩きにくいな」

「豆田まめお神様。もうすぐギース様が見える場所ですぞ」

「ああ。そうか。見たらすぐ帰る」


 しばらく歩くと岩山の裂け目が見えた。


「豆田まめお神様。あそこからから、ギース様を覗き見ることが出来ますじゃ」


 豆田は岩山の裂け目から、山頂の方向を見た。


「あれか?」


 山頂に座るドラゴンは、深紅の身体に大きな翼を生やし、圧倒的な存在感を示す。


 30メートルを超える巨体は、いら立っているようで、頻繁に顎を開け閉めしている。


「まだ500メートルは離れているが、これ以上は危険だな」


 豆田は岩山に背中をピッタっとつけ、最小限の露出でドラゴンを観察している。


「豆田まめお。どう?」

「いや、これは近づくことさえ厳しいな。微かに警戒されているようだ」

「そう」


 シュガーは、豆田の声色が少し緊張しているのが分かり、無理を言ってはいけないと思った。


「豆田まめお神様。退治して頂くことはできますでしょうか?」


 カタルは心配そうな顔で尋ねる。


「これは無理だな。まず、私たちでは相手にならないな」


 カタルは悔しそうに、奥歯を噛む。


「襲われる前に帰った方が良さそうだ」


 豆田は、元来た山道に向かって歩き出す。


***


 山道を下り、元来た祭壇に向かう一行。

 カタルは分かりやすく落胆した様子で、豆田の横をトボトボ歩く。じいさまはその肩を優しく抱く。


「仕方ないよね。あんなに大きいと思わなかったもんね」


 シュガーは、残念そうにつぶやいた。


「ああ。かなりデカいトカゲだ」

「トカゲ……。全然違うけど」

「そうか? 羽が生えたトカゲだ。ん? いや、待てよ」


 豆田は、自分の世界に入ったようで、ブツブツ何か呟いている。


「カタル君。この世界はあんなドラゴンが沢山いるの?」

「僕は、この近くしか分からないので、分からないです」

「そっかー」

「豆田まめお神様。やっぱりドラゴンの退治は難しいですか?」


 豆田は、自分の世界に入っていてカタルの言葉が耳に入らないようだ。


「これ! カタルや。サンドイッチと言う奇跡の食べ物を頂けたのじゃ。それだけで十分ではないか」

「ヴー-」


 カタルは、瞳に涙を溜めた。


「それに、あのコーヒーと言う、もはや神々が作られたとしか思えない飲みもの!」

「ん? 爺さん!! あんたコーヒーの素晴らしさが分かるのか?」


 豆田は『コーヒー』と言う言葉に瞬時に反応した。


「はい。もちろんです。深みがあります。そう神々の手で進化し続けてきたのを感じますじゃ」

「そうだろ? 沢山の『こだわリスト』の集大成のようなものだ! コーヒー豆。フィルター。ドリッパー。ドリップケトル。水もだな。それに、ぶつぶつ」


 豆田は、再度自分の世界に入っていった。


 豆田は突然歩みを止め、


「あ!」


 と、大きな声を出した。


「豆田まめお。どうしたの?」

「シュガー! あのドラゴン倒せるかもしれないな」

「え? どういうこと?」

「急に閃いた。爺さん! とりあえず一度退治できるか検討してみよう」


 カタルとじいさまの顔が一気に晴れた。


「本当ですか? なんとお礼を言えばよいのやら」

「じいさん。用意に半月ほどかかると思うが良いかな?」

「ええ、いくらでも待ちますですぞ!!」


 じいさまとカタルは、互いの顔を見て喜ぶ。


「では、準備の為に、自宅に帰るとしよう」

「何卒宜しくお願い致します」


 じいさまは、深々と頭をさげる。


 豆田とシュガーは、祭壇の上に浮かぶ渦巻きの中に消えていった。


ご覧いただきありがとうございます!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――――――

人物紹介


・『豆田まめお』 

主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』

コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。

コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。


・『シュガー』

ヒロイン。ココア色のロングヘアー。

世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。

『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。


・『クロス』   

豆田の幼馴染。刑事。

箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。

天然ボケ。


・『ポロッポ』

ハト。王様に使える伝書鳩。

鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。


用語説明


・『こだわリスト』

こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。

戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。


・『純人』

純粋な心で物事をみる人々。

職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。


・『異界の者』

違う世界から現れたと言われる人々。

『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。

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