ギョプス襲来
「俺だよ! 俺! ギョプスさまだ」
水面から浮上するその男の姿を見て、王様は驚きの顔を見せた。
「ギョプス! 生きておったのか?」
「ああ生きていたさ。警備が手薄になるのを待っていたよ。王様!」
「あれは、お主が悪かったではないか! ギョプスよ!!」
「いや、王様。あんたがいなければ上手く行った話だ!」
「お主の言う通りにすれば、被害は凄いものになる」
「何がだ!! 私は、すべての川を海水に変えろ! と言っただけではないか!」
「それでは、生活が出来なくなるものもいるのじゃ!」
「皆、魚を食べれば良いじゃないか!」
「お主とは、話にならん!」
王様は怒声を飛ばした。
ギョプスは大きく目を見開き、王様に向かって手の平をかざす。
清流キハリの水面がキラキラ光る。
「ふはは。王様。残念だが、ここで死んでもらう!」
ギョプスは、不敵な笑みを浮かべた。
「動くな!!」
クロスは銃口をギョプスに向けながら、浅瀬に足を入れた。
「ふはは。いいだろ。私は動かない。でも魚は動くぞ!!!!」
「なに?」
『シュパン! シュパパパ!!』
トビウオの大群がが王様に向かって、飛来する。
リークはパラソルを回転し。シールドを張る。
「ギョプスよ! やめんか!!」
王様は悲鳴のような声をあげた。
「王様! 大丈夫です! 私がしっかりお守りします!」
リークは王様に笑顔を見せると、歯を食いしばり、前方を見据えた。
「ふふふ。いつまで持ちますかな?」
ギョプスが手のひらを前方に向けると、それに反応し清流キハリの水面が波打つ。おびただしい数のトビウオが王様に向かって、飛んでいく。
クロスは銃で迎撃するも、間に合わない。
「くそ! 一匹一匹は大したことないけど数が多すぎるわ! 私は王様は守ります! この間に、その敵をお願いします!」
リークの額から汗が滴る。パラソルを回す手の皮がめくれ、血が滲む。
「分かった! リークさん! この敵は、僕とまめっちで! え? まめっち?」
クロスが視界を向けたその先で豆田は、のんびりとコーヒーを飲んでいる。
クロスは豆田の姿を見て唖然とする。
「ん? なんだ?」
「え? まめっちも手伝ってよ!!」
「断る!!」
「え? まめっち! 頼むよ!」
「依頼を受けていない」
「じゃ。僕が依頼するから!」
「断る!」
「豆田まめお! 何で断るの? 王様が危ないわ!」
豆田は我関せずと、コーヒーを飲んでいる。
シュガーが必死に訴えるも豆田は聞く耳を持たない。自身とシュガーに向かってくるトビウオだけをコーヒー銃で、迎撃しているが、その場から動く気配すらない。
「くそ! もう僕だけで何とかするしかない!」
クロスは歯を噛みしめ、視界をギョプスに向けた。ギョプスはその動きを察知すると、手のひらをクロスにも向けた。
(BOX1はコーヒーで使った。あと、空のBOXが2つ)
クロスは、飛び迫るトビウオを迎撃しつつ、ギョプスとの距離を詰めて行く。
「ふはは。護衛もクロスさんも良く粘りますね! いいでしょう。あなたから始末してあげます!」
(くそ! トビウオは生き物だし、BOXにも入れられないぞ! どうしたら良いんだ?)
クロスは、銃で応戦しつつ、策を練る。
「ふはは。くらえ! トビウオバズーカ!」
『バジュー!!!!』
大きな飛沫があがり、中から大きな塊が現れ、クロスに向かって、真っすぐ突進する。
塊は、8匹のトビウオからなり、重量を持った大砲の弾のようになった。
クロスは撃ち落とそうと銃を連射するもトビウオ達の勢いは衰えない。
(くそ! 僕が避けたらリークさんと王様の方に行く!)
クロスは覚悟を決め、自信の身体でトビウオの塊を受け止めた。
「ぐわっ!」
トビウオの塊は、クロスをぶっ飛ばす。クロスは、地面に数回弾かれながら、10メートルほど飛ばされた。
「くそ。なんて僕は無力なんだ」
傷だらけのクロスは、悔しさのあまり、地面を叩いた。
「うわ! ビックリした。やめてくださいよー」
クロスは、その声に反応して顔をあげる。クロスの目前には、トビウオを美味しそうに食べるポロッポがいた。
「え? ポロッポ?」
「クロスさんには、あげませんよ」
「え? 僕は食べないよ。何なら全部食べて欲しいくらいだよ」
「食べつくしていいんですか? 友達を呼んでも良いですか?」
「? ああ。もちろんだよ」
それを聞いたポロッポは、宙に向かい叫ぶ。
「ポロッポぽぽぽ―!!!」
渓谷にその声がこだまする。
「ふはは。今の声は、なんですか? まーいい。もう虫の息ですし、仕留めさせて貰いますね」
ギョプスは、王様へと攻撃を続けたままクロスとの距離を詰める。
『バサバサバサ!』
「な、何の音だ!!」
ギョプスは、その物音を聞き、慌てて空を見た。
周り山々から、沢山の鳩、キジ、鷲、トンビ、フクロウ達が現れた。
「なんだ?! トビウオ達、あの鳥たちも攻撃してしまいなさい!」
水面がキラキラと激しく光る。その光の数だけ、飛沫をあげトビウオが宙を飛ぶ。それを待っていましたとばかりに、確実に仕留める鳥達。
ギョプスは、思いもしない事態に困惑する。
「バカな! 私のトビウオ達が!! こうなれば、あの子を呼びますか! まさる!」
川幅のど真ん中が大きく盛り上がる。
盛り上がった水面から大きな背びれを持ったサメが現れた。5メートルはあるであろう大きな巨体が、清流キハリの中を所狭しと、暴れる。
『ザーバーーーン!!』
サメのまさるが方向転換をするたびに、水面が激しく波打ち、飛沫が上がる。
飛沫は散弾銃のようになり、鳥たちを襲う。
鳥たちは、危険を察知し、すぐさま高度を上げ、それを回避する。
サメのまさると、鳥たちは膠着状態になった。
「ふふふ。鳥たちはまさるに任せるとしますか。さー。クロスさん。再戦といきましょうか」
倒れるクロスにギョプスは、トドメを刺そうと、ゆっくりと近づく。クロスは傷んだ身体にムチを打ち立ち上がる。
「クロス。もういい」
岩に座っていた豆田は立ち上がりながら、そう呟いた。
「まめっち。諦める訳にはいかないよ! まめっちが戦わなくても、僕は諦めない!」
「そうじゃない。クロス。こんな茶番に付き合う必要はない」
困惑するクロスに向かって豆田は、言葉を続ける。
「分からないのか? これはタヌキおやじの自作自演だ」
「なに?」
ギョプスは、慌てて王様の方を振り向く。
「こら! わしの方を向くでない!」
「え? 王様! どう言う事ですか?」
リークは王様に素直に尋ねた。
王様は、ばつが悪い顔をしている。
「なぜ、分かったんだ?」
ギョプスは、思った事をそのまま口にした。
「ん? 簡単なことだ。まずタヌキおやじが、お前の姿を見て、驚いたタイミングとその時の姿勢が不自然だった」
「そんな、ことだけで……」
「まだあるぞ。お前のその骨格。つい最近、城の中で見た。フードを被っていたが、その特徴的な胸椎3番から曲がる猫背を私は見逃さない」
ギョプスは、自分の背中を振り返ろうとしてしまう。
「ま。核心を持ったのは、お前が、クロスの名前を呼んだ時だ」
「あ……」
「クロスはお前の事を知らなかったのに、お前がクロスの名前を呼んではいけないな」
ギョプスは、王様にすがるような視線を送る。
「あ。それに『こだわリスト』は、もう一人いるな。お前は魚を操るようだが、川を塩水に変えた奴がいるはずだ」
「王様……」
ギョプスは、驚きつつ感心する。
王様は小さく頷く。
「ここまでとは……。聞いていたより凄い観察眼だ」
ギョプスは、王様に向かい深く頭を下げる。
王様はその姿を見て、少し誇らしげな顔をする。
「ふぉふぉふぉ。豆田くん。このギョプスが、豆田くんの観察眼を疑うものでな。実際に体験して貰おうと思ってのー。試すような真似をしてすまなかった」
「何が目的か知らないが、気分の良いものではないな。帰らせてもらう!」
豆田は、王様が言い訳をする時間を与えない。そそくさと、その場を後にする。
シュガーは、困惑した表情を見せたまま豆田の後を追う。
残されたクロスは、その場の雰囲気に耐えられない。
「まめっち! 馬車で送るよ!」
そう言い、王様に深くお辞儀をし、豆田を駆け足で追った。
***
一台の馬車を借り、帰路に向かう豆田達。クロスは御者席に座り、馬を走らせた。
車内は、豆田とシュガーの二人。
シュガーは、試されたことで、不機嫌になっているであろう豆田の顔色を伺う。
「豆田まめお……。大丈夫?」
「ん? シュガー。何がだ? しかし、ラッキーだったな。コーヒーミルは貰えるし、早めに帰れるし、最高だ。とりあえず、帰ったら、早速このコーヒーミルを試すとしよう!」
(まさかの上機嫌。豆田まめおが落ち込むはずないか……。)
「ふふ」
シュガーは、つい笑ってしまう。
一方、御者席のクロスは、納得しない様子で、思考を巡らせているようであった。
***
清流キハリの川辺に残された王様たち。
「王様。どう言う事ですか?」
リークは王様に尋ねる。
「リークよ。お前は分からんでも良い。それよりギョプスよ。どうじゃ? 豆田くんは面白いじゃろ?」
「確かに、凄まじい観察眼でした。これなら、例の案件を任せても大丈夫かと」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃろ?」
「しかし、手伝って貰えますかね?」
「そこは、知恵の見せどころじゃの。まー。考えはある。わしらは急がねばならんからのぉ」
「そうですよね。急がないと」
二人は空を見上げた。
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