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報酬の受け取り

 カイナタウンの事件を無事に解決した2日後、王様から報酬を受け取る為に豆田達は改めてお城にやってきた。しぶしぶ同行した豆田は、すぐにでも自宅に帰りたいようだ。


 謁見の間に進むと、沢山の兵士が整列していた。


「豆田くん。シュガーくん。良く来てくれたのー。君たちの活躍で無事に眠っておった子供達も目覚めた。ご苦労じゃった」

「本当にご苦労だった。二度と依頼はしないでくれ!」

「もう! 豆田まめお! そんなこと言わないの!」

「ふぉふぉふぉ。さてさて早速褒美をとらせよう! 持ってまいれ!」


 王様は執事の方を向き、パンパンと手を叩いた。


「はっ! 王様。用意しております」


 そう言うと、執事は扉を開けた。

 扉の奥から豪華絢爛(ごうかけんらん)な鎧を着た兵士が大きなカバンを両手でしっかりと抱え、謁見の間に入室した。兵士は一礼をすると、王様の目前に膝を付き座った。


「王様。こちらがお伺いしていた報酬になります」


 兵士はカバンを開くと、その中身を王様に見せた。

 カバンの中には、光り輝く白金貨が100枚入っている。


 白金貨1枚で金貨100枚の価値があり、白金貨を見る事自体が珍しい事であった。


「王様。凄い! こんなに頂いて良いんですか?」


 シュガーは、事前に聞いていた金額より、報酬が多い事に驚きつつ笑みがこぼれる。


「ふぉふぉふぉ。子供の親達から頂いたお礼も含まれておるのじゃ。貰ってあげておくれ」

(やった! 家が数軒買える報酬よ! ついに家賃問題から解放だわ)


 シュガーは、嬉しさのあまり喜びを隠しきれない。

 その横で豆田は、王様の方を一切見ずに、ひたすら考え事をしているようだ。


「とりあえず、ソファは昨日買ってもらったし、次はシーリングファンか、コーヒードリッパーか、帽子、いや、待てよ。そもそも……」

(凄い。もう具体的な使い道を考えているわ)


 シュガーは、その豆田の様子を横目で見る。


「ふぉふぉふぉ。あとは、わしからも個人的にお礼がしたいのじゃが、どうじゃろ?」

「王様。まだ何か頂けるのですか?」

「ふぉふぉふぉ。そうじゃのー。わしの別荘で盛大にお祝いをするのは、どうじゃ?」

「別荘もあるんですか?」

「ふぉふぉふぉ。そうじゃ。清流キハリ川の上流にあるのじゃ。涼しくてええ所じゃぞ」


 王様は目なくなるほどの笑みを見せた。


「どうじゃ? 行くなら、今回の功労者のクロスくんと、ポロッポにも同行するように連絡しておくが……」


 ポロッポと言うフレーズに、豆田のピクリと反応する。


(よし。ポロッポの名前は完全に定着!)


 豆田は、誰にも見えない大きさのガッツポーズをした。


「王様! ありがとうございます。光栄です」

「タヌキおやじ。私は遠慮しておく!!」


 シュガーの言葉に反応して、豆田は間髪入れずに答えた。


「豆田まめお! せっかく王様が言ってくれているのに」

「明日からは買い物に忙しい」

「ふぉふぉふぉ。そういえば、わしの別荘に珍しいコーヒーミルがあったのー。豆田くんにと思ったのじゃが......。残念じゃ......」

「王様! 何を言ってるんだ。行くに決まっているじゃないか!」


 豆田の素早い手のひら返し。


(豆田まめお……)


 シュガーは、いつもの事ながら呆れる。


「ふぉふぉふぉ。豆田くんも参加してくれるか。楽しみじゃ。では、明日の朝9時に迎えの馬車を用意しよう」

「王様! ありがとうございます」

 

 その言葉が終わる前に、豆田は白金貨の入った大きなカバンを肩にかけ、さっさと出て行ってしまった。シュガーは一礼をし、慌てて豆田を追いかけ退室した。


***


「王様。本当にいいのですか?」


 眉をひそめた学者風の男が王様に尋ねた。


「なにも、あんなに沢山の白金貨をお渡しになられなくても良かったのではないですか?」


 学者風の男は、不愉快な感情を隠しもしない。


「ふぉふぉふぉ。お前も知っておるじゃろ? 確率は高い方が良い。これは先行投資じゃ」

「あの者たちが、役に立ちますかね?」

「吟味している時間など、わしらにはあるまい?」


 王様は学者風の男をギロリと睨む。男はヒゲを触りながら、納得しきれない様子を見せた。


***


 次の日の朝9時前。豆田とシュガーは、自宅の前で馬車が到着するのを待っている。豆田の左手には熱々のコーヒー。


「豆田まめお。清流キハリでのお祝い楽しみね」

「ああ。コーヒーミルが楽しみで仕方ない」

「やっぱりコーヒーミルだけが楽しみなのね?」

「ああ。それが一番だ。だが、実は清流キハリにも少し興味があるんだ」

「え? 珍しい? やっぱり綺麗な景色は、豆田まめおも好きなのね」

「いや、あの清流の湧水を使ってコーヒーを淹れれば、どんな味がするのか、試したくてうずうずしている」

「あ、そう言う事?」

「ああ。そう言う事だ」


 そうこうしているうちに、通りの奥から馬車が見えてきた。黒と金色で煌びやかに装飾された大きな6人乗りの馬車が2台、豆田探偵事務所の前に止まった。


 前方の馬車の使者は、素早く降り御者席(ぎょしゃせき)から降りると、客車の扉を開いた。


「どうぞ。クロス様が中でお待ちです」

「ありがとうございます」


 シュガーは、にこやかにそう答えると、馬車に乗り込んだ。豆田もそれに続く。


「やあ! まめっち!」

「クロス。朝からお前も大変だな」

「僕は仕事だからね。大丈夫だよ。でも良くまめっちも行くことにしたね」

「ああ。コーヒーミルが貰えるんだ」

「あー。それで......」

「それ以外に行く理由などない!」

「はは。まめっちらしいね」

「で、クロス。タヌキおやじは?」

「ああ。王様は後ろの馬車に乗っているよ」

「豆田さん。王様のことをタヌキおやじと言ってはいけませんよ!」

「なんだ。ポロッポもいたのか」


 ポロッポが座席の後ろから現れた。


「なんだではないですよ! 今回の事件の一番の功労者と言っても良いくらいですからね!」

「ん? 最後は寝たままだったじゃないか」

「あれは、ワザとです! ワザと!」

「なるほどなー。シュガー。永遠に眠らせてやってくれ!」

「な! 鬼ですか?!」


 ポロッポは目を見開きながら、そう言った。

 豆田とシュガーの着席を確認すると、使者は馬に鞭を打ち、馬車を動かした。

 

「クロス。すまない。このコーヒーをBOXに入れといてくれないか?」

「あれ? 豆田まめお。忘れたの? コーヒー銃を作ったら、大丈夫じゃない」

「ああ。シュガー。そうだが、長時間の移動だと疲れるだろ? それに......」

「それに?」 

「ま、念の為だ」


 片眉をあげた豆田はクロスにコーヒーを手渡した。


「じゃー。まめっち。BOX1に入れとくね!」


 クロスはBOXを開いてコーヒーを収納した。


 たわいも無い会話をしつつ、馬車に揺られる事、約1時間。清流キハリの姿が目前に見えてきた。


 川幅100メートルの碧色の澄んだ川は、太陽の光が反射して、美しく輝かせていた。

 所々に上流から運ばれて来たであろう大きな岩が点在している。


 ここからさらに川沿いを上流に向かって進む。

 

 川幅は徐々に減少し、道は山道に変わる。


 山道になってから15分ほど進むと、少し開けた場所に出た。その場所に馬車を止めると、使者は、素早く馬車をおり、客車の扉を開いた。


「まめっち。ようやく着いたね。ちょっと僕は王様を出迎えに行ってくるね」


 そう言うと、クロスは後方からやってくる馬車の方に駆け足で向かっていった。


「クロスも忙しいな。さて、あれが別荘だな。シュガー。コーヒーを淹れてくる」

「え? 勝手に行っちゃっダメよ!」

「あー。ま、いいだろ。先に行ったと言っといてくれ!」

「もう! 怒られても知らないわよ!」


 豆田は一人勝手に建物の方に向かっていった。王様は3名の護衛を引き連れながら、シュガーの元までやってきた。その中には、金髪に黒いメッシュが入ったリークの姿も見える。城の外で護衛の人数が少ないからか、リークの顔には緊張が見える。


「王様。今日はお招き頂き、ありがとうございます」

「ふぉふぉふぉ。楽しんでくれたまえ。今日は天気も良くて良かったわい。ところで、豆田くんはどこかのぉ?」

「あ。それがコーヒーを淹れに向かってしまって……」

「ふぉふぉふぉ。豆田くんらしいのぉー」


 王様は、瞳が潰れるほどの笑顔を見せた。


「あの無礼者が!!」

「ふぉふぉふぉ。リークよ。豆田くんはアレで良いのじゃ。お前もソロソロ慣れないといかんのー」


 優しい言葉とは裏腹に、声のトーンが低い。リークは、慌てて跪いた。


「王様。申し訳ありません」

「ふぉふぉふぉ。良い。今日一日で豆田くんに慣れれば良い」

「はっ!」


 リークは頭を下げた。

 ちょうど建物奧からコーヒーを持参した豆田が戻ってきた。その後に1人の執事がついてくる。

 

「ふぉふぉふぉ。豆田くん。よく来てくれた」

「タヌキおやじ。じゃー約束通り、コーヒーミルをくれ」

「コーヒーミルは、倉庫のどこかにしまってあるのじゃ。後で探させる。宴を始めた後で良いかなのぉ?」

「いや……。今すぐ……」

「王様! 大丈夫です! 急がないので、後にして下さい!」


 豆田の言葉を遮り、シュガーがそう言った。


「ふぉふぉふぉ。では、セグッタよ。用意はどれくらい出来ておるかの?」

「はっ! シェフ3名が仕上げをしているところでございます。あと、30分ほど頂ければ、お料理をお持ちできるかと」


 豆田の後ろに着いてきた執事がそう言った。


「うむ。そうか、では、川原にテーブルを並べるのじゃ。そこで宴を始めようぞ」

「はっ!」


 そう言うと、執事セグッタは建物内に消えていった。


 王様は、護衛3名とクロスに守られながら、川原へと向かった。


「豆田まめお。本当にコーヒーのことばかりね。王様にあんな態度取るから、ビックリしたわ」

「はは。タヌキおやじには、あれくらいでちょうどいい」


 豆田は、そう言うとコーヒーを一口飲んだ。


「やはり、清流キハリの水は柔らかいなー。コレなら、違う豆を持参した方が良かったたか……」


 豆田は、ブツブツ呟きながら、川原に降りて行った。


『パタパタ』

「豆田さんには、困ったもんですねー」


 シュガーの肩に止まったポロッポはそう言った。


「ほんとよねー。王様の怒りを買わないか心配だわ」


 シュガーは大きな溜息をついた。


「じゃー。ポロッポ。豆田まめおが何かしないか心配だし、私達も川原に降りようか」


 シュガーとポロッポも川原へと向かった。

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