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コーヒー使い豆田のこだわりが世界を救うまで  作者: TKカフェ
第2章 タヌキおやじからの依頼
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王様への報告

 昨日のアギト支部での激闘が嘘のように、穏やかな朝を迎えた。


 シュガーは、目覚めと同時にコーヒーの優しい香りが部屋中に広がっているのに気付いた。


(んーー。豆田まめお。もう起きているのね。昨日の激戦の後なのに……)


 手ぐしで髪を整え、鏡で見出しをチェックすると、シュガーは、ロフトからメインフロアに降りていく。豆田はソファに座りコーヒーを飲んでいるようだ。


「豆田まめお、おはよう。良く寝れた?」

「シュガー。おはよう。今日は一睡もしていないんだ」

「え……? なんで?」

「どうやらカフェインの取りすぎて覚醒しているみたいだ。コーヒーの『こだわりエネルギー』を直接飲むと、こうなるらしい……。実に興味深い」

「大丈夫なの?」

「ああ。問題ない。不完全な身体活性鍼と違って、身体は痛くないからなー」

「そっかー。でも、寝れてないのに、何で楽しそうなの?」

「シュガー!! コレを見てくれ!」


 豆田はソファから立ち上がり、手に取ったチラシをシュガー見せる。


(あ、昨日ポケットから落ちたチラシね)

「寝れないから、仕方なく。このチラシを見ていたんだ! 見てくれ! ソファーやシーリングファンが安い!」


 豆田は嬉しそうにインテリアショップのチラシを見ている。


「で、豆田まめおは、コレを買いたいのね?」

「ああ。今日までのセールなんだ! スグに買いに行かないと!」

「でも、今はお金ないわよ」

「え? 何でないんだ? 報酬は?」

「豆田まめお。お城に事件の報告をしに行ってから、後日報酬の支払いになるわ」

「くそ! タヌキおやじめ! めんどくさい! シュガー。行ってきてくれ」

「豆田まめお。ダメよ。クロスさんにも馬車を用意するから、午前中に2人でお城に来るように言われてたじゃない」

「あー。くそ。仕方ない。コレもソファのためか……」


 豆田は、自身にそう言い聞かせると、諦めて行くことにしたようだ。


 パン屋『ショパール』の惣菜パンを食べ、出かける準備を始めた。


***

 

 馬車に揺られながら、豆田とシュガーはお城にやってきた。


 大きな城門の前で豆田たちの到着を待っていた執事に連れられ2人は、2階の謁見の間に向かった。


 執事が開いた重厚な扉の奥にある広々とした空間には、今日も天井からの光が差し込んでいる。


 玉座まで伸びる絨毯の横には、甲冑を着たナイトや、ローブを着た学者風の男もいる。皆が綺麗に整列している。豆田達の到着に合わせて準備していたようだ。その中には包帯を巻いたクロスの姿も見える。


 王座に座り4名の護衛に守られた王様は、くるりとしたヒゲを触ると、王座から立ち上がった。


 クロスは列から離れ、豆田達の横に並んだ。


「豆田くん。クロスくん。シュガーくん。今回は本当に良くやってくれたのぉー。ありがとう!」

「王様。お褒めの言葉を賜り、身に余る光栄に存じます」


 クロスは跪き頭を下げた。

 シュガーもその姿を見て、同じように跪く頭を下げた。豆田は、コーヒーを一口飲む。


 護衛のリークは、その豆田の態度に剣を握るが、王様に手で制される。


「君たちの活躍のお陰で、今後、お菓子で寝たきりになる者は、出ないじゃろう」

「王様。それは本当に良かったです」

 

 シュガーは素直に喜んだ。


「じゃが、まだ68名のうち5名は目が覚めないままのようじゃ。そのもの達や家族の苦しみを考えると、素直に喜び切れないのじゃが。だが、喜ぶことも大事じゃ」


 王様は悲しそうに話した。


「どうして、目覚めないんですか?」


 シュガーは困惑した表情で王様に質問した。


「どうやら、一度に摂取したキャンディーの量が多かったようじゃ」

「そ、そんな」


 シュガーは、切ない表情を浮かべる。

 豆田はポケットからチラシを出すと、それを確認しそわそわし始めた。

 シュガーはその異変を見逃さなかった。


「豆田まめお!!」

「シュガー!!」


 豆田は『シー』の仕草をシュガーに向ける。

 シュガーは、その姿ですべてを察する。


「あ! 王様!! 豆田ならきっと目覚めさせれますよ!」

「何? なんじゃと!!」


 王様は玉座から勢いよく立ち上がった。


「き、気のせいだ」


 豆田は必死にとぼける。


「あっ! そうだよ!」


 クロスも気付いたようだ。


「こら! クロス!! せっかく助けてやったのに! ばらすな! あ……」

 

 豆田は自身の失言に気付いた。


「なるほど。豆田君頼めるかのぉー?」

「もちろんです!!」


 豆田が返答する前に、シュガーは元気にそう答えた。

 豆田は帽子を抑え、自分の失言を悔いているようだ。


***

 

 シュガーと豆田は、再び車を借りてカイナタウンへやってきた。


 城の執事にまだ目覚めない子供がいる家の情報をリストアップしてもらい、そのお宅に真っ直ぐ向かった。


「シュガー。急ぐぞ」

「豆田まめお。流石にやる気になったのね」


 一軒目の家に到着する。お祭りのヒントをくれたあのお爺さんの家だ。シュガーはチャイムを鳴らす。家の中からお爺さんが出てきた。


「おぉー。あんたらか、どうじゃ事件の原因は分かったかのー」


 シュガーはお爺さんに経緯を簡単に説明した。


「では、何故ウチのツトムは目覚めんのだ?」

「お爺さん、それは一度に食べたキャンディーが多過ぎたみたいで」

「くそぉ! 犯人は捕まってもツトムは目覚めんのか」


 お爺さんは項垂れ、涙を落とした。


「お爺さん! でも大丈夫なんです!」

「ん? 何が大丈夫なんじゃ?」

「この探偵。豆田が方法も見つけたんです!」

「何! 本当か! あんたら……」


 お爺さんは、涙を溜めた瞳で豆田を見ると、頭を下げた。


「スグに診てやっておくれ……」


 お爺さんは、そう言葉を絞り出した。


「お爺さん。お孫さんはどの部屋かしら?」

「こっちじゃ。こっち!! この部屋じゃ!」


 お爺さんに連れられ、1階の奥の部屋に向かった。木漏れ日が差し込むベットの上に、スヤスヤと眠る男の子が1人いた。


「しまった。コーヒーが冷めている」


 豆田の発言にシュガーは素早く反応する。


「あ! お爺さん。お願いがあるんです。この治療にはコーヒーが必要なんで、キッチンをお借りできますか?」

「ん? コーヒー? この子が目覚めるなら、なんでも使ってくれ!」


 お爺さんは2人をすぐにキッチンに案内した。

 豆田は丁寧にコーヒーを淹れる。お部屋に芳醇な香りが漂った。


 コーヒーを手にした豆田は、再度子供が眠る部屋に戻った。


「シュガー」


 豆田は目で合図する。シュガーは頷いた。


「お爺さん。この探偵豆田が今から治療をするんだけど、集中することが凄く大切なんです。終わったら呼びますから、それまで扉の外で待ってて貰えますか?」

「お、おぅ。そうか! よろしく頼む!」


 お爺さんは、豆田を見つめ頭を下げ、部屋を後にした。

 豆田は子供の上半身をベットから起こした。


「シュガー。この子の身体を支えていてくれ」


 シュガーは、言われたままに子供の肩を持ち支える。豆田はベット横から一歩下がる。


「シュガー。いいか? そのまま、動かすなよ」


 シュガーは頷いた。


「コーヒー鍼!」


 豆田の持つコーヒーカップから液体が浮かび上がる。その液体は球体になったあと、小さい塊がそこから分裂した。


 小さな塊は高速回転すると、その形状を漆黒の鍼に変えた。豆田が手をかざすと、浮遊する鍼は子供の目の前に移動する。


「よし。準備は出来た。シュガー。行くぞ。 水溝穴(すいこうけつ)


 子供の鼻と上唇の間に漆黒の鍼が刺さる。

 それと同時に子供は大きく目を見開いた。


「いっっったーー!!!!」

「よし! 完璧な刺鍼だ!」


 決めポーズを決める豆田の横で子供は、バタバタしている。


「いったー! おじさん達は、誰?」

「お兄さんだ!」


 豆田は子供を威嚇する。

 

「豆田まめお。今はいいじゃないの?」

「あれ? そう言えば、おじいちゃんは?」


 子供はキョロキョロとお爺さんを探す。


『バタン!!』


 孫の声が聞こえて、たまらず部屋に入ったお爺さん。 起き上がった孫の顔を見て。涙を堪えられない。


「おぉぉぉぉぉぉ!! つとむ!!」


 お爺さんは声を上げて号泣し始めた。


「おじいちゃん! どうしたの? どこか痛いの?」


 お爺さんは、孫に駆け寄り、必死に抱きしめる。

 シュガーもつられてボロボロと泣き出す。


「あんたら! 本当にありがとうな!! この感謝は表しきれん! 何か困ったら、なんでも言ってくれ。どんなことでも力になる」

「はは。ありがとう! まー。何かあったら頼む」

「よがっだでずねー」


 シュガーの瞳からは大粒の涙がボタボタ落ちている。


***


 残りの4軒も同じように周り、子供達を目覚めさせていった。


 子供達が目を覚ますのを喜ぶ家族の光景が感動的で、シュガーはつられて大泣きを繰り返す。


 最後の1人を目覚めさせた時には、あたりはスッカリ暗くなっていた。


「豆田まめお。みんな本当に良かったわね。私、あなたのアシスタントになれて、心底良かったと思うわ。ありがとう」


 豆田は、その場に座り込んだ。


「ちょっと! 豆田まめお。大丈夫? 疲れたの?」

「あー。急いだのに。間に合わなかった! インテリアの安売りセールが……」

「え? このタイミングで、そこ? だから、急いでいたの? 王様からの報酬が入ったら買えるじゃない」

「いや、今、欲しいんだ! 本革のソファ!!」


 シュガーは大きな溜息をついた。


(やっぱり、アシスタントになったのは間違いかしら……)


 シュガーは苦笑い。


「もう豆田まめお! ソファー代、私の報酬で出してあげるわ」

「ほんとか!」


 その言葉を聞いた豆田は満面の笑みを浮かべた。


「明日、買いに行きましょうね」

「シュガー。素晴らしい! なんて素晴らしいアシスタントなんだ」

「はいはい」

「よし。元気が出たし、晩御飯でも食べに行くか!」

「いいわね。私はご褒美になる物がいいわ」

「じゃー。とびきり美味しいピッツァのお店にしよう!」

「ふふ。いいわね! わたしデザートも食べたい!」

「オッケー。じゃー。コルトまで戻ろう」


 豆田は車に乗り込みエンジンをかけた。シュガーはカイナタウンの夜空を眺め、満足げな表情を浮かべた。


 今日も空には三つの月が、綺麗に輝く。

ご覧いただきありがとうございます!


【第2章完結】です。


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――――――

人物紹介


・『豆田まめお』 

主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』

コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。

コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。


・『シュガー』

ヒロイン。ココア色のロングヘアー。

世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。

『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。


・『クロス』   

豆田の幼馴染。刑事。

箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。

天然ボケ。


・『ポロッポ』

ハト。王様に使える伝書鳩。

鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。


用語説明


・『こだわリスト』

こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。

戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。


・『純人』

純粋な心で物事をみる人々。

職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。


・『異界の者』

違う世界から現れたと言われる人々。

『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。

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