睡眠の『こだわリスト』
自身の能力によって、直立したまま深い眠りについたボスは、寝息を立て始めた。
豆田が眉をひそめた瞬間、その視界からボスは消えた。
(消えた?! いや、下か!)
ボスは身体を床に落とし、回し蹴りを放ってきた。豆田は完全に不意をつかれ下腿に攻撃を受けてしまう。
(くそ! 予備動作がないぞ!)
ボスは、低い姿勢から、豆田の喉元を狙った蹴りをくりだす。
(何だ?! この攻撃は?! 酔拳? いや、睡拳か?!)
豆田は不規則に繰り出される攻撃に困惑しながら、コーヒーシールドを展開し、防戦に徹する。
(くそ! シールドのお陰で、大したダメージではないが、動きが読めない! コーヒー銃を放てば、下手すると殺してしまうぞ。情報を手に入れてる為にも殺す訳にはいかない!)
豆田はボスの攻撃をシールドで捌きつつ、打開策を考える。
(こうも出鱈目な動きでは……。どこかに法則はないのか?)
ボスの嵐のような攻撃によって、コーヒーシールドにヒビが入り出す。
(くそ。さっきの風で、コーヒーが冷めかけているのか? 時間がない……。どこか)
豆田は観察眼が活路を必死に探す。
(ん? 胸郭の動きだけが……。そうか! しかし、どうやって……)
豆田は周囲を観察する。デスクしかない部屋にクロス達が転がり眠っている。
(全員寝ているだけで、命に別状はない。睡眠の『こだわりエネルギー』は、ボスの体内。部屋に充満していないなら……)
「コーヒー鍼!」
コーヒーシールドから、小さなカケラが分離し、球体になる。その球体は、高速に回転し、真っ黒な鍼になった。
「起きろ! クロス! 水溝穴」
出来上がった漆黒の鍼を豆田はクナイのように投げた。仰向けで寝転がるクロスの鼻と上唇の間に刺さる。
「鼻、痛っ!! ん? ここは? うわっ! 身体中、痛っ!!」
クロスは、コーヒー鍼の刺激で目を覚ました。辺りをキョロキョロし、状況を把握しようとしているようだ。すぐに豆田とボスの戦闘に気付き、豆田に視線を送る。
「クロス! すぐにシュガーを起こしてくれ!」
「まめっち! 分かった!」
クロスは痛む身体にムチを打ち、シュガーの元まで駆け寄る。
「シュガーちゃん! 起きて!」
クロスは、大きくうつ伏せになって寝ているシュガーの身体を揺するが、目覚める気配がない。
「ダメだ! まめっち! 起きない!」
「クロス! 座らせて、顔をこっちに向けてくれ!」
「分かった! シュガーちゃん座らせるね」
クロスは寝ているシュガーに向かって律儀に声をかける。シュガーの上半身を起こし、豆田の方に向けた。
豆田は、横目で状況を把握しながら、ボスの打撃をシールドで受け続ける。コーヒーシールドは、少しづつ欠けていく。
「よし! コーヒー鍼! 水溝穴」
豆田は、瞬時に漆黒の鍼を作り出し、クナイようにシュガー目掛けて投げる。シュガーの 水溝穴に命中する。
「痛っっったいー!!!」
シュガーは鼻を押さえ、バタバタ動く。
「シュガー! 目覚めたか!」
「豆田まめお! 痛い! なに?! どうなって? あ! 私、寝てたの?!」
「シュガー!! すぐにハンナから貰った石鹸で泡をつくってくれ! それをクロスの空のBOXに!」
「まめっち! 何に使うの?」
「とりあえず急いでやってくれ! コーヒーが冷める!」
「分かった!」
シュガーはショルダーバッグから石鹸と水の入った瓶を取り出し、泡立てる。割れにくいシャボン玉が沢山出来た。
クロスは、それをすぐにBOX3に入れた。
「まめっち。言った通りにやったよ!」
「よし! 次は、ボスの顔の前で、それを開いてくれ! タイミングは指示する。チャンスは一度だ!」
「まめっち! 了解!」
クロスは交戦中の豆田の近くまで駆け寄り、ボスをBOXの射程距離内に入れた。
「クロス! タイミングを合わせるぞ!」
「OK!」
「5.4.3.2.1」
「BOX3! オープン!」
クロスは、ボスの目の前でBOX3を開いた。
「いけ!!」
BOX から大量のシャボン玉が現れ、ボスの顔にへばり付き膜を貼る。ボスの顔は見る見るうちに青くなり、首を掻きむしり、のたうち回る。
「まめっち。コレは、どうなったの?」
「簡潔に言うと、吸気のタイミングに合わせて、膜を張った。簡単には破れない膜だ。まもなく窒息する」
「え!」
「失神したらスグに膜を破く。スグに拘束しよう」
バタバタしていたボスは、急に動きを止め、失神した。
「よし! クロスすぐに拘束してくれ! コーヒーソード」
クロスは懐から手錠を取り出し、ボスにはめた。豆田はコーヒーソードを作り出すと、シャボン玉の膜を破る。そして、拳を握るとボスの胸骨を強打した。その打撃によって呼吸が再開した。
一命は取りとめたようだ。しかし、ピクリとも動かない。
「クロス! やっと、終わったな」
「だね。体中ボロボロだよ」
クロスは苦笑い。
「豆田まめお。クロスさん。無事で良かった」
「シュガー。お陰で助かった。ありがとう」
シュガーは安堵から、ぼたぼたと涙をこぼした。
長い戦いは豆田達の勝利で終わった。
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人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




