アギト支部!ギミとの闘い。
ダリを倒された怒りから、ギミはその姿を蜘蛛そのものに変えた。
蜘蛛との唯一の違いはその脚が8本ではなく、4本である事だけだ。もう人の面影など何もない。
『ギエエエエエエエ!!』
鳴き声のような叫び声を放ち。威嚇する。
まだ倒されず残っていたクロスの部下たちは、足がすくんでガタガタ震える。
『お前たち!! 楽に死ねると思うなよ!!!!』
その言葉を発するのと同時に、残像だけを残し、ギミは跳躍する。
立ち竦んで動けないもの達が、次々とギミのカマの餌食になる。
「まめっち! 視界が開けた分、どこにいるかは分かるけど、速すぎる!!」
「何とかしないと、すぐに全滅だぞ!」
クロスは照準を合わせ、狙い撃つが、着弾する頃にはギミはもうそこには居ない。
『能力持ちの二人!! お前たちは、後でいたぶってやる!! まずは雑魚どもだ!!』
「ぐわ!!」
クロスの部下がドンドン戦闘不能になる。
『ははは!! いい気味だ!!』
ギミは嘲笑う。
残っていた最後の部下も大腿を切られ、その場にうずくまる。
『はは!! さー! 後はお前らだけだぞ!! この姿にさせた罪を償ってもらう!! 元の姿に3週間は戻れないんだぞ!』
クロスに狙いを定めたギミは地面を蹴り、跳躍する。銃を構え応戦するクロス。
しかし、銃弾はギミの残像に飲まれる。
「くっ! 素早い!! 全然当たらない!!」
ギミがクロスの腹部を切り裂こうとした瞬間。先読みした豆田の弾丸がギミの頭部を狙う。
ギミの6つある目の1つがその気配を感じ。ギリギリのところで弾丸を躱す。 そして、後退し距離をとる。
『またお前か!! お前にはこの姿になった私の恐ろしさを思い知らせてやる』
ギミは大きく息を吸いこみいきむと、足にエネルギーを集約させる。 大腿は膨張する。
『このスピードならどうだ!!』
地面を蹴り、疾走を開始する。至る所に残像を残し、的を絞らせない。
「しかし、3週間とは意外と短いな」
豆田はボソリと呟く。それを受けてポロッポが、
「豆田さん。そうですね。てっきり一生戻れないかと思いましたよ」
「そうだよな」
ギミはその言葉を耳にすると、高速移動をやめた。
『そこ! 聞こえているぞ!! なんだと?!』
豆田を顔をギロリと睨んだ。
『お前ら、この姿のままで、3週間だぞ!!!!』
「んー。ま、私は嫌だがな!!」
豆田がぼそりと呟く。
『そうだろ? 蜘蛛のままだぞ!! しかも3週間!!』
「まーな」
(まめっち? 何をする気だ?)
豆田の言動をクロスは固唾を飲んで見守る。
「コーヒーに似合わないし、私は蜘蛛になるのはごめんだけどな」
『そうだろ?! 見ろ!! 蜘蛛だぞ!』
「まー。私なら、ショックだがな」
『そうだろ? 分かったか!! では、改めて皆殺しだ!!』
ギミはカマを振り上げる。
「だがな。しかし」
豆田は会話を続ける。
『だがな? だと?』
「お前は蜘蛛の『こだわリスト』だよな? 喜ばしい事ではないのか?」
豆田の言葉にギミは思わず自問自答してしまう。
『え? え、え? あ。ああああああああ!』
蜘蛛への『こだわり』に対して、一瞬だが疑心が生まれてしまった。
それに反応して、ギミの体が変化し始める。ギミの全身を覆っていた『こだわりエネルギー』が煙のように抜け出し、散っていく。
身体から離れるそれをギミは両手でかき集めようとするが、虚しいだけである。
「え? 違う違うの! 嬉しい! 蜘蛛になるのは嬉しい! うそ! 私は蜘蛛が好きなはずなの! いやーーーーーー!!!!!!」
その言葉とは裏腹にギミの体がドンドン変化する。そして、ついにヒトの姿に戻ってしまった。
「え? 嘘。人に戻ってしまった……」
「お前の『こだわり』は、その程度だ!」
(まめっち!! まさかの『こだわりつぶし』!)
その場で項垂れるギミ。しかし、歯を食いしばり、顔を上げる。
「それでも!! ダリのカタキ!」
懐から銃を取り出し豆田に向ける。
「無駄だ」
ギミは引き金を引こうとするが、指が動かない。
「コーヒー鍼を頸椎2番の下、深くに刺した。もう指一本も動かせはしない」
「くそ!!!!」
「『こだわり』を捨てた者には、勝利はない」
ギミは心を砕かれ、放心する。
***
戦闘を終えた豆田達はギミとダリを拘束した。
重症の部下と、そのケアをする者をその場に待機させ、残った2名と豆田達は先を急ぐことにした。
「豆田まめお。まさか、こだわれなくして、蜘蛛の敵をやっつけるなんて! 作戦?」
「素朴な疑問を投げかけただけだ。まさか能力が無くなるなんて。ラッキーだったな。良いデータがとれた」
豆田は満足げだ
「まだアギトのメンバーはいるのかしら?」
「そうだな。まだ睡眠を操る敵が出てきてないからな」
「まめっち。あそこ!」
クロスは前方の扉を指差す。
扉の下部から明かりが漏れ、敵の存在を予見させる。
***
『ギギギー』
錆びた鉄の扉をスライドさせる。
不用意にその奧の廊下に出ようとしたシュガーを豆田は静止させた。
「シュガー。ここは罠を張って待ち構えるには、ちょうど良い場所だ」
そう言うと、豆田はポケットから銀貨一枚を廊下に投げる。
『『『バシバシバシ』』』
銀貨を狙い複数の弾丸が飛ぶ。
「ほらな」
豆田は得意気。シュガーは青ざめる。
「まめっち。どうする? 敵が多いみたいだね」
「コーヒーシールドで捌くか?」
「大丈夫かい?」
「ま、やってみよう。コーヒーシールド!」
コーヒーは反応しない。
「あ。冷めている。クロス。BOX1だ」
「豆田まめお。ちょっと待って! ここで最後のコーヒーを使うのは危険じゃない?」
「しかし、それしかもう手がないぞ」
シュガーは、豆田の顔を見てニコッと微笑んだ。
「クロスさん。何か使える火器はありますか?」
「シュガーちゃん。使えるのはもう、この手榴弾と、銃が二丁だけだね」
シュガーは、少し悩んだ後、
「クロスさん。私が雑貨の『こだわリスト』の力を使うので、その後、廊下に手榴弾を投げて貰えません?」
「え? 雑貨の……?」
クロスは、視線を豆田に向けた。豆田は片眉を上げ、ポロッポをチラリとみた。
(あ、そう言うことか!)
クロスは豆田の思考を理解した。
「OK! じゃー。シュガーちゃん。任せるね」
シュガーは頷くと、その場にしゃがみショルダーバッグから、石鹸と小さな杖を取り出した。
「シュガーさんも『こだわリスト』なんですねー」
ポロッポは、お気楽にそう言った。
「そうよ! 雑貨の『こだわリスト』なの! 見ててね!」
そう言うと、持参した小さな小瓶から水を取り出し、石鹸を泡立てた。その泡を手のひらに乗せると、シュガーは杖の先をそこにかざした。
手のひらの泡は、ブクブクと泡立ち、沢山のシャボン玉が浮かぶ。シュガーはそこに再度杖をかざした。
シャボン玉は優しい風に揺られ、廊下内に流れて行く。それを戦闘員が射撃し続ける。
シュガーは、ドンドン泡からシャボン玉を作り、廊下に流して行く。やがて、銃撃が間に合わず、廊下はシャボン玉でいっぱいになった。
「クロスさん! 今です!」
「ここに投げ入れたら良いんだよね?」
そう言いながら、クロスは手榴弾の安全ピンを外し、廊下内に投げ入れた。
「クロス! ぼーっとするな! 一気に燃えるぞ!」
「え? 燃えるの?」
豆田はクロスの襟を後ろから引き、扉から離すと、扉に回し蹴りをする。勢いよく閉まった扉の奥で、凄まじい爆発音が聞こえた。
「えー!! 爆発凄くない?」
「シュガーの、力でシャボン玉内の酸素濃度を上げたんだ。その為に通常の数倍の爆発が起こった」
「シュガーちゃん! やるね!」
「クロス! 今のうちに一気に進むぞ!」
「そうだね。じゃー。しっかりついてきてね!」
豆田が頷くと、クロスは扉を開き廊下に侵入した。先程の爆発の痕跡が壁中に残る。
どうやら、廊下にいたアギトの戦闘員は、爆発によって、倒されたようだ。先程までの嵐のような銃撃はなく、静かだ。
廊下の先には、明らかに他とは違う重厚な雰囲気の扉があった。焦げ茶色に塗装した鉄の扉。枠に刺々しい装飾がされ、威圧感を放っている。
扉の前までたどり着いたクロスは、親指で扉を指差した。
「皆! この先からただならぬ気配を感じる! 覚悟を決めないとね!」
「「はっ!!」」
クロスの言葉に部下2名は、拳を胸に当て姿勢を正す。
「この国の未来の為に!!」
クロスは皆を鼓舞するつもりでそう言ったが、豆田のテンションは逆に下がってしまう。
「クロス! 私は人の為には頑張れない!」
「まめっち。ここはそう思ったとしても黙っててよ!」
「無理だ!」
「ねー。豆田まめお! ソファ! ね! その為に頑張るんでしょう?!」
「ん? ああ」
豆田は味気ない返事をした。
「本革? それとも布?」
その言葉が豆田の目に輝きを取り戻させた。
「シュガー! それは、もちろん。本革だ!! ついに本革のソファーだ!」
豆田は心底嬉しそうに語る。
「シュガー! ありがとう。気合いが入った!」
「はは。まめっちらしいね。じゃ。行こうか!」
「待て。クロス。BOX1のコーヒーをくれ」
「そっか。戦闘の用意だね」
「いや、単純に濃厚なコーヒーが飲みたい」
「え?」
「早くしろ! クロス!」
「え? あ、BOX1。オープン」
クロスは戸惑いながらもBOXを呼び出し、中から熱々のコーヒーを取り出した。
豆田は嬉しそうに受け取ると、グビグビ飲んだ。
「豆田まめお。ヤケドしないの?」
「私は反猫舌だ! 問題ない!」
(反猫舌? 猫舌の反対ってこと?)
シュガーはツッコミたい気持ちを全力で我慢した。豆田はコーヒーを半分ほど飲むと、満足そうに、
「素晴らしい一杯だ! さー。行こうか!」
と、言うとすぐに扉を開いた。
「ちょっと、まめっち! 急過ぎだよ」
重厚感漂う扉の奥は、だだっ広い空間にデスクが一つだけあり、その横に、金髪オールバックの男が立っていた。
「お前たちが侵入者か」
静かな声だが、その奥に迫力を感じる。
クロスとその部下は拳銃を取り出し、銃口をその男に向けた。
「大人しくしろ。あとはお前だけだ!!」
と、叫んだ。しかし、そのセリフとは裏腹にクロスの顔にゆとりはない。
男はその様子を嘲笑いながら見ていた。
ご覧いただきありがとうございます!
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していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新頻度あがります!
どうぞよろしくお願いいたします!
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人物紹介
・『豆田まめお』
主人公。探偵。コーヒーの『こだわリスト』
コーヒーから『こだわりエネルギー』を抜き出し、自在に操る能力者。
コーヒー銃。コーヒーソード。コーヒー鍼。などを使う。中折れ帽子にシャツ姿。わがままで癖が強い。
・『シュガー』
ヒロイン。ココア色のロングヘアー。
世界を救うために、アルテミス国軍から脱走する。
『純人』。豆田まめおのアシスタント。純粋。
・『クロス』
豆田の幼馴染。刑事。
箱の『こだわリスト』。金髪ショートボブの好青年。
天然ボケ。
・『ポロッポ』
ハト。王様に使える伝書鳩。
鳴き声の『こだわリスト』で、人の言葉も話せる。
用語説明
・『こだわリスト』
こだわることで不思議な能力を手に入れた人々。
戦闘に特化したタイプや、道具に不思議な能力を付ける職人タイプがいる。
・『純人』
純粋な心で物事をみる人々。
職人タイプの『こだわリスト』が作る道具を何でも扱える。
・『異界の者』
違う世界から現れたと言われる人々。
『こだわリスト』と『純人』にしかその姿は見えない。




