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うまなちゃんはもっと感じたい  作者: 釧路太郎
白ギャル黒ギャル戦争

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お地蔵さんは見つからない

 あれから何度か交差点でお地蔵さんを探してはいたのだけれど、どれだけ探しても私たちはお地蔵さんに出会うことはなかった。

 愛華ちゃんは何度かこの辺に来たことがあってお地蔵さんがあることは知っていたのだ。そのお地蔵さんが見える人と見えない人がいるという事は知らなかったみたいだった。

「もっと簡単に見つけられると思ったんだけどな。こんなに探しても見つからないなんておかしいよな。俺の先輩に詳しい人がいるから呼んでもいいかな?」

 知らない人が増えるのは正直嫌だった。嫌ではあるけれど、この状況で私のわがままで断ることなんて出来ないと思う。詩織ちゃんも茉子ちゃんも友紀ちゃんも浩二君の先輩に面識があるのか納得しているような感じに見えていた。

「そんなに警戒しなくて大丈夫だよ。俺の先輩は変な人じゃないからさ」

「うん、それならいいんだけど」

 私の考えを読んだのかと思ってしまったのだが、それは私が表情に出してしまっていたからなのかもしれない。年上の知らない人が来ることに対して警戒してしまっていたのがバレてしまったのだと思う。


「おっす、お前ら暇人だな。ここのお地蔵さんを探すとか時間に余裕があるお前らにしか出来ないぞ。あれ、女子がちょっと多いけど大丈夫かな」

「大丈夫かなってどういう事っすか。勇作さんなら見つけられるって思ってお願いしたんですよ。ちゃんと見つけてくださいね」

「そう言われてもな。俺も何がきっかけでお地蔵さんが出てくるかわかってないんだよ。久雄君の話だと、悪いやつにしか見つけられないって言ってたな。俺と浩二だけだったらもう見つけてると思うんだけど、いい子ちゃんぽい子たちがいるから難しいかもな」

「そんなこと言わないでお願いしますよ。この子たちは真剣なんですからね」

 詩織ちゃんたちはやってきた浩二君の先輩に頭を下げてお願いをしていた。私もそれに倣って同じように頭を下げていた。どうしても見たいという程でもなかったのだけど、詩織ちゃんたちがそこまで言うんだったら私も見てみたいという気持ちになっていたように思える。

「じゃあ、まずは俺と浩二がこっち側を探してみるんで君たち四人は反対側から探してね。見つけたら誰でもいいんでお地蔵さんと一緒に写真に写っといてね」

「誰でもいいって言われても困るけど、写真に写りたがりの茉子がいるから安心だね」

「なんでだよ。私は普通の写真ならいいけどお地蔵さんとツーショットなんて嫌だよ。なんか怖いし」

「怖くないって。茉子なら平気だって」

「何の説得力もないんだけど」


 男女で別れてお地蔵さんを探すことになったのだ。ずっと探していたこともあって見つかるはずがないと思いながらもそれなりに真剣に探してはいた。

 四つ角地蔵という名前に引っ張られて角ばかり探していたのだけど、普通に道なりにあるのかもしれないというアドバイスを勇作さんから貰っていたので今まで見ていなかった場所も念入りに探すことにしたのだ。

 だけど、私達には見つけ出すことは出来なかった。ゆっくり時間をかけて探してみても見るけることは出来ず浩二君たちと合流した時にはもう諦めるしかないという話になっていたのだった。

「そっちは見つけられた?」

「全然。勇作さんのアドバイス通り今まで見てなかったところも探してみたんだけど、どこにも見つからなかったよ。これだけ探して見つからないんだったらもう無理かも」

「そんなこと言うなって。俺たちはちゃんと見つけたんだからさ」

 そう言いながら差し出された浩二君のスマホにはお地蔵さんと一緒に写っている二人の姿があった。さっきまで探していた見覚えのある塀のすぐそばにこんなに立派なお地蔵さんがあるのを見逃すはずがないと思っていたのだが、実際に見逃してしまっていたという事実を突きつけられてしまっていた。

 私はその写真を見て驚いてしまって声も出なかったのだが、詩織ちゃんたちも私と同様に驚いて声も出ていないようだ。何度も一緒に探した場所でこんなにわかりやすいお地蔵さんがいるなんて信じられなかった。

「ちょっと待ってよ浩二。ここってさっき探した場所だよね?」

「そうだよ。正直言って俺も驚いているよ。勇作さんに言われて見た時にいきなりお地蔵さんがあってびっくりしたもんな。何で見逃しちゃったんだろうって不思議だったもんな。どうして今まで気付かなかったのに勇作さんが来た途端見つけられるようになったんですか?」

「どうしてって言われてもな。俺と浩二の波長とこのお地蔵さんの波長が合って現れたって事じゃないかな。俺も詳しいことはわからないけど、お地蔵さんに選ばれないと姿を見せてくれないって久雄さんが言ってたんだよ」

「そうなんっすね。久雄さんがそういうんだったら間違いないですよね」

 久雄さんが誰なのか知らないんだけど、詩織ちゃんたちも久雄さんがそういうんだったら間違いないという空気になっていた。そこまで信用できる人だという事は悪い人ではないのかもしれない。私たちとお地蔵さんの波長が合わないだけなら仕方ないよねと思った私はもう帰ろうとしていたのだけど、詩織ちゃんと浩二君が急に変なことを言い出したのだ。

「それじゃ、今度はグループを変えて探すことにしましょ。次は私が浩二と勇作さんと一緒に今見てきたところをもう一度探してみるね。茉子たちは浩二が写真を撮った場所を中心に探してみて」

「分かった。浩二君が見つけてくれたんだから私たちも余裕で見つけられるっしょ。友紀もうまなちゃんもやっとお地蔵さんが見られるね」


 私たちは浩二君と勇作さんが写真を撮った場所の近くを探していたけれど、どこにもお地蔵さんは見当たらなかった。

 写真と同じ位置にバス停が見えているので間違ってはいないと思うのだけれど、どこを探しても目的のお地蔵さんは見つからなかった。

 こんなにハッキリと写し出されているのに見つけられないことなんてあるのだろうかと思いながらも探していると、一周してきた詩織ちゃんたちが私たちのもとへと合流してきたのだ。

「どうだったかな。見つけられたかい?」

「全然見つからないよ。この位置であってると思うんだけど、どこにも見当たらないんだよ」

「さっきまであそこに居たと思うんだけど。おかしいな」

 写真とこの場所を見比べている浩二君はここで間違いないと断言してくれた。勇作さんもここで間違いないと言ってくれているのだけど、なぜ今はここにお地蔵さんがないのだろうか。その答えはわからない。

「不思議な話もあるもんだね。もう一つ不思議な話があるんだけど、これを見てもらってもいいかな?」

 詩織ちゃんがスマホの画面を私たちに見せてくれたのだが、そこにはさっきまで私たちが捜索していたはずの橋の近くにあるお家の塀のそばに佇んでいるお地蔵さんと詩織ちゃんの姿が映し出されていた。

 何度も探したはずの場所なのになんでだろう。そう思いながらも私は詩織ちゃんのスマホから目を離すことが出来なかったのだ。


 それから何度かペアを変えて探してみたところ、私だけがお地蔵さんに出会うことが無かったのだ。

 私だけ、お地蔵さんを見つけることが出来なかった。

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