スレタイが変わりそうな予感がする
某県某所。海峡に続く街路にて。
丑三つ時に脚部しかない幽霊の姿が目撃されると、ある掲示板にスレッドが立てられた。
【人生で初めてはっきりとした幽霊を見てしまったんだが】
証拠とされる写真──かなりぼやけているが脚部だけが写っている──が貼られ、遭遇した経緯が事細かく書かれていく。
そんな“ネタ”と言わんばかりの話題に、当然ここぞとばかりに住人は食いついた。
“これは本物”
“はい釣り乙”
“イッチの写真はかなりぼやけているけど俺には分かる。見ているだけでとんでもない冷や汗が出てくる”
“と、自称霊感があるやつが言っております”
“それなりに脚が綺麗で良いな”
“幽霊相手に発情してるの草”
熱狂する民と真偽を問う民に分かれ、白熱の討論合戦に発展する盛り上がりを見せた。しかし収拾がつかなくなり始め、最終的にある提案が投下されることとなった。
“写真が本物かどうか確かめにいけばいいんじゃね”
その一言を皮切りに某所へ向かう事を宣言する者が数名現れた。
行動に移す物を称える民、馬鹿にする民とまた派閥があかれてしまったが、とりあえず結果を待つことに事態は収束を迎えた。訳だったのだが──。
「掲示板で貴方の脚を見た時、心を奪われました! 素晴らしい脚線美です! 俺に憑りついていつでも近くで脚を見させて下さい!」
ヤバい奴がいる。幽霊が霞むほど強烈な存在感を暗闇で放っている奴が。
掲示板で書き込みを行っていた住人たちであろう数名が、幽霊が目撃された街路を遠巻きにするように様子を窺う。
一人だけ幽霊の脚が綺麗とか言っていた奴いたよな。絶対アイツだわ。
言葉にしないが同意の空気が流れる。
ここからでもはっきりと脚だけしか見ない幽霊がいるのだが、もはや猛者の告白の方がインパクトとしてデカい。
「これスレタイ変更で幽霊からOK貰えるか実況した方がいいんじゃないか」
ぼそりと呟く。
そして誰ともなくスマホを取り出し、事の顛末を掲示板に書き始めた。