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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
深い森の古王国
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討伐部と闇の淵

来ていただいてありがとうございます

 ハルカ、リフィロ、そしてフィリアが森の最奥、精霊樹、精霊王のもとへ向かっているころ、城の中の討伐部の部屋では、王子達魔法使いや浄化するもの達が集まっていた。

 城の中といっても、豪華な作りではなく広めの部屋に木製の机と椅子があるだけの部屋だ。討伐部の人数は五十名ほどで、魔物の強さにもよるが大体魔法使い三人に浄化するもの達五人が一グループとなって行動する。この編成は基本的なもので、例えばフィリアがチームに加わると、浄化するものは他に加わらないか、フィリアと合わせて二人ということもある。また、力の強い魔法使いがチームに加わると、魔法使いの数も変わってくる。

 魔物の強さは大体その大きさに比例する。希に、大きな魔物が出現すると、二チーム以上が連携して討伐を行うこともある。そして更に極まれに人の姿をした魔物もいる。彼らは大きさに関係なく強大な力を持っており、言葉を話せると言われている。ただ、この国では目撃自体がなく、ほぼ伝説の中の存在となっている。

 今部屋の中では様々な意見が飛び交っている。そうはいっても会議をしている訳ではなく、あちこちでそれぞれが話し合っているという状態だ。

 「精霊王様が復活するのならば、また民達を呼び戻すこともできるかもしれない」

 「その判断はまだ早い。あの渡り人の言っていることが正しいのかもわからんのだ」

 「彼女がここへ来たことには意味があるはずだ」

 「そんな都合のいいことがあるだろうか?」

 そんな彼らを見ながら、王子達も話し合う。

 「兄上はどう思われますか?」

第三王子のクレネスは尋ねられて少し考え込む。

 「俺はあの渡り人はいまいち信用できないな。ほとんど部屋から出てこないし、ほとんどしゃべらないし」

クレネスに意見を求めたのは第四王子のヴァン。そしてハルカへの不満を述べたのは第五王子のクロー。二人とも毛先が淡いグリーンに染まった金色の短髪。二人は双子で、風の精霊魔法を使う。

 「彼女はこの世界に突然来てしまって、戸惑っているんだよ。それにずっと体調も悪かったようだしね。私には嘘をつくような子には見えないよ」

 「クレネス兄上がそうおっしゃるなら、きっとそうなんでしょうね。それに精霊王様が彼女にコンタクトを取ったということは間違いないと思います。彼女がお会いしたという森の精霊王様の特徴は僕たちの認識と一致しています」

ヴァンがクレネスに同意すると、クローは面白くなさそうに鼻をふんと鳴らした。

 「それはそれで重要かもしれないけれど、ンぐ、僕はさっさと残りの国民たちを避難させるべきだと思うよ」

森でよく実っている小指の先くらいの焦げ茶色の木の実、チキの実をつまみながら、話に加わってきたのは第六王子のフラムだ。彼の髪は全体が淡い夕焼け色に染まっている。ちなみにチキの実は殼を取って炒って食べるのが彼のお気に入りだ。素朴な味だが、とても香ばしくて良い匂いがする。行儀作法はどうなのかとは思うが、今は食べられる時に食べておこうと言うのが彼らの考え方だった。

 「んなこと言っても、うぐ、なかなか説得に応じない奴らが多いんだから仕方ないさ」

クローがフラムの持ってた皿からチキの実をひとつ取って食べながら言った。

 「住み慣れた森から離れたくないと思うのは当然のことだよ。私達だって森から離れるのは辛い」

 「けれど、今の状況でここに住み続けることは死を待つのと同じです。何とか説得しなければ」

 クレネスは民の心に同調し、ヴァンは民の身の安全を願う。彼らの間でもう何度も繰り返されてきた会話だ。森を離れる決断をした者達は多いが、未だ森と運命を共にしたいと願う民の方が多かった。

 「それにしても、今日はやけに静かだよな。俺の精霊も何も伝えてこない」

クローは眉を寄せている。クローやヴァンと契約している風の精霊は魔物の発生や接近、位置を知らせてくれる。もちろん他の精霊にもできるが、探索は風の精霊の得意なことだ。浄化するものたちも能力の差はあれど、魔物の気配を察知することができる。しかし、精霊たちには敵わない。

 「静かなのはありがたいことだね。最近は魔物の数が多かったから」

クレネスは穏やかな光が差し込む窓を見た。その時、ガタガタガタっと細かな振動が窓を揺らした。もしここに、ハルカがいれば地震だと思ったかもしれない。

 「?」

 「何だ?今のは?」

 




 虚空の闇の中佇む者がいる。

 「おいおい、どーなってんのこれ。ほっとけばそのうち消えてくと思ってたのにさ。誰か余計なことしてくれた?困るなあ……」

あまり困ったようには聞こえない声色だった。そして微かに笑って、

「まあいいや、お前達ちょっと行ってこいよ」

独り言のようにつぶやいたその音は琥珀色の砂原に波紋のように広がっていった。





 最初に異変に気付いたのは、精霊達だった。契約してる精霊達が一斉に警戒を知らせてくる。そして驚いた魔法使い達に浄化するものたちが焦ったように叫ぶ。

 「魔物の気配が向かってくるっ」

 「物凄い数だっ」

 「北だ!いや西……北西の方からっ……」

クローもヴァンも精霊から伝えられた情報に色を無くす。

 「何だよ……これ」

 「一体何が……」

森を囲む様に魔物の大群が押し寄せていた。


ここまでお読みいただいてありがとうございます



クレネス→水

ヴァン→風

クロー→風

フラム→火

リフィロ→氷

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