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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
花咲く湖上の研究機関
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あのあと

来ていただいてありがとうございます。

ハルカは見覚えのある部屋で目を覚ました。部屋の中は暗く、静かで人の気配は無いように思われた。

「ここは……学園の医務室?私……セシリアさんに、それから……」

(もしかして全部夢……?)

だとしたら、自分はとんでもなく自分に都合の良い夢を見ていたものだとハルカは思った。思わず赤くなるハルカをリフィロが見つめている。寝台の枕元に頬杖をついて。

「目、覚めた?」

思わぬ至近距離にリフィロの綺麗な顔があってハルカは一瞬声が出ない。

「っ…………リフィロ?」


「言っておくけれど、夢じゃないからね?」

ハルカの思考を先読みしたかのようにリフィロは笑顔で言った。ハルカはその笑顔が何だか怖くて、起き上がって少し後ろへ逃げてしまった。リフィロはハルカが離れた分距離を詰めてくる。

「それとも忘れてしまった?それなら思い出させてあげるけど……」

そう言ってリフィロは顔を寄せてくる。

「お、覚えてるっ!ちゃんと覚えてます!私、ちゃんとリフィロのこと好きだからっ」

「…………うん」

「っ!」

結局、リフィロはハルカに軽く口付けをしてから顔を離した。ハルカはリフィロが何か変だと思ったが、リフィロにしてみれば、やっと手の中に捕えた愛しい少女を構いたくて仕方ないのは当然のことだった。そして、心配なこともあった。だから、ハルカが目を覚ますまでそばについていたのだ。


「……、そっか、じゃああれも夢じゃないんだね……」

リフィロはやはり覚えていたか、と思った。沈んだ表情になるハルカの肩を抱いた。









あの後、二人の思いが通じ合ったあの後。二人の前に白い光と銀色の光が現れた。やがて光はそれぞれ形を取り始めた。

「龍神様とおばあちゃん?」

ハルカが龍神様と呼んだ白い光の異形が口を開いた。


「このまま、元の世界へ連れ帰ろうと思ったが、陽花はここに居続けたいのか?ここはそなたには危険すぎる……」

龍神は気遣う波動を送ってくる。リフィロが、はっと息をのむ。ハルカの祖母だという銀色の光の女性は少し困ったように微笑んだ。

「私、ここにいたいです」

「ハルカ……、本当にいいのか?」

リフィロは苦しそうに尋ねる。


「そなたたちに伝えておくことがある。私の力は悪しき力、邪気を喰らい、清めるものだ」

ハルカは森の精霊王の言葉を再び思い出す。

(ああ、精霊王様が言っていたのは、龍神様の力のことだったんだ)

「私と私の力とは代々私に仕える巫女に宿る。本来の世界であるならば、数多の龍神が存在し、役目を分けている。しかし、この世界では……」

この後龍神が語ったことは二人に少なからぬ衝撃を与えた。


ハルカはその体に負担がかかりすぎており、このままでは長くても二十歳を超えては生きられないだろうと。しかもハルカの能力は体質に近いもので、止めることは出来ないと。それでもその選択で良いのかと、龍神は再び問うてきた。

「……それでも、私はここにいたい。リフィロやみんなのところにいたいです……」

ハルカの頬を涙が伝う。

「ハルカ、ダメだ!君はここにいたら……」

「もともと、帰れるとは思ってなかったの。だからお願いします。この世界に留まらせてください」

龍神は仕方が無いというように首を振る。

「はるちゃんは、昔から決めたらまっすぐだから……」

「おばあちゃん、ずっとそばにいてくれたんだね……ありがとう」

ハルカの祖母は微笑んだ。


「っ、何か、何か方法は無いのですか?こんなっ……。ハルカは僕達を助けてくれたのに、こんなことがっ」

リフィロは、龍神を見た。

「世界に空いた穴を塞ぎ、瘴気を全て消せば良い」

龍神は途方もないことをさらりと言った。

「そもそも、この世界には瘴気は無かったのだろう。ならばその流入を止め、全てを浄化すれば良い」

龍神はまるで挑戦するかのようにリフィロに言った。お前にそんなことが出来るのかと。


「此度のみだ。ハルカを戻してやろう。但し、次に同じような目に合わせた時はハルカの魂は元の世界へ、輪廻の輪へ帰す。二度とまみえることは無いと思え」

「陽花のこと、よろしくお願いしますね」



二つの光はハルカの体に戻り、その傷を癒した。



気が付くとリフィロはその腕の中に、眠るハルカの体を抱いていた。

「心得ました」

リフィロは覚悟を持って答えた。愛する少女を見つめながら。水音は止まり、白い空間が薄らいでゆく。



リフィロはいつの間にかそばにいた氷の精霊鳥に乗って、ハルカと共に飛び立った。











「ごめんねリフィロ、私……」

「させないよ。僕に置いて行くなって言ったのはハルカだ。それなのに君は僕を置いていくつもりなの?」

「でも、私は……」

「ハルカはこの世界のために頑張ってくれてる、今も。今度は僕の番だ。それに……」

「……?」

「あと四年なんて全然足りないから……」

「足りない……?」

「そう、君を愛するのにそんなんじゃ全然足りない」

「え?」

やっぱり、リフィロはちょっと変だとハルカは思った。何というか色気のようなものが半端な無いような気がするのだ。そのせいかハルカは近づいてくるリフィロに抗えない。

「あ、あの……」


「ずるーいっ!こおりばっかりー!わたしもあるじとあそぶー!」

高い子どもの声が窓の外から聞こえた。

「あ、こら!邪魔をしてはならぬと……」

森の精霊王が幼い精霊を押さえる。

「なんで私まで……」

不本意そうだが立ち去る気配は見せない湖水の精霊王。

「いやあ、リフィロも大きくなったなぁ」

そしてやたら感慨深げな雷の大精霊。



吹雪が夜の学園を襲い、建物が氷結した。







ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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