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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
花咲く湖上の研究機関
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白炎

来ていただいてありがとうございます。

フラムはハルカとリフィロが消えた湖岸に立ち、湖を見ていた。あの時、フラムはハルカを追って湖へ飛び込むリフィロを見た。

(あの水の流れは何か僕達の魔法とは次元の違うものだ。何かに呼ばれた?そうなら、おそらく二人は無事だろう)

フラムはそう考えていたが、時間が経つにつれ焦り始めていた。


あの後、あの三人の男達を締め上げたが、自分達はまだ何もしていない。メイドの女に手引きされたと言うばかりで、他に何の情報も得られなかった。城の警備兵に引き渡し、事情を説明。湖に落ちたハルカの救助は自分達が行うと告げた。本音を言えば、あの三人は自分が手を下してやりたかったが、何とか押さえた。


この騒ぎで一時騒然となったが、結局、舞踏会は続けられていた。足元で、山猫の姿の精霊が自分を見上げている。

「大丈夫だよ。何かあればリフィロの精霊が知らせてくる」

そう言ってフラムは自分の契約精霊を抱き上げ、肩に乗せた。





セシリアは舞踏会の会場を出て、夜の庭園を歩いていた。王城に招待された女子学生が湖に落ちたという話はあっという間に広まり、セシリアの耳にも届いていた。ちょっと湖へ様子を見に行こうという気持ちになったのだ。

(あの転移者はもう助からないわ。あの毒薬を一口でも飲んでいれば。襲われてあまつさえ、湖に落ちるなんて。ああ、かわいそう。でもいい気味。リフィロ様さえわたくしの言う通りにしてたら良かったのにね)

セシリアは手にした扇の影で笑った。

(でも、リフィロ様まで湖に飛び込むなんて……。わたくしリフィロ様がどんなお顔をするのか見たかったのに……。リフィロ様も死んじゃったのかしら?もしそうなら、仕方がないからフラム様に赤の王国に来ていただこうかしら……あら?いい考えだわ!そうよ二人を喪って悲しむフラム様をお慰めして……それならお父様も喜んでくださるわ、きっと!)

セシリアは湖のほとりに佇むフラムに近づいた。

「フラム様」

セシリアがフラムに声をかける。

「まだ見つかりませんの?心配ですわね」



「お前の仕業か」

フラムはセシリアを見ずに問いかけた。セシリアは「お前」という呼び方にムッとしたが、微笑みで答えた。

「まあ、何のことをおっしゃってるのですか?」

「お前がリフィロにどんなちょっかいをかけようと、はっきり言ってどうでもいい」

「まあ、ちょっかいだなんて。わたくしは本気でしたのよ。それなのにリフィロ様ったら酷いんですの。フラム様は兄君ですのにリフィロ様にお冷たいのですね」

「お前ごときに対処できないような奴ではないからな」

「……」

フラムの周りにどこからか、光が集まってくる。セシリアには見えていない。


「だが、もしもハルカを巻き込むなら容赦はしない」

「ですから、何のことを仰っておいでですの?それにしてもご兄弟揃ってあの方にご執心ですのね。わたくしには冷たいのに……。わたくし悲しいですわ。あの方と違ってわたくしは森の古王国の民ですのに……」

山猫の姿の精霊がフラムの肩から地へ降り立つ。


()国民だろう?今は赤の王国の民だ。森とは一切関係ない。そしてハルカは森の古王国の民であり、家族だ」

フラムは冷たくいい放つ。

「……少しひどくはありませんか?わたくしたちが、こちらでどれほど苦労したか……」

パチリ、パチリと何かがはぜるような音がする。


「苦労?そんなことは知ったことではない。森の古王国の貴族でありながら、守るべき国民を放り出し、我先にと逃げ出した卑怯者の一族が!」

ここで初めてフラムはセシリアの方を向いた。

「なっ……」

セシリアは何かを言い返そうとしたが、フラムの威圧で言葉がでない。集まってきた精霊達が山猫精霊に寄り添う。


「お前は当時まだ幼かったから、その振る舞いも仕方がないと思っていたが、リフィロへの無礼な態度、許すのもここまでだ」

「リフィロ様のせいで、森が滅びるのでしょう?それにあのような者にずいぶん肩入れなさるのですね?転移者なんて、どこから来たのかも知れない、得体の知れない下賎な者を家族だなんて」

セシリアは呆れたようにため息をついた。


フラムの髪の毛が白く変化し始め、体から大きな白い炎がゆらりと立つ。同時にフラムの契約精霊にも変化が起こり始めた。

「リフィロは何も悪くない。あいつはずっと必死で民を守ってきた。森は滅びたりしない。……そして彼女を侮辱するな。彼女は古王国の恩人だ。もしハルカが無事でなかったら、私がこの王国ごと全て焼き尽くしてやる」

フラムの足元で、大きな翼を持った大きな白豹が、セシリアに牙をむく。


「……っ!」

(し、白い炎?何?すごく熱いわ。普通の魔術じゃない?一体何なの?)

セシリアには精霊の姿は見えてはいないが、その高熱は感じ取れていた。本能的な恐怖を感じて後ずさる。



一瞬、月明かりが青く翳った。



ぱしゃんと水音がして草の上に何かが降り立った。振り返ったフラムは、安堵のため息をついた。彼の色が戻っていく。精霊の姿も元に戻っていった。


「フラムっただいまっ」

ハルカが笑って手を振っている。そう、笑っている。

「兄上、ただいま戻りました。」

リフィロも帰ってきた。何故か精霊王も復活している。





「何?……何で生きてるの?効かなかったの?」

セシリアは呟いて、逃げ出した。

動揺していたセシリアが口走った言葉を、フラムは聞き逃さなかった。





ここまでお読みいただきありがとうございます。

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