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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
花咲く湖上の研究機関
37/65

エリオットの求婚

来ていただいてありがとうございます。

「え?決闘?でも、攻撃魔術と防御魔術でどうやって勝負するの?」

「いや」


体力が回復したハルカは、放課後ミリーと一緒に、いつものように校舎横の森で魔術の自主訓練をしていた。そこへエリオットがやってきたのだ。最近エリオットは学園の制服を着用するようになった。白い制服が夕日を受けている。


エリオットは渋面を作る。ハルカは思い付いてポンと手を打つ。

「あ、そうか!魔術を打ち合って、先に魔力切れを起こした方が、負けとか。それなら……」

「ハルカ、ハルカ、違うと思うのっ」

横でミリーが小声で言ってくる。


「違う。僕と結婚、して欲しい、と言ったんだ」

エリオットは真剣な目でハルカを見ている。その綺麗な緑色の目にハルカをからかう様子は無い。

「……………………え、えええええっ!な、何で?!」


「まあ、まずは婚約ということになるけれど。ハルカは王族じゃないんだろう?なら、そんなに形式ばった事は要らないだろう」

エリオットは静かに続ける。ハルカは混乱した。

「ちょっと待って!一体何がどうしてそうなるの?!」

「前にも話したと思うけれど、僕達の国は大陸西側南方三国の内の一つなんだ。ここは山脈が途切れる場所で、魔物の侵入出現が多い。今回の試練の洞窟の件で、僕は自分の実力不足を思い知らされた。そして新たな脅威についても不安がある。国を守る為にはより大きな力が必要だ。今回あれに対抗できたのは君達だけだ。だから君に僕の国へ来て欲しい」

「あ、そういうことなんだ……。ごめんなさい。お断りします」

ハルカは深々と頭を下げた。


「……即答か。酷いな」

エリオットはため息をつく。

「私も前に言ったかもしれないけど、私は魔術を使えるようになって森の古王国を守りたいからここへ来たの。まだ私じゃ全然役に立たないけど……。私は森が大好きだから、あの場所に帰りたいの」

ハルカは試練の洞窟での失敗で、自分の甘さを痛感していたので、声が沈みがちになる。それでも精霊達の飛び交う美しい森の情景が浮かぶと、自然と笑顔になった。エリオットはハルカの笑顔を眩しそうに見つめた。


「なら、僕はまだ諦める必要はないな」

エリオットの言葉に、ハルカは驚いて聞き返す。

「え?何でそうなるの?」

「君にまだ決まった相手がいないのなら、僕のことを君の国より好きになってもらえれば、僕を選んでくれるだろう?それにどこにいても魔物を倒していれば、大きな意味では精霊の国を守ることにもなる」


(あれ?そ、そうなの、かな?)

ハルカは言葉が出ない。ミリーがハルカの隣で、今からでも席を外そうかとモジモジしているが、初めての求婚という体験に、混乱しているハルカには気遣う余裕がなかった。そしてエリオットは更なる爆弾を落とす。


「ああ、言い忘れていたけれど、僕は君のことを好きだよ。一生を共にしたいと思うくらいに」

「……っ!」

サラッと愛の告白までされたハルカの頭は、今度こそ真っ白になった。ちなみにこちらもハルカの人生初だった。ミリーは顔を真っ赤にして口を両手で押さえている。どうやら悲鳴を上げるのを何とか止めたようだ。


「努力家なところも、真面目なところも、それにあの時、僕達を命がけで守ってくれた、勇気のあるところも好ましいと思ってる。次は君を守れるように強くなってみせる。だから、もう少し考えてみて欲しい」

エリオットは言うだけ言うと、その場から立ち去って行った。


ハルカはへなへなとその場に座り込んだ。

(おばあちゃん、私プロポーズされちゃったよ。しかも)

「ちゃんと断ったのに……あれってどういう理論?」

「ハルカ、大丈夫?」

「……ミリー」

ハルカは助けてというようにミリーを見る。心なしか涙目だ。

「ありかも」

ミリーはハルカの横で考え込む。

「え?」

「だってハルカがエリオット様と結婚すれば、私もハルカといつでも会えるもの!」

「ミリー……」

ハルカはがっくりと項垂れた。







「ああ、そうだよね。こうなるよね。ハルカを知れば。時間の問題だった。ここはそういう場所でもある訳だしね。うん。で?どうするのリフィロ?」

少し離れた場所でハルカを見守っていたフラムとリフィロにもエリオットとの会話は聞こえていた。

「どう、と言っても、ハルカが決めることですし、それにハルカは断っていました」

リフィロはうつむいているため、前髪が影になってその表情を見ることができない。

「お前、呑気なの?それとも自信があるの?」

「自信なんてありません。ハルカがそう望むなら、仕方がないでしょう」

「へえ……」

フラムはやや目を細めてリフィロを見る。

「……ただ、僕はハルカを誰かに渡す気はありません。一番近くにいるのも、守るのも、僕であるつもりです」

リフィロは顔を上げた。目には強い意思の光が見て取れた。体からは白い冷気の陽炎が立ち上っている。

「!」

(自信ありまくりだねー。そうこなくちゃ、張り合いがないよね。)

フラムは嬉しそうに笑い、リフィロの背中をバンッと叩いて、

「さ、ハルカを迎えに行こう。早く立たせてあげないとね。女の子は冷やしちゃいけないんだってさ」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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