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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
花咲く湖上の研究機関
23/65

初めての魔法

来ていただいてありがとうございます。

 「じゃあ、ハルカさんこれを食べてみてね」

レイティは小指の先ほどの大きさの蜂蜜色の結晶のようなものを手渡してきた。

 「これは飴、ですか?」

 「ちょっと待ってください!ハルカに何を食べさせるつもりですかっ?」

結晶を持ったハルカの手首を掴んでリフィロが割って入る。声の強さに反してハルカの手を掴んだリフィロの手はとても優しかった。

 「ありゃー」

フラムが上を向く。

 「……おい……」

機嫌が更に悪くなったらしいライアーがゆらりと近づいてくる。

 「お前たちはここへ何をしに来た。魔術を高めるためだろう。俺たちは専門家だ。信じられないならさっさと出ていけ!」

 「ライアー先生っ!子どもたちを威圧しないのっ!」

レイティが一喝するとライアーはフンと言って再び壁際に戻った。

 「説明が足りなくてごめんなさいね。これは私の魔力の結晶よ。ハルカさんみたいに力の流れが分からない人は割とたくさんいるの。これを体内に入れてもらうとそれが分かるようになると思うわ。ただ、少し気分が悪くなるかもしれないから、それは覚悟しておいてね」

 「本当に危険はないんですね」

リフィロが念を押すと、壁際のライアーの周辺の温度が下がったようだった。

 「うふふ、本当にハルカさんが大事なのねぇ。青春ねぇ」

 「り、リフィロ、私魔法が使えるようになりたいの。やってみていいかな?」

ハルカは左手のブレスレットをリフィロに見えるように胸の前に持ってきた。

 「……わかった」

リフィロはそっとハルカの手を離した。


 ハルカは深く息を吸い込むと、蜂蜜色の結晶を口に入れた。結晶はすぐに口の中で溶けた。その瞬間、何かが体の中でゆっくりと動く感じがした。言いようのない気持ち悪さにハルカは思わずのどを抑えてしゃがみ込んでしまう。

 「ハルカッ」

リフィロの声が聞こえるがハルカは答えることが出来ない。レイティがそばにしゃがみ、ハルカの右手を取る。

 「ハルカさん、流れを感じて。体の中で流れているその力をそう、今胸の辺り、右肩へ、そう上手よ。そのまま右腕に、そして手のひらへ。そう、指先から外へ!」

ハルカの右手の指先から蜂蜜色の光が放出される。続いて白銀の光がものすごい勢いで放出された。

 「あ、あ、」

ハルカがどうしたらよいのかわからずに戸惑っていると

 「大丈夫よ。落ち着いて。そのまま手を握って。力を留めて体の中に循環させて……」

ハルカがコントロールに苦戦していると、左手のブレスレットが淡く光始めた。ハルカが再び右手を開くと白銀に輝く半透明の球体が現れた。よく見ると細い螺旋状のうす緑色の模様がある。

 (精霊王様が力を貸してくれてるんだ……)

ハルカはそっと立ち上がり、初めての自分の力の具現を見た。

 「これが私の力……?」

 「そうよ。良くできました!ちょっとお手伝いしてもらってるみたいだけど、きっとそれもあなたの力ね」

レイティが片目をつむり、微笑んで言った。

 「ハルカッ、何ともないのか?」

リフィロの声に答えようと振り向くと、何故かフラムがリフィロを羽交い締めしていた。

 「リフィロ、フラムどうしたの?」

 「んー、どうしたんだろうね……」

フラムが疲れたように呟いた。

 


 「で、その力の属性は何なんだ?」

先程とは打って変わって興味深げにライアーが近づいてきた。ハルカの右手の魔力を見つめている。

 「それは」

レイティは目を伏せた。ハルカもレイティの次の言葉を待った。

 「わからないわ!!」

レイティは自信満々で言い切った。

 「は?」

 「え?」

ライアーもハルカもリフィロもフラムも驚いていた。

 「だって、こんな力見たことないもの!浄化の力とか癒しの力に近そうに感じるけど……敢えて言うなら、新属性、ってとこね!」

 「……えっと、じゃあどんなことが出来るのかは……」

 「もちろん!わからないわ!これは研究のし甲斐がありそう!さすが精霊の国のお姫様ね!」

レイティの言葉にハルカは慌てた。

 「い、いえ!わ、私は……」

ハルカの言葉はここで途切れた。何故なら、リフィロがハルカの両肩を後ろから掴んだからだ。

 「彼女は僕たちの遠縁の子です。王族ではありませんが、僕たちの妹のような存在なんです」

リフィロはハルカに代わって説明した。

 「あら、そうなの?ごめんなさいね。でもとても珍しい力のようだから、少しずつ色々試していきましょうね。まずは力を安定して出せるようにしていきましょう。そこのライアー先生は力の制御の専門家だから、安心してね」

 「あの早速なんですが、これどうやって消したらいいんでしょう?」

ハルカが尋ねるとライアーは少し考え込んだのち、こう言った。

 「指先に意識を集中して、そこに空いている穴が閉じるイメージをしろ。いっぺんにが無理ならまずは親指から、そう次は人差し指、中指、薬指、小指……」

ハルカは言われた通りにイメージをしていった。なにか自分のとは別の力が後押しをしてくれるように力は弱まり、ついには魔力の球体は霧散していった。

 ハルカがライアーの顔を見て

 「先生が力を貸して下さったんですね。ありがとうございます」

 「…………誘導はこれきりで大丈夫のようだな。どんな作用があるかはわからないが、まずは力の出し入れとコントロールだ。あとは反復練習あるのみだ」

 「はい。頑張ります。ありがとうございます!」

 (先生達ってすごい。私も魔法が使えるようになれるかも。ううん絶対頑張る!)

ハルカはキラキラした目で教師二人を見つめた。

 


 ハルカとリフィロとフラムがレイティの研究室を出ていくと、こらえきれないというようにレイティが叫んだ。

 「なに?何?ナニ?何なのぉー?あの力はぁ?」

 「落ち着けよレイティ」

 「いやあー!ここで教師やってて本当に良かったわー!」 

 「嫌、なのは、とりあえず俺、なんだが。胸、倉を掴む、のはやめ、てくれ。あと、声、がデカイ……」

レイティにガックンガックンと揺さぶられながら、ライアーは抗議するがレイティには聞こえない。

 「あの子ももちろんだけれど、王子様達二人もよ!一人は氷属性、もう一人は炎属性よね。魔術を発動していないのに魔力を纏い続けてるってどういうことぉ?なんか鳥っぽいし猫っぽいし……」

レイティはここで一旦黙ってしまった。開放されたライアーは落ち着いてくれたかと、ホッとため息をつく。

 「よくわからないが、あいつらは精霊魔法の使い手だ。精霊が関係してるんじゃないのか?あの女子も何か別の力が働いているようだし」

 「せいれい……精霊っ!うわああ!私も見たいぃ!何かそういう魔術道具無かったかしらっ!今度技術開発部に聞いてみよう!ね、貴方もそう思うでしょ?」

 「……手」

ライアーは心なしか頬を染めてそっぽを向いていた。

 「手?」

レイティは不思議そうに自分の手を見る。今度は、いつの間にかライアーの右手を両手で握り胸に抱きこんでいた。

 「キャーッ!ごめーんっ」

真っ赤になったレイティはパッと手を放して自分の頬を抑えた。

 「……それにしても、あの王子様達どうして学園に来たのかしら?もうあんなすごい力を持ってるのにね」

やっと冷静になったレイティがふと疑問を口にする。

 「さあね、国際交流ってやつなんじゃないの?」

 「そっか、お嫁さん探しかもね」

何やらまた夢見るような顔になったレイティに半分呆れつつも、彼女が楽しそうにしているのを見たライアーは彼には珍しく表情を緩ませた。そして、


 「…………遠縁ねぇ」

ライアーはハルカたちが退出していったドアをちらりと見てつぶやいた。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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