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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
花咲く湖上の研究機関
22/65

初めての呼び出し

来て下さってありがとうございます。

「放課後、職員室へ来るように」


 初めての授業の時、ハルカは人生で初の言葉を教師からもらってしまった。多少、ショックは受けたものの仕方がなかった。中途の編入生として、「あの有名な」精霊の国から来た招待生であるのに、魔術(ここでは魔法が魔術と呼ばれる)が全く使えないのだから。ハルカはため息をつき席を立った。そして身に着けた白い制服のしわをそっと伸ばすと教室を出た。生徒の多くは学園で支給される白い制服を着用している。ただ、制服の着用は義務ではないため、私服を持ち込む生徒もいる。その殆どが周辺国の貴族達だ。ハルカのクラスのそういった貴族たちの何人かが意地の悪そうな顔をしてハルカが出ていくのを見ていた。


 森の古王国がある大陸には中央を南北に走る山脈がある。ここはその西側中央部に位置する広大な湖の島にある魔術の研究機関だ。ここは当初、魔法の研究機関として魔法使いたちが集まってより強い魔法を使うための研究を行っていた場所だった。しかし時が経ち魔物が現れるようになると、対魔物戦闘に力を入れ始め、現在では周辺国の援助を受けながら各国に出現した魔物の討伐を行うようになった。魔法はいつしか魔術と呼び名を変え、魔術の覚醒方法やより強い力を出す方法、剣やその他の武器と組み合わせた戦闘方法、魔術道具の研究がされ、成果を出していた。そしてより多くの才能を見いだすために「学園」を創設し各地から可能性のある人間を集めることにした。


 「心配しなくて大丈夫よ。ここはそういう子を目覚めさせるのも目的の場所だから」

職員室に行ったハルカは担任教師に連れられて、何やら研究室の様な場所へ来ていた。たくさんのの本や使い方のわからない様々な道具があちこちに乱雑に置かれている。ハルカに話しかけたのはこの場所の教師の服に身を包んだ優しそうな女性だった。学園の教師たちは各々研究室が割り当てられていた。ここはこの女性教師の研究室のようだ。

 「で、君たちはいったいどうしてここに?」

 「彼女の保護者なので」

 「ん-、僕も今のところは保護者その二です」

ハルカの後ろには当然というようにリフィロとフラムが立っていた。彼らは二人ともハルカとは別のクラスになってしまったが、授業後に顔を合わせた際ハルカが呼び出されたことを説明すると、二人とも一緒に行くと言って譲らなかった。リフィロは眉間のしわを深めて、フラムはその目に好奇心を浮かべて。

 リフィロとフラムに不機嫌な視線を向けたのはハルカのクラスの担任教師の男性だった。

 「あの、すみません、ライアー先生……」

ハルカが話しかけた担任教師は、はあっとため息をつき頭を振った。癖のある灰色の髪が揺れる。

 「まあ、いい。とりあえず始めてくれ。レイティ」

 「わかりました」

レイティと呼ばれた女性教師はドンッと近くの机の上に一抱えもある何かの鉱物のクラスターを置いた。それは透き通った石の集まったものでとても重そうだった。華奢に見えるが意外と怪力の持ち主のようだ。

 「じゃあ、ハルカさんここに手をかざしてね。そうそれでいいわ。」

ハルカが右手をかざすと、鉱石が白銀の光を放ち始める。そして部屋中に広がり視界がきかないほどの強さで輝きだした。


 「!もういいわ!手を放して!」

レイティの声にハルカが慌てて手を引っ込めると、光は急速に収まっていった。一同はしばらく声も出なかった。

 「これはまた……。すごいわね。これね、魔力量と魔力の質を見る鉱石なのよ。こんなの見たことないわ。ハルカさんあなた本当に魔術が使えないの?」

 「あ、はい。使い方が分からないんです」

 「うーん、ちょっと診せてね」

そう言うとレイティはハルカの頬を両手で挟んだ。ハルカは戸惑ったが何とか動かずにいた。後ろでフラムが

 「ハイハイ落ち着いてねー」

と小声で言っていたが、ハルカは後ろを振り向くことが出来なかった。レイティの薄茶色の目が不思議な光を帯びる。

 「なるほどね」

しばらくハルカを見ていたレイティはそっと目を閉じふうっとため息をついた。

 「何かわかったか?」

ライアーは壁にもたれかかって腕を組み、質問してきた。

 「ええ、とても強力な守護がかかっているわ。それで力が外に出せないようね」

 (確か、精霊王様にもそんなことを言われた気がする……)

ハルカは精霊王との夢での出会いを思い返していた。

 「ただ、部分的に守護が弱い部分があるから、そこからなら力を出せるようになると思うわ」

 「え?魔法が使えるようになるんですか?」

 「ええ、目と鼻と口それと、右手の指先ね。どこがいい?」

 「どこ?」

 「口だと、まあ呪文とか、呪歌を使うことになるかしら。目とか鼻とかだとそこから力を噴射……」

ハルカは目からビームを想像してしまい、遮るように

 「右手っ、右手でお願いします」

と急いで言った。呪文も歌もちょっと難しそうだと思ったのだ。

 「まあそれが妥当なところよね。魔術道具に力を乗せることもできるし……」

レイティは考え込むように言うとハルカに向かってにっこり微笑んだ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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