表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深い森の古王国  作者: ゆきあさ
深い森の古王国
19/65

森の灯り祭り 星と光

来てくださってありがとうございます。

「すごい星空……」

 この世界にも星、月、太陽がある。人もたくさんいる。ハルカのいた世界とそんなに変わらないように見える。けれど、やっぱりそれは違った。

 ハルカは喧騒からそっと離れて、皆の声や音楽が遠くに聞こえてくる泉のほとりに来ていた。ここは精霊がちらほらと飛び交っているけれど、暗くて空気がやや冷たく感じられた。ハルカは近くの岩の上に膝を抱えて座り込んだ。

 (もうそろそろフィリアの舞が始まるかな?そういえばフィリアって日本のどこに住んでたんだろう?案外近くに住んでた人だったりして……。今度詳しく聞いてみようかな。……でももし辛い記憶だったら……)

 そんな風に考えていたら、大好きな祖母の顔や自分が暮らしていた祖母の家、大好きな小説やゲーム、小物がいっぱいの自分の部屋や仲良しの友達、高校の制服など、元居た世界のあれこれが次々と浮かんできた。今のハルカには手が届くことのない遠い世界だ。唯一、この世界に一緒に来た紙袋の中には図書館の本とともにスマートフォンも入っていたが、壊れてしまったのか電源すら入らなかった。だから、写真を見て懐かしむことすら出来なかった。

 (お母さんとお父さん、心配してるかな?私が消えちゃったこと知ってる?私、これからどうしたらいいんだろう。このままここにいていいのかな?多分ダメとは言われないだろううな。でも、帰らなくていいのかな?ううん、そもそも帰れる?帰る方法とかってあるの?どうして、私どうしてここにいるんだろう……。私は……)

ぐるぐると考えが回る。見上げた星空に見慣れた星座を探すけれど、見つけることはできなかった。


 「私、帰りたい……の?」

ハルカがそう呟いた時、カサリと葉擦れの音がした。驚いて、そちらの方を見ると、精霊達が何故か団子のように集まって転がり出てきた。

 (遊んでるのかな?ふふっ、何か面白いな。精霊さんが見えるってことは、私にも魔法が使えるってこと?フラムも言ってたし。もしもそうなら、使えるようになりたいな。せっかく異世界に来たんだし。でも、どうしたらいいんだろう……)

 ハルカの思考はまたぐるぐる回る。ただ、考えても答えは出なかった。

 (帰りたいかどうかは分からない。そもそも帰る方法があるかも分からない。魔法の使い方も分からない。あー、ないないばっかり……)

 さっきの精霊達がふわふわとハルカの周りに集まってきた。ハルカは、ほのかな光たちになんだか励まされているような気がした。一度は落ち込みかけたが、来てしまったからには仕方ないと思い直した。

 (とりあえず、ここで生活していけるように、お城かどこかで働かせてもらおう。バイトとかまだしたことないけど……高校生になったらするつもりだったし、きっと大丈夫!うん。国王様も頼みごとしていいって仰ってたし)

 ハルカはヨシっと両手を握りしめてから、立ち上がった。その時ちょうど遠くで歓声が上がり、今までとは違う曲調の音楽が流れ始めた。

 「あ、フィリアの舞が始まったのかも……早く見に行かなきゃ」

ハルカは光の溢れる広場へ歩いて行った。


 

 城の前の広場には特設の舞台があり、その上ではフィリアがとても美しい衣装で舞っていた。精霊達が付き従うように飛んでいて、フィリアの手や体や衣装のヒラヒラした部分が光を放っているように見えた。また、手には鈴のようなものがたくさんついた小さな楽器を持っていて、曲に合わせてシャラン、シャラランと綺麗な音が響いていた。

 ハルカは広場の端に立って後ろの方から舞台を見た。

 (フィリア、とってもきれい……!)

フィリアの波打つ金色の髪は、時折白銀に見えて精霊達の光とともにキラキラと輝いていた。ハルカは優美な舞の動きとともにその美しさに見惚れてしまっていた。だからしばらくはリフィロが隣にやって来たことも、その表情がやや沈んでいたことにも気が付かなかった。リフィロはしばらくハルカの顔を見つめていたが、軽く目を伏せると舞台の方へ顔を向けた。

 

 フィリアの舞が終わり、楽曲が止むと大きな拍手が起こった。フィリアが左手を胸に当て、右手で鈴を振って答えると更に大きな拍手と歓声が沸き起こる。ハルカだけでなく皆、フィリアの舞に魅了されたようだった。

 舞台上に国王と王妃、そしてクレネスがそれぞれ晴れ着姿で現れた。そして精霊王が光とともに姿を現すとひときわ高い歓声が上がった。まず国王が語り始めた。

 「久方ぶりにこうして皆で楽しい時間を過ごせたことを喜ばしく思う。さて、この場を借りて我が国の第三王子クレネスと今宵の舞い手、フィリア٠シロンの婚約を発表する」

国王の言葉に再び大きな拍手と歓声が起こる。クレネスはフィリアの手を取り、二人は微笑み合いながら一緒に前に進み出た。

 (わあっすごいっフィリアが王子様と婚約っ?小説みたい)

ハルカも笑顔で小さく拍手する。そして二人が後ろに下がりみんなの声が収まると国王は続けた。

 「それでは、復活なさった精霊王様からお言葉をいただく。精霊王様お願いします」

 「今宵の舞も素晴らしかった。そして二人ともおめでとう。皆、長きに渡り苦労をかけた。だがもう遅れは取らぬ。森はもう枯れない」

 精霊王の言葉の後、一斉にたくさんの精霊達が集まり、舞踊るように飛び交う。その後人々は持ってきていたランタンの灯りを解き放った。ランタンの魔法の光はゆっくりと空へ上っていく。辺りに一瞬で光が乱舞し、とても幻想的な光景になる。

 「わあっきれいっ」

ハルカも思わず声をあげた。その時、右手がふわっと温かくなった。

 「リフィロ?」

見ればリフィロがハルカの手を繋ぎ、光の乱舞を見ていた。ハルカは顔に熱が上がったが、ハルカが何か言う前にリフィロがハルカと繋いだ手に力を込めた。

 「守るから。僕が必ず守るから。ハルカが……」

 舞台ではちょうど精霊王が光とともに消えた瞬間で、精霊王を称えて歓声が上がっていた。だから、ハルカにはリフィロの言葉の続きを聞き取ることが出来なかった。ただ、幻想的な光の中リフィロがハルカに微笑んでいる。

 (なんてきれいな人……きれいな世界……)

 この瞬間、ハルカはこの世界へ来たことを心から喜べたのだった。


 





 城のハルカの部屋。隅に置かれた紙袋の中。ハルカのスマートフォンの画面が光った。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ