目覚め
来ていただいてありがとうございます。
「大きい木だね、おばあちゃん」
「そうね。これはご神木なの。もうずっと昔からここで見守ってくださっているのよ…………」
幼い自分と、祖母の姿を見てる。やがてそれらは薄れ、暗闇の中蛍が飛び交う。蛍は様々に色を携えて大きく、小さく、明滅を繰り返す。
(ここは……そうだ精霊の森)
ハルカが目を開けると眩しい光が飛び込んできた。太陽の光かと思ったが、それは精霊の光だった。本来は淡い光なのだが、起きぬけに目の前に居たのでハルカにはかなり辛かった。
「うー」
ハルカが思わず目を瞑ってグーの手で擦っていると、
「ハルカ……?」
リフィロがハルカの部屋のドアを開けて立っていた。
「目が覚めたのかっ」
駆け寄ってきたリフィロに、ようやく目を開けたハルカは起き上がると
「おはよう」
と言いかけたところでいきなり抱きしめられた。
「良かった……!」
くどいようだが、ハルカは起きたばかりだ。だからきちんと頭が働いていなかった。しばらく状況が理解できずにそのまま抱きしめられ続けてしまったのだ。フィリアとエレが部屋に入ってくるまで。
その後はお察しの通りである。リフィロはフィリアに散々からかわれた。あろうことかエレにもだ。王族の権威はどこへ行ったのだろうか。最終的にはリフィロは
「家族を心配して何が悪いんだっ」
と言い捨てて部屋を出ていってしまった。ハルカはと言えば、恥ずかしさのあまり掛布団を被って出てこられなかった。火照った頬を手で押さえていると左手に違和感を覚えた。見れば、見慣れないブレスレットがはまっている。布団から出て、ハルカはそれをしげしげと見つめた。緑がかった金色の蔦の模様の細いブレスレットで、深い緑色の石がはめ込んである。
「きれい……」
「そうだろう!そうだろう!それは我との契約の証だ。大切にするがよいぞ!」
突然、頭の上から声がした。ハルカが驚いて見上げると、精霊王が浮いていた。彼の周りには精霊たちが飛び交っている。とても美しい光景だった。
「……そういえば、精霊さん達が外にいる……」
「精霊王様が復活なさったから、森はひとまず大丈夫よ!」
フィリアはベッドの端に頬杖を付いて嬉しそうに話してくれる。
「森にも以前のようにたくさんの精霊がいますよ。ハルカ様は体調はいかがですか?」
エレは心配そうに尋ねる。
「うん、何ともないみたい。体もとっても軽いです」
「だから言ったであろう!ちょっと、ほんのちょーっと力を使いすぎただけなのだ」
そう言うと精霊王もまた精霊たちを連れて森へ帰って行った。ハルカの様子が気になり毎日城へやって来ていた、とエレが話してくれた。
ハルカは、湯を使わせてもらい、軽く食事をとった、フィリアも同席し、エレと共に色々話をしてくれた。
あの後、精霊王がハルカと共に魔物を一掃したあの時から、十五日程が過ぎていた。あれからハルカはずっと眠り続けていたのだ。調子に乗った精霊王が鬱憤をはらすべく、力を使いすぎ、ハルカの体に負担がかかってしまったのだった。精霊王はリフィロとフィリアに怒られてしばらくはシュンとしていた。が、ハルカが大丈夫だと分かると、二人は怒りを収めたのですぐにいつもの調子が戻った。その様子を周りの人々はハラハラしながら見ていたと言う。
精霊王が目覚めて、精霊たちもまた森に姿を現すようになり、森は以前の様子を取り戻しつつあった。王国の人々も精霊王の目覚めをとても喜んだ。討伐部や浄化するものたちも、もちろん胸を撫で下ろした。しかし魔物の出現が無くなった訳ではなく、まだ森の外で討伐を続けている。ちなみに、魔物が押し寄せたあの時、討伐部以外にも魔法を使える人々が森を守ろうと戦っていた。なんと国王も戦闘に出て、後で王妃に散々怒られたそうだ。
フィリアは浄化の力だけでなく、癒しの力にも目覚めており、けが人の治療に当たり、しばらくは大忙しだった。今はまた、魔物の討伐にも出ている。
「…………」
「フィリア?」
不意に黙り込み、唇に人差し指を当てて考え込んだフィリアは唐突に手をポンッと打って
「そうだ!ハルカ、今夜二人だけでパジャマパーティーしましょ!」
「え?」
驚くハルカにフィリアはにっこりと微笑んだ。
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