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深い森の古王国  作者: ゆきあさ
深い森の古王国
10/65

それぞれの戦い フィリア

来ていただいてありがとうございます

三話同日更新します

よろしくお願いします

 「っ、これではキリがない」 

 「何だって急にこんなことが…」

 「早く倒さねば、もしも共食いが始まったら」

 今までに経験したことの無い数の魔物達の襲撃を受け、王国の討伐部は必死で戦っていた。

 森へ押し寄せた魔物は結界に阻まれて森の周囲に群がっていた。ほとんどが人の大きさを超えることはなく、ハルカが最初に遭遇したムカデもどきのような大きさの魔物は数えるほどだった。

 ただ、魔物の数が尋常ではなかった。数体の精霊と共にフィリアがたどり着いた戦場ではクレネスとヴァン、そして数人の魔法使いと浄化するもの達が苦戦していた。結界に群がる魔物を後ろから倒していくのだが、ほとんどの魔物は何故かこちらに向かって来ることはない。ただ、中には攻撃を受けると敵意を向けて来るものもいて、そういった魔物をそれぞれのチームが倒していく。その中でもやや飛び抜けた大きさを持つトカゲのような魔物とクレネスのチームは相対していた。

 「クレネス様っ」

 フィリアは叫ぶと力を放つ。目の前にいた数十匹の魔物が消滅した。消えた魔物は小さい固体ばかりとはいえ、フィリアの力は凄まじいものだった。フィリアの周りでは小さな精霊の光が飛び回っていた。彼女に契約精霊はいないはずだが、どうやらフィリアを気に入って力を貸してくれているようだ。彼ら(彼女ら?)に微笑むと、フィリアは小さく「ありがと」と言った。

 「フィリアッ?、どうして」

クレネスが驚いて振り返る。

 「だってクレネス様、絶対に戦いに出ると思ったんですもの」

言いながら、フィリアは浄化の力を放つ。再び、数十匹の魔物が琥珀の砂を巻き上げて消えた。

 「すごい」

浄化するもの達の中から感嘆の声がもれる。

 「ハルカはどうしたの?」

クレネスは水の刃を放ち魔物を何体か薙ぎ払う。すると浄化するものが消えなかった魔物に止めをさした。

 「リフィロ様がいらっしゃるから大丈夫です!」

言いながら、再び数十の魔物を消し去る。残ったのは数匹の比較的大きい魔物と先程からクレネスが戦っていた大トカゲだった。大トカゲはスッと動きを止めた。まるで何かを考えているようだった。が、次の瞬間周りの魔物達に噛み付き、吸収し始めた。

 「しまった!」

クレネスが焦るがすでに遅く、大トカゲは近くの魔物を吸収し終えると黒い光を放つ。フィリアやヴァン、クレネスが攻撃するが、光に阻まれて届かない。そして、彼らの前には禍々しい橙色と闇色の巨大なドラゴンが現れていた。

 ドラゴンは炎の暴風を吐き出した。フィリアに向かって。どうやら結界よりも彼女に狙いを定めたようだった。だが、それに気づいたヴァンとクレネスが風の盾と水の守りで庇う。

 「急にどうしたのでしょうか?」

 「ああ、結界ではなくフィリアに……。邪魔者を排除しようとしてるようだね」

 「知能を持ったということでしょうか」

 「わからない。が、かなりまずい状況だね」

 ヴァンとクレネスはドラゴンの攻撃を避けながら、攻撃を加える。ドラゴンは次の瞬間、討伐部の魔法使いの一人に襲いかかった。が、すんでのところでヴァンの風の刃がそれを止めた。一同に緊張が走る。

 「兄上……」

 「我々は餌として認識されたようだ」

毒々しい橙色の目がこちらを凝視していた。


 

 戦いは膠着していた。何とか人的被害を出さずにはいるが、それもいつまで続くのか分からなかった。

 「兄上、このままでは」

 「うん、皆疲れてきている。そろそろ撤退を考えた方がいいかもしれないね」

ヴァンとクレネスが短く言葉を交わす。

 進化(?)したドラゴンは強く、後からやって来た魔物をを吸収しては力を強めていく。もちろん魔物を倒し続けてはいるが、間に合わない。その時、森を守る結界が揺らいだ。それに気を取られた魔法使いの一人が足元をふらつかせた。ドラゴンはその隙を見逃さなかった。彼との距離が近かったことも禍した。襲いかかるドラゴンを前に動くことのできない彼は目を瞑った。クレネスは水の防御を展開する。だが、ドラゴンはいきなり方向を変えクレネスに向かってきた。咄嗟のことにクレネスの対応が遅れた。ヴァンや他の者達も最初の標的だった魔法使いに気を取られており反応できない。ドラゴンは炎の暴風をクレネスに向けて吐き出した。クレネスは何とか距離を取ろうとするが、足が不自由なため早く動くことができない。間に合わない、とその場の誰もが思った。

 「絶対にさせないんだからっ」

クレネスの前に立ち、両腕を広げてフィリアは叫んだ。

「フィリア!ダメだ!」

クレネスはフィリアを守ろうと手を伸ばした。だが、炎がフィリアを襲うことはなかった。

 「……?」

 フィリアは浄化の能力者だ。結界でも守護の魔法が使える訳でもない。だが、これはどういうことだろうか?ドラゴンの炎をフィリアから放たれる白い光が打ち消している。それどころか、炎ごとドラゴンの体を光が包み込み、その存在を打ち消そうとしていた。

 「炎を、いや魔力を消しているのか?」

クレネスは驚いて目を見開いた。

 「許さない!ここは大事な場所なのっ。みんながいて、クレネス様がいて。そうじゃなきゃダメなのっ。もう誰も何も奪わせないわっ」

精霊たちがフィリアの叫びと高まる力に呼応して、彼女の中に入っていった。クレネスはフィリアの背中に、透き通った白い羽を見た。フィリアの白金の髪が力にあおられてゆっくりと波打ち、輝く真白に染まる。フィリアの光が辺り一帯を包み込み、変化がもたらされる。魔物は浄化され、光の粒に。討伐部の者達は、体の傷が癒され、疲労が消え、消耗した魔力などが回復した。そして最後にドラゴンはその首を視線を空に向け、消えていった。

 「……これは、この力は」

 「一体何が起こったんだ」

ヴァンや討伐部のメンバー達が茫然とする中、フィリアから放たれていた光が消え、倒れそうになる。クレネスが慌てて抱き止めるとフィリアは気を失っていた。

 「フィリア、君は……」

 いつの間にかフィリアから出てきていた精霊たちがサラサラサラっと澄んだ音を立てて飛び回っている。

 「……奇跡だ」

誰かが呟いた声に、歓喜の波がその場の全員に伝わった。

 「待て!喜ぶのはまだ早い。他の場所でもまだ戦いは続いているんだ。」

ヴァンが言うと、一同の表情が引き締まった。

 「いや、もう大丈夫かもしれないよ」

クレネスが涙を堪えるように空を見つめて呟いた。




「皆、よくぞ耐えた!」

遥かな上空から朗々たる声が響いた。とても懐かしくて、そして大切な声が。


 


 

ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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