飯だ!! 飯だ!!
二人の男について歩くこと数分。
なにやら、飲食店が並ぶ場所へとたどり着いた。
「やっぱり俺の勘は正しかったな。見るからに飯食いたそうなオーラがぷんぷんしてたぜ」
これで俺も飯にありつくことができる。さてと、記念すべき最初の異世界飯はなんにしようかな。どんな料理があるのか想像もつかない。できれば俺でもおいしく食べられる料理があってくれ。
この男とたちにはもう用はないので俺はここまで案内してくれた男たちに別れを告げ、新たに飲食店を探す道へと歩みを進めることにした。
周囲を見渡すと、たくさんの飲食店が立ち並んでいるのだが、なんせ異世界ということもあり、看板の意味がわからない。正しくは女神さまのおかげで読めるには読めるのだが、読めたところでなんの料理か見当もつかないのだ。
ボボスーカ、ペイコン、カイテヨンとこれは肉料理なのか、それとも魚料理なのかすらわからない。まさかのこんなところで大博打を行わないと行けないのか。唯一ライスと書かれた看板があるのだが、これはこれで怪しい。そもそも看板にご飯ってでかでかと書いてある店とかあるのか? 絶対これは何か別の料理を指しているのだろう。でも気になるな……いやいや、俺はこんな単純な罠には引っかからないぞ。
気を取り直して、何とか意味の分かりそうな店を探そう。
その後も歩き回り、あ、これならいけるっていう店を探しているが、やっぱりどこもなんの料理かわからない。こうなってくると、あのライスしかなくなってくる。ていうか、あのライスって店が気になっていて店探しに集中できていない。もう今日はあえて、そうあえてライス行ってみることにするか。このまま探しても腹が減るだけの気がする。
覚悟を決め、俺はライスの店へと向かった。
店の前に着いたのだが、看板の主張がはげしいことなんの。ほんとにライス!! って感じだ。とにかく大きい看板に大きく文字を書いてみましたって印象を受ける。さぞかし自信のあることだろう。
「よしっ、もうここに決めたんだ。ぐずぐずしてないで入ろう」
店の前で少し悩んでしまったが、ようやく決心が着き、店へと入った。
「いらっしゃい!! 兄ちゃん一人かい?」
入るとほとんど同時に元気のいいおじさんが歓迎してくれた。
今、のれんをくぐった瞬間とほぼ同タイミングだったぞ。このおじさんどんな反射神経してるんだよ。それに気配察知が達人の域なんじゃないか?
「……あ、一人です」
「あいよ。それじゃあ、カウンターに座ってもらおうか。こっち来いよ」
厨房から手招きされ、目の前の席へと誘導された。
ちょっと、圧に押されてきょどってしまったが、断じてこのおじさんの圧に負けただけで、毎回こんな調子ではないことを明言しておこう。いつもなら、普通に返事くらいはできるもん俺。
あれ? 客が一人もいないぞ。やばい、これ選択ミスした可能性が……。
とはいってももう入ってしまったので今更間違えて入りましたなんて言う勇気は俺にはない。でも待つのは好きじゃないし、これはこれでありだろう。そうに違いない。女神さまが待つのが苦手な俺を奇跡的に今日だけお客さんがいなかったこの店に導いてくれたんだ。
「ほい、メニュー。うちはどれも美味いからじっくり選んでくれよ」
「ありがとうございます」
軽く現実逃避していた俺におじさんはメニュー表を渡してくれた。
なになに? ライスにメガライスにメガトンライス? もうこれ俺の感覚からしたら、普通のご飯に大盛りご飯に超大盛ご飯にしか変換されないんだが……一体これの何がちがうんだ?
「あの、このライスとメガライスって何が違うんですか? どっちも美味しそうだから悩んじゃって」
「おうおう、わかってるね兄ちゃん。それは、量が違うんだ。普通のライスは一人前でメガライスは二人前ってところだな。まあ、ちょっと若いころに勢いでメニュー名つけちまってな。それ以来うちはずっとこうなんだ」
俺の予想は当たってたのか。それじゃ、このメニュー表は2,3ページ使って量が違う同じものを書いているんだな。一つのページにまとめてくれよ見づらいわ。
「そうなんですね。若い時はなんか勢いでいろいろやっちゃいますよね。俺もその気持ちわかります」
「まあ、特に気にしないでくれ。俺も今になっちゃ恥ずかしくて変えようかと思ってるくらいだ」
ひとまず、このライスシリーズは置いといて、次のページも見てみようかな
「あれ?」
俺がページをめくると、メガトンスマッシュライスの後ろのページからは白紙だった。
「おじさん、すいません。このメニュー表途中までしか書かれてませんよ。きっと、ミスですね。違うものをもらってもいいですか?」
「いや、ミスじゃねぇよ。うちのメニューはどれもそうなってる。まだ、新メニューは開発中でな。いつでも追加できるよう、ページだけは用意してるってわけだ」
やっぱり変な店だったぁーー!! 女神様が導いてくれたとか言って誤魔化してたけど飯時に客が一人もいないのは絶対おかしかったんだ。
「それじゃあ、今はまだこのライスしかないってことですよね?」
「ああ、俺も毎日のように新メニュー開発に寝る間を惜しんでとりかかってるんだがな。俺が自信を持ってお客様に提供できるもんって納得できねぇんだよ。そこそこ美味いじゃダメなんだ。信じられないくらい美味いを目指してんだよ」
これはこだわりが強い系の頑固店長だ。そりゃメニューが一つしかなくて長い間やってればこの町の人たちも飽きるわ。
「最近はめっきり人も来なくなってな。全員が全員、口をそろえて言うんだよ。美味いけど食いすぎて飽きたって。俺のライスは飽きに負ける程度なのかって絶望もしたさ。だがなぁ、きっとみんなまた食べたくなって戻ってきてくれるはずだ」
「そうですよ。また食べたくなったら自然と客足も戻りますって」
なんで俺はこのおじさんにこんな熱く語られてるんだろう? 腹減ったから早く飯食いたいんだけが……でもおじさんも一生懸命頑張ってるんだし話ぐらいは聞いてあげてもいいかな。
「あんがとよ。こんなに親身になって話を聞いてくれたのは兄ちゃんが初めてだ。ほかの客たちなんて店に客が一人もいないのを確認したらそのまま帰っち待ったりするんだぜ? ひでぇ話だよなぁ」
すいません。俺もそれは考えちゃいました。
「まったくですね。それじゃあ、俺はこのメガライスでお願いします」
「おお、メガライスだな。そうだ、兄ちゃんには特別サービスでメガライスの値段でメガトンスマッシュライスにしてやるよ。久しぶりに話を聞いてもらった礼みたいなもんだ。遠慮せず食ってくれ」
そういうと、おじさんは忙しそうに料理に集中した。
フライパンをブンブン降っては時折、火が燃え上っている。なんだが、この光景見たことあるような。てかメガトンスマッシュライスって何人前なんだよ。俺、そんな大食いじゃないから食える気しないんだが……厚意は無駄にできないから頑張るだけ頑張ってみよ。
「へい!! お待ち!!」
俺の目の前に出てきたのは大食いチャレンジにでも出てきそうなほどの特盛りチャーハンだった。




