真実なのですよ
「ふんふふーん。ふふーん」
気が付いたら、いつもはやらない鼻唄なんか歌いながら、帰り道を歩く。
今日は昨日の倍近い稼ぎにさらには一体多くゴブリンを討伐しているのだよ。そう考えただけで気分がアゲアゲのウキウキだ。もしかしたら、服買ってもお金余るんじゃないのか?
普通の宿で一泊銅貨五枚なんだから、服の一枚くらいで銀貨を使うなんてことは流石にないだろうし、ひとまず一式そろえておけば今の服と合わせて2セットになる。そうなればセイラちゃんに洗濯してもらえば無限ループの完成だ。服のガタがくるまでは当分このサイクルで行けるだろう。
「よっしゃーー!! 急いで換金して買い物だーー!!」
さらに気分を上げた俺は残りの帰り道をダッシュで走破した。
「ぜぇ、ぜぇ……調子にのりすぎた……吐きそう」
ハイになっていて気が付かなかったが、町に入ったとたん疲れだ津波のように押し寄せて来た。
マジでやばい、俺は本物のあほだ。なんでこんなになるまで走る必要があるんだ!? くそ、しばらくここで休憩しよう。
町に入ってすぐの路地に座り込んでいるのでかなり目立ってしまっている。さらに、走って短縮した分の時間をここで座り込んで消費してしまっていると考えたら何とも言えない気分になった。
「はあ、そろそろ動けそうだな。まずは冒険者ギルドに行くとするか」
心配そうな視線や危ない人を見る視線を耐え抜き、体力を回復させた俺は、ひとまず冒険者ギルドを目指した。
「あれ? もう帰ってきたんですかマサタカさん? 諦めるにしてはちょっと早すぎると思いますが……でも危険を感じたら撤退するように言ったのは私ですよね。よく無事に帰ってきました。偉いです!!」
「なんで、俺が諦めて帰ってきた前提で話してるんですか? しっかりゴブリンを討伐してきましたよ」
「またまた、御冗談を。マサタカさんは昨日冒険者になったばかりの駆け出しですよ。それに、武器も持たず手ぶら、ゴブリンをこの短時間で討伐できるはずがないじゃないですか」
完全に逃げ帰ってきたと思われている。確かに俺は武器も持たずに討伐クエストに行ったあほだし、見るからにひょろくて弱そうだしな。そう思われてもしょうがないのか?
「それじゃあ、証拠を見せますよ。これ冒険者カードです。見てみてください」
「そんなほんとなんですか?」
俺の冒険者カードを手渡すと、お姉さんは機械にかざし確認する。
「ええーーー!! ほんとに討伐してるんですか!? それに目標数よりもなぜか1匹多く倒してますね」
「ほんとだったでしょ。1匹多いのは最後に3匹同時に遭遇して戦闘になったからです。目標の討伐数もちゃんと見ていなかったので後で見て気が付きました」
「3匹同時に相手をしたんですか!? 武器も持たずに!? なんでそんな危険なことしたんですか?」
だって1匹目のゴブリン楽勝で倒せたから行けそうだなと思いましたなんて言ったら怒られるか。成り行き上しょうがなかったとか誤魔化しとくか。
「すいません。3匹同時に現れちゃって、逃げる訳にも行かず無我夢中で戦ってたら勝ってました」
「普通そう簡単には行かないんですけどね。もしかして何か隠してませんか? 誰かに頼ったとか……今なら正直に言えば怒りませんよ」
誰に倒してもらってもカードの討伐数に反映されるのか? てっきり自分が倒したモンスターだけがカウントされるもんだと思ってたな。
「そんなせこい真似してませんよ。俺がこのこぶしで戦って勝ったんですから」
「そうですよね。冒険者カードに記載されているからにはそれが真実なのでしょう。誰に弱らせてもらってとどめを刺すなんて現実的じゃありませんよね。疑って申し訳ありません。ちょっと前例のないことで私も驚いていたようです」
「わかってもらえればいいんです。俺も行きの道でシャドーボクシングをしながら行ってたんできっとその効果です」
やっぱり冒険者カードのカウントを誤魔化すの難しいんじゃんか。それなら最初から信じてくれよ。
「シャドーボクシングしたくらいでモンスターを倒せるとは思いませんが、マサタカさんはもともと強かったということですね。これは我がギルドにも期待の新人が現れたと言ってもいいのではないでしょうか? よろしければギルドマスターに紹介しましょうか?」
「いやいや、そんな俺なんて全然大したことないですよ。もっと功績を上げることができたらその時はよろしくお願いします」
「そうですか……それではこれからも頑張ってくださいね。今回の報酬は上乗せして銀貨4枚です。よく頑張りました」
おお、少し下の難易度のクエストでコボルトの討伐クエストと同じ額を稼いじゃったよ。単純にうれしいな。
こうやってクエストを達成しても大目にモンスターを倒していけば報酬が上乗せされるのはうれしい仕組みだ。これからも余裕があったら、狙っていくのもありかもしれないな。
それじゃ、金も手に入ったことだし、服を買いに行きますか。予算が増えたからちゃんとしたやつを買おう。金が足りそうになかったら一番安いやつ下さいって言うつもりだったんだよな。マジでラッキー。




