金を稼ごうと思ったらやっぱり討伐クエストだよな
セイラちゃんの作った朝飯はとても美味かった。しかも宿泊した人は無料で食べられるらしい。ほんとにサービスが素晴らしい。
腹ごしらえを済ませた俺は、冒険者ギルドへと向かう。
昨日の夜考えていた通り、今日は討伐クエストに挑戦してみよう。無理だと思ったら、危なくなる前に帰ってきてしまえばいいのだ。幸いなことに俺の残金は銀貨1枚と銅貨が2枚。チャーハンを食べてももう一泊することができる。今日無理だったら、明日また薬草を採取しに行けばいいだけの話だ。とはいえ、ずっとそのループを繰り返していても何も前に進まないので、一発でクエスト成功を目指して頑張ろう。
冒険者ギルドに着いた俺は昨日と同じようにクエストボードから手ごろなクエストを探す。
右の方が弱いモンスターなのは、もう把握しているので、まずは、右側から見てみると、スライムの討伐クエストや、ゴブリンの討伐クエスト、コボルトの討伐クエストなど、難易度がEランクに設定されているものが見つかった。
ちなみに、Eランクとは、駆け出し冒険者が挑むように用意されているようなクエストの難易度だ。D、Cとなればなるほど難易度は上がるみたいだ。ここにあるもので一番ランクが高いクエストはAランクに設定されているので最終的にはAランククエストがクリアできるように頑張ればいいはず。
「思いの他、いろいろあって悩むな。本当に一番簡単な討伐クエストでいいんだけどな」
何個か候補を選ぶことができたのだが、Eランククエストの中での難易度の違いまでは書かれていないので、ここから絞るのが難しい。何とか、絞ろうと考えて紙を眺めていたら、下の方に報酬の金額が書かれていることに気が付いた。
なんで今まで気が付かなかったんだ? 報酬が高いほうが難しいに決まっているじゃないか。これで今日行くクエストは決まったも同然だな。
えーと? スライム討伐が銀貨3枚、ゴブリンが銀貨3枚に銅貨5枚、コボルトの討伐が銀貨4枚か。
この金額の差だとスライム討伐クエストに行くくらいなら、薬草採取でいいんじゃないかってなっちゃうな。どうしようか。ここは真ん中をとってゴブリンの討伐クエストにしておこうかな。倍近くの報酬が貰えるわけだしな。
そうと決まれば早速クエスト受注だ。
紙をはいで、受付のお姉さんの列へと並んだ。
「あれ? マサタカさん今日は討伐クエストに行くんですか? お一人で行くのでしたら十分気をつけてくださいね。まだ昨日冒険者になったばかりの駆け出しの中の駆け出しなんですから」
「わかってますよ。危ないなと思ったら今日は帰ってくるつもりです。何とか今日泊まれるだけのお金は持ってますから」
「それでしたら、きっと大丈夫ですね。ご武運をお祈りしています」
冒険者カードとクエストの紙を渡すと、昨日と同じように光になってカードの中へと吸い込まれていった。
見るのが2回目じゃまだこの光景には慣れることはできないな。どうしてそうなるのかがさっぱりわからない。異世界は不思議でいっぱいだ。
無事にクエスト選びと受注まで終えた俺は、冒険者カードに表示さてたゴブリンの生息地を目指して出発した。
どうやら、ゴブリンも昨日の森に生息してるらしい。薬草の群生地よりももの深い場所になっているので昨日よりは歩かないと行けない。
ちょっと遠いな。少し早歩きで行く? でも昨日よりも大分早い時間に出発しているから急ぐこともないか。時間はたっぷりあるんだ、焦らずにいこう。
町を出て、しばらく続く平原を歩いていると、ふとまったく意識したいなかったことが頭をよぎる。
「やばい、俺武器持ってない。何意気揚々と素手で討伐クエストに出かけちゃってるんだよ」
俺はあほなのか。モンスターと戦うってなったらどう考えても武器は必要だろ!! 服を買うのを目標にするのはいいが、武器も買わないとダメじゃないか……でも、俺が武器を買ったところで使えなくないか? スキルは補正を受けられるようなものじゃないし、部活でそれっぽいものを使ったこともない。くそぉ、こんなことになるんだったら剣道習ってればよかった。何、呑気に卓球部なんて所属してたんだ俺は。ラケットで戦えるわけないだろ。ああぁ、俺には卓球で鍛えたスマッシュしかないぞ。しかも最高成績2回戦進出だ。役に立つわけがない。
「今日は一回諦めて武器が買えるまで薬草採取を続けるか? いや、そんな効率の悪いことできないよな。俺も転生者の端くれだ。女神様からもらったスキルで雑魚モンスターくらい狩りつくしてみせる」
覚悟を決めた俺は、シャドーボクシングをしながら、森を目指した。シュッシュ!!
やっと着いたか。まだ、森に入ったばかりだから、ゴブリンが出てくるってことはないんだよな。はぐれゴブリンが現れて急に戦闘なんてよしてくれよ。
ここに至るまでずっと続けていたシャドーボクシングだが、始めた時よりもパンチの速度が上がっているような気がする。これが、女神さまからもらった成長スキルの恩恵だと信じ、目的地へ着くまで続けることを心に誓った。
「よしっ、このあたりだな。よっしゃ!! どこからでもかかってきやがれゴブリンども」
シュッシュッシュシュ!!
さらに速度を増している俺のこぶしは現在、風を切る音でモンスターが逃げ出していかないか心配なレベルへと達している……はずだ。
「おらおら来やがれ!! びびってんのか!!」
自分を鼓舞するためにひたすら叫ぶが一向にゴブリンたちが寄ってくる気配はなかった。
「ちっ、俺にビビって逃げ出したようだな。ったく、根性なしのモンスターだな。せっかく、道中で鍛えた俺のワンツーをお見舞いしてやろうと思ったのにな」
――――ガサガサ。
「うわ!!」
後ろのほうから葉っぱが擦れる音がしてつい声をあげてしまった。
不覚だ。まさか葉っぱごときに驚いてしまうとは……いや、葉っぱなんかビビる俺ではないな。これはゴブリンが立てた音に違いない。
ゆっくりと後ろを振り返ると、こん棒のようなもので武装したゴブリンがまっすぐにこちらを見ながら立っていた。




