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いい旅館だ

 案内された部屋に入ると、木造アパートの一室みたいな感じで思っていたよりも綺麗だった。

 こんなこと考えていたら失礼かもしれないが家族で経営しているとなるとどうしても手の行き届かない場所もあるんじゃないかとか思っていたが杞憂だったようだ。


「また明日も泊まりたくなったら、いつでも言ってくださいね。それじゃあ私はこれで失礼します」


「ああ、ありがとう」


 女の子はそれだけ言うと、忙しそうにどこかへ行ってしまった。

 名前もまだ聞けてなかったな。もしかしたら、長い付き合いになるかもしれなかったのに……次会ったら聞いておこう。それに、あの子のお母さんにもまだ会えてないしな。


「案外落ち着くな。今日はほんとにいろいろあって大変だった。はあ、疲れた」


 そのまま寝てしまおうかとベッドのほうへと向かったがすんでのところで踏みとどまった。まだ風呂入ってなかった。でも入ったところで着替えもないんだよな。まさに異世界の洗礼だ。早いところ服を買わないとずっとこの黒地にローマ字Tシャツで過ごす羽目になってしまう。今更ながらもう少しましな服を来ておけばよかったと後悔してしまう。


「考えてもしょうがない。ちょっとさっきの子に服がないか聞いてみよ」


 さっさと寝たいので急いで、受付へと向かった。




「あれ? お客様どうしました? 何か用事ですか?」


「ごめん、風呂入りたいんだけど服がこれしかなくてさ。なんか着れそうな服とかないかな」


 予備の服すら持ってないって怪しい気もするが、本当に持っていないのだからしょうがないよな。恥を忍んで聞くしかないんだ。


「えーと、服ですか? ……あ、私のじゃ入らないだろうし……そうだ!! お父さんの服なら大丈夫かも。わかりました。ちょっと待っててください。確認してきます」


 そういうと女の子はまた奥の部屋へと消えていった。

 流石に俺もあの子の服を貸してもらうのちょっとな。いい子過ぎるかもしれないな。




 少しその場で待っていると、服を手に持った女の子が戻ってきた。


「お待たせしました。お父さんの服で申し訳ないんですけどこれでもいいですか?」


「全然大丈夫だよ。ありがとう、無茶言ってごめんね」


「いいんですよ。お客様は大事にしなさいっていうのが代々先祖から続くうちの家訓みたいなものですから。今着ている服ですが、お風呂に入った後にでも渡してもらえれば洗濯しておきますよ」


 素晴らしい旅館だ。最初の高級宿に泊まれなくて残念だった気持ちがもう一切残っていない。あそこで値切るの断られてよかったな。


「それじゃあ、お願いするよ、それと俺マサタカって言うんだ。よろしく」


「マサタカさんですね。私はセイラって言います。こちらこそよろしくお願いします」


 セイラちゃんか、今後もこの旅館に泊まろうかと思っているから、しっかり覚えておこう。




 お風呂の場所も教えてもらい、サクッと入浴を済ませた俺は洗濯物をセイラちゃんに預けて部屋へと戻った。


「明日からどうしようかな。とりあえず、金をもう少し貯めておこうか。でも女神さまからの魔王を倒すってお願いもあるからな、討伐クエストにでも行ってみようか」


 俺に与えられたスキルは能力向上と成長限界の突破だからなぁ。いますぐに最強って訳じゃないんだよな。地道に修行を重ねて行って最強へと至るみたいな感じだから、割と気長に構えてないと行けないのがつらいな。ほかの転生者たちは最強スキルの数々を持って魔王に挑んでは負けてるんだからな。当面はレベル上げのような作業になるのだろうか。俺も最強スキルもらって気楽に行きたかったな。


 でも単純に強いスキルだけじゃ魔王は倒せないみたいだし、すぐに挑んで殺されてしまうのはなんで転生したかわからなくなるからこっちのほうがいろいろ楽しめてお得なのかもな。既にメッチャ美味いチャーハンも食ったことだし。


 そうこう考えていたら本格的に睡魔が襲ってきたので、面倒なことはすべて明日の俺に任せて寝ることにした。






「……はわぁ、もう朝か」


 カーテンの隙間から差す日の光の刺激で目を覚ました。


「よしっ、今日も気合い入れて頑張って金を稼ぐぞ」


 とその前に腹が減っては金も稼げないので、朝食を食べておかないとな。セイラちゃんに何かないか聞いてみよう。なかったら、美味しい飯屋教えてもらえばいいし。


「でもこの服で行く訳にも行かないからまずはセイラちゃんに頼んで置いた服が返ってくるまではこの旅館で待機だな。いつぐらいになるか聞いてみよっと」


 そう考えて、部屋を出てみると、扉の横にかごが置かれていた。

 中を見ると、俺が昨日来ていた服が綺麗にたたまれて入っていた。


 おいおい、いくら何でも仕事が早すぎるだろ。パナイってセイラちゃん。


 脳内でセイラちゃんへのお礼を繰り返しながら、俺はもと着ていたローマ字Tシャツへと着替えた。

 俺の服の洗濯をしてくれていたとなると、流石に朝は起きれてないじゃないかな。もしかしたらお母さんが朝は担当していたりするのか?


 俺はどうでもいいことを考えながら、部屋を後にし、受付へと向かった。


「あら、おはよう。あなたが昨日から宿泊してるマサタカさんね」


「おはようございます」


 この人がセイラちゃんのお母さんか、こう見ると結構面影があるな。美人だわ。


「セイラちゃんにはいろいろお世話になって本当に感謝しています」


「よかったわ。それでマサタカさん今日も泊まっていくの?」


「はい、そのつもりです。それと朝食はありますか?」


「ええ、いまあの子が準備してると思うから、向こうの食堂に行ってみて」


 セイラちゃん朝ごはんの準備までしてるのか。どこまで優秀なんだ。

 それじゃ、朝ごはんを食べて、ギルドに向かうとしますか。

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