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作者: 揚羽蝶

 実家にあった三面鏡。その観音扉の隙間から覗き込み、どこまでも続くパラレルワールドに引き込まれるような感覚が好きだった。無限に広がる不思議な世界。


 久々に実家に帰ると、三面鏡は以前と変わらない場所に鎮座していた。久しぶりに見ると、こんなに小さかったかしらと思う。


 普通に扉を開ける。真正面、左右の自分の顔。正面のいちばん大きな鏡は角度を上下に動かして変えることもできる。左右の鏡を合わせ鏡にすれば、自分の頭の後ろまで見ることができる。


 便利なものだなぁと、改めて思う。


 そしてパラレルワールドを覗き込む。何も起こらないとは分かっていても、何故かわくわくしてしまう。

 

 私はあなた。あなたは私。


 そう唱えると、鏡の中全員の私が同じように口を動かす。

 

 私はあなた。あなたは私。


 …ここにいる私は誰?どれが本当の自分?

 鏡の中に手を伸ばす。

 

 当然、私の手は空を切るだけ。

 

 その手を今度は自分の頬に当てる。


 大丈夫。私はここにいる。不思議な感覚にとらわれ、一度目を閉じて深呼吸する。


 私は私。


 目を開ける。目の前にはさっきと変わらないパラレルワールド。無限に広がる不思議な世界。


 「ご飯よ〜!早く来ないと冷めちゃうわよ」


 台所から母の声。そういえばお腹がすいた。


 「はーい」


 答えて鏡の外に出ていったのは…誰?


 私はあなた。あなたは私。パラレルワールドのなかの私たちが、にやりと微笑んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三面鏡への好奇心、自分も身に覚えがあるなと思い出した作品でした。 鏡から離れた人物が、本当に覗いた人物なのか、それとも鏡のなかに映った人物なのか、確かに確認するすべはないですよね。 じんわ…
[一言] 拝読いたしました! 合わせ鏡って不思議だけど何となく怖くて覗きたくなりますよね。たくさんの自分の顔を見ていて、どれが本当の自分かわからなくなる感覚。…わかります! 今いる自分が偽物である…
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