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翌日、午前十時半。中野区にある自宅から、わざわざ千葉の北東部にまで来た鷺宮は、朝からやや疲れていた。無難な格好をした彼女は、待ち合わせの小さな駅で先輩の米倉を探す。
「鷺宮、おはよー」
そのとき、右方から米倉がやってきた。ショートヘアを揺らしながら駆け寄ってくる彼女の服装は、今流行りのスタイルだ。
「朝早くからお疲れー。遠かったでしょ?」
「まぁ、全然近くはなかったですね……」
三回の乗り換えを経て、掛かった時間は二時間半。たった一つの怪しい情報を頼りに、お金も時間も掛けてしまった。
「先輩の最寄りって、この駅ですか?」
「そーそー。んじゃ、さっさと行こうか」
米倉はササッとスマホをスクロールすると、「ついてきて」と合図を出した。彼女の話だと、例の佐宗神社は駅の近くにあるらしい……。
米倉が紹介した佐宗神社は、思った以上に小さな神社だった。鳥居が一つに、祠が一つ。それだけしかない。
「……ここですか?」
「うん。ここ」
鷺宮はガックリと肩を落とした。本当に、何もない。
「やっぱり、嘘情報じゃないですか!」
「なんか、そうっぽいね」
米倉も曖昧な笑みを浮かべ、鷺宮に対して同情の視線を送った。徒労とは、まさにこのことだろう。
「はぁ……。もう帰ります……」
「あー……。せっかくだし、カフェにでも寄ってく? 最近できた店なんだけど……」
二人は肩を並べながら、踵を返して歩き始めた。これからの時間、一体どう過ごそうか……。