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佐宗神社の桜も咲き終わり、世間的には明日からゴールデンウィークといったところだ。ルンシュと一緒に朝ご飯を用意していた犬掛は、自室からのそのそと出てきた彼に声を掛ける。
「ラスタ、朝ご飯食べますか?」
「あ? ああ……」
少しボサついた赤褐色の短髪に、眠そうな紫色の瞳の青年。ここ数日昼夜逆転気味の彼は、暫定最後のメンバーであるラスタだ。黒いジャージを着て、しきりにあくびを繰り返している。
「……牛乳」
「ん、サンキュー」
ルンシュからグラスを受け取った彼は、そのままちゃぶ台の下まで行くと、畳の上でゴロンと横になった。スマホで情報をチェックしながら、片足で器用にもう片方の足を掻いている。
「ラスター! おはよー!」
彼の様子を見たフェンリルが、お腹にダイブを食らわせた。「ぐへぇ!!」とうめく彼をよそに、頭をグリグリと擦りつける。
「ラスタ! おれに構え!」
「何だよ……。サニーはどこ行った?」
「まだ寝てる! おれヒマ!」
「構え!」を連発する彼に、ラスタは億劫な表情を浮かべる。こう見えて、情報収集に忙しいのだ。
「しゃーねぇなぁ……」
ラスタはボリボリと頭を掻くと、素足のまま外に出た。神社の少し開けた場所まで来ると、そこでパチンと指を鳴らす。
――突如、上空からバサバサッと音が聞こえてきた。「旦那ー! お呼びですかー?」という陽気な声とともに現れたのは、なんと巨大なレッドドラゴン。立派な体躯と威厳のある両翼。その大きな口からは、今にも火炎が飛び出そうだ。
「フェンリルを乗せて、その辺をブラブラしてこい」
「了解でーす!」
ドラゴンは柄にもなくウインクをすると、フェンリルをヒョイと摘まんで頭の上に乗せた。「それじゃ、出発しまーす!」とアナウンスすると、再びバサバサッと地面を離れる。
「おーー!! 高ーーい!!」
みるみるうちに遠ざかっていくドラゴンを見て、ラスタは居間へと戻っていった。ドラゴンナイトの特権としてドラゴンを使役できる彼だが、この世界ではいまいち有意義な方法が思いつかない。しかしだからといって、再び死ぬような戦闘には巻き込まれたくなかった。




