6.魔導兵士術士の政治談議1:形式変遷
いらっしゃい、よく来たね。ここはとある世界の酒場で語られた話の集う場所だ。勿論酒場としても機能している。ゆっくりしていってくれ。
さて、今回からまたあの世界の歴史の話に戻ろうと思う。
で、だ。魔法を持っている世界の国はお前たちの世界の国と少し抱えるべきものが違ってくるわけだ。
声を反映し、それを実行するためには支援が必要となる筈だ。お前たちの世界では「税金」などという形でその支援を行っていると聞く。労働の報酬や必要物との交換のために「お金」というものを指標として定め、お金で協力関係を回しているとな。
ただ、魔法が存在する世界ー私の知る世界では代わりに「魔力」や「魔法」を介して支援を行うことも可能だ。政治において、時としてそちらでいう「お金」と同義で扱われることもある。
というところでこの話だ。二日分はあるから次のものとセットになるな。まずはこちらを…と。
では、会話を向こうの席に再現するからもう少し待ってくれ・・・
昔から生き抜くためにグループを結成することは常套手段だったよな。
人間だって例外じゃねぇ、今の「国」って概念もその延長なのだろうしな。
っと、今日はその話を肴に呑むか?安心しろ、ちゃんと仕入れてあるよ、その情報はな。
まぁ、魔導兵士術を学んでると関係する話として話題に上がるから調べてるだけだがな。
まぁ、生き延びるために仲間同士纏まるのはどの種族でも変わらねぇが、人間は国という単位を纏めるのに様々な試行錯誤を繰り返してきた。
メジャーどころはリーダーを一つ決める形式だな。
最初に力を持った人間国家がその形式をとっていた。
要塞都市国家と呼ばれたそれはどれだけ攻められようと構造的に盤石な街はもちろん、その内部も信頼されたリーダーによって統率されていたと聞く。
攻められようにも突破できない一枚岩が陥落を許さなかったからこそ外から攻め滅ぼす事は出来なかった。
が、勢力拡大の勢いもさることながら勢力衰退の勢いも早かったと聞く。
地位に甘えたリーダーが堕落したせいで市民の反感を買ったのだな。
リーダー制に不信感を持った市民は信頼できる人間を複数選出し、堕落をなるべく生まないようなシステムを考え出した。
複数の代表が話し合う、いわゆる議会制と呼ばれたシステムだな。
その間に民主主義なる派閥も生まれたが、その時には魔力で色々と賄う技術が一旦完成していてな、それの利用を求めるうちにほぼ議会制の形になっていたわけさ。
そもそも当時の議会制が民主主義の目標を叶えたようなものだからな。
大きな混乱もないうちはその形式が最適といえるが、万能と呼べるわけでは無い。
混乱期になるとその形式をとる国家は減っていった。
不満だの欲だのを武力で訴える時代に対応できるか、と言われればどうだい。
そうでなくとも蜂起するのにはそれを仕切る者を据えた集団が生き残りやすいことには違いない。
雑に指揮していると負けるからな。
当時の指揮系統で完成されていたのは海を背負ったセイナス、魔道都市連合のラウモ、内陸帝国のマガスが代表に上がるね。
学んでいるものの都合上、マガス以外については語れるほど知ってはいないがな。
まぁ、マガスも混乱期国家の例にもれず王政をとっていたらしいぜ?ただ、内政には軍部の交渉担当を招集して各都市の相談に当たらせていたらしい。
マガスが採用していた魔導兵の中にはその役割を分担させるために設計された者もいたって話だ。
混乱期が終わると国家の入れ替わりや政治改革が各地で起こった。
平和利用できる仕組みを残して滅ぼされた国もいくつかあるがな。
マガシアに討ち滅ぼされたマガス帝国がいい例さ。
そんなこんなで仕組みも落ち着いたころにマガシアからドゥーマにわたった学者がいてな…
いや、もう遅いな。続きはまた今度話すよ。
変更履歴
後半部の「ラウモ」の肩書き
ドゥーマ系統教義→魔道都市連合