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6.一つに見えて七つのものはな~んだ?

すっかり日も落ち暗くなった夜道を俺は力無く歩いた。

月明かりで辛うじて見えているが、足場の悪い道は俺に疲労を押し付ける。

魔物もふらつきながら後ろを付いてくる。

飲み会の後で腹は減ってないかったが、慣れない環境で疲弊していた。

魔物も体力がないのに無理に暴れたせいで今にも倒れそうだ。

元気なのはナビだけだった。


「振出しに戻りましたね。しかし、ポイントは三つ獲得しました」


あの状況下で村人からもポイントが貰えたらしい。

これでポイントは四つ。

無難に魔法を取るか、冒険してスキルを取るか。

疲れて思考が纏まりそうにないが、泣き言をいっている暇はない。


「もしこの地を食糧豊富な地に作り替えるスキルが欲しいと言ったら、それは出来るのか?」


ナビにダメ元で聞いてみる。

壊れスキル過ぎるし、十中八九無理だろう。


「可能です」

「出来るのかよ!」


びっくりして、さっき貰った食べ物を落としてしまった。


「可能ですが、新たな争いを生むことになるかもしれません」

「どういう事だ?」


魔物が待ってましたと食料に飛びつく。

まだお前にやった訳じゃないと思いながらも、ナビとの話に集中したいこともあって、もう良いかと話を優先させる。

言うなれば、おすわりすらしていない犬にご飯を食べられてしまって、もうがっついてる犬に良しというダメ飼い主だ。


「この地が食料に富んだ地と知れれば、移住してくる者が現れます。食料が足りている間は良いでしょうが、不足したとしたら、もし何者かが私物化しようと考えたらどうなりますか」

「……争いが起きる」


それならどうするか。

全世界に広げたとしたら、食糧難に苦しむ生物はいなくなるだろう。

そして、この世界は生物で溢れかえりパンクする。

溢れ返らない様に土地を広げたとしても、現状に戻るだけで堂々巡りだ。

全てを救おうとするから無理が出る。小さな変化で良いんだ。

小さな変化。村人だけが満足する量の食糧があればいいのか。

駄目だ。それだと今回のような事態がまた起こりかねない。


もう一度よく考えてみろ。

俺が見た村は貧しかった。だが、まったく食料がなかったのか。

貧しいなりに生活のサイクルは回っていたんじゃないのか。

俺が村に行き、そこに魔物が出たから大変な状況で生きていると勘違いしただけだとしたら。

俺が助けるべきは、ここにいる魔物。

この魔物も食料があれば村を襲わなかったはずだ。

俺は何かが掴めたような気がした。


「お前はなんで、そんなに死にそうになったんだ?」


食料にがっつく魔物に問いかける。


「俺達はこの地に流れて来た新参物」


魔物はもさもさと毛を揺らしながら話し始めた。

話を要約すると、北から流れてきた魔物で、この地の魔物に追い立てられ瀕死の状態で村に行きついたという。

この地では村の南北で魔物が対立しているらしい。

魔物という大勢力同士が争い、小勢の村は相手にされていないのだろう。

微妙なバランスで村の安全は守られてると言える。

魔物同士だとしてもどちらの勢力にも受け入れてもらえなかったこの魔物は、行きつくべくしてあの村へ辿り着いたのだ。


この状況を変えるにはどうすべきなのだろうか。

どちらかの力が強まればバランスが崩れ、片方の勢力もろとも村は滅んでしまうだろう。

村の勢力が強まったとしても出る杭は打たれる。


「一つ案があるんだが、上手く行けばお前の居場所が出来るかもしれない。乗ってくれるか? モフモフ」

「モフモフ?」

「名前ないと不便だろ。それよりどうするんだ?」


俺は決意の固まった表情でモフモフを見た。


「俺達の恩人の言葉だ。乗らないはずない」


この時、俺達は本当の仲間になった。ゲームであれば効果音がなっていただろう。

とりあえず今は体力回復のために睡眠だ。

しかし、ここに安全な場所などありはしない。

どうするか悩んでいる俺にモフモフは心配するなと全身に力を込める。

モフモフから小さなモフモフが転がり出てきた。


「俺達は一つにして七つ。七つにして一つ」


大きなモフモフが七つに分かれ、小さなモフモフたちが声をそろえて話し出す。


「二つが見張り、五つが眠る。何時でも安全」


他の魔物の縄張りで生き抜いてきた謎が、少し分かったような気がした。

そして俺達と言っていた意味も。


俺達は身を潜めるのに適した場所を探す。

暗い森の中、土魔法で柔らかくした地面で俺はなんとか眠りについた。

ここからは話の筋とはあまり関係ない話です。


「寝る時は二つが見張り、五つが眠る。狩る時は三つが押して、四つが後ろに付く」

「なるほど。色々考えてんだな」

「俺達、頭使って考えてる」

「でも、戦う時は一つで良いんじゃない?」

「はうぅっ!」


この後、秘かに落ち込むモフモフの姿があった。

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