2.スキルポイントの稼ぎ方
三十分程で村に着くと言っていたが足場の悪い道を歩いて十数分、まだ村がある気配はない。
曲がりくねった道は人通りもないことから使われているように見えなかった。
しかし、そこここに草は生えているが道幅を広く感じた。
これも俺がこの世界に来た影響か。
体力的に余裕はあるが他にも心配がある。
俺はたまらず先導するように浮いているナビに声をかけた。
「この世界のこと何も知らないんだが……」
この世界について俺が知っている事はあまりにも少ない。
この世界のナビゲーターと言うからには、数多の情報を持っていると考えられる。
しかし、俺が引き出すワードを知らなければ宝の持ち腐れとなる。
ナビが辞書と言う存在ならば、生きていくには自分で遣り繰りしていかなければならない。
選択を誤ればすぐに死んでしまう可能性もある。
この世界には魔物がいるのだ。
ナビの話が全て本当ならという前提だが、疑っていてもしょうがない。
「この世界は、強くイメージされた構築、自然、魔法、多種族、中世等を元に作られています」
全ての言葉が俺の心を擽った。
ゲームや映画といった仮想空間に入り込み、想像を膨らましたことは一度や二度ではない。
仕事漬けな詰まらない人生を歩むなら、俺が思い描いた素材にスパイスを加えた世界に人生を賭けてもいいんじゃないか。
忘れかけていた思いが膨れ上がった。
今までだって真面な目的をもって生きてきた訳ではない。
だが、今の俺は望んでいた世界の中にいるのだ。
目的をもってこの世界を旅するのではなく、目的を探す旅。
いい機会だ。俺が何をやれるのか試してやる。
落ち着けと必死に躍る気持ちを鎮めていく。
ここで浮かれて肩透かしを食うかもしれない。
「それで、敵を倒しながらレベルを上げていけばいいのか」
「レベルはありません。あなたが望んだのは《《加算式》》。魔法、スキル、装備アイテムを増やすことで選択の幅が広がります。同時に《《狭く深く》》を選ばれたので魔法はツリー状になってます」
敵を倒しながら経験値を稼ぐ世界ではなさそうだ。
そうなると、するべき事より出来る事を知った方がいいかもしれない。
「魔法?! 俺にも使うことが出来るのか」
「地玉、水玉、火玉、風玉の四属性魔法は今すぐにでも使えます」
ナビの説明と共に半透明の画面が開く。
画面上部に先ほど言った四属性魔法が白く表示されていた。
そこからツリー状に下へ伸びた先は灰色で表示され、まだ使用できない事を現している。
属性ごとに単体攻撃、複数攻撃、身体強化、魔法障壁の四方向に伸ばしていくようだ。
毒、麻痺、睡眠といった属性もあり、色々と駆使して戦いましょうとナビは説明していく。
「右上のポイントと交換で魔法を取得出来ます。一ポイントで一つと考えてください。ポイントの貯め方ですが、相手にとって良い事をすれば貯まります」
「世の人々を助ければポイントがもらえるのか」
「助ける対象は人でなくても構いませんが、敵対している存在の印象は悪くなります」
「ポイントを取るか印象を取るか、選択で環境が変わるのか」
「作戦次第でポイントを多く取れます。例えば、魔物が村を襲う前に片付けてもポイントは貰えません。しかし、村が襲われている最中に倒せば、住民からポイントを得られるでしょう。先に魔物の計画に荷担してポイントを稼いでおけば、裏切りがバレたところで後の祭り」
「そこまでしないといけないのかよ」
「人の村で静かに暮らすならば全く必要ないでしょう」
「じゃあ、さっきの鬼畜のような説明いらねえじゃねえか!」
画面を透過して俺のパンチがナビに炸裂した。
満足げに地面に叩きつけられたナビを見ていた俺だったが、画面の変化に気付く。
画面がスライドしてスキルと表示されていた。
他にあるのはポイントだけだ。
「なんだこの画面?」
「スキル画面です。ポイントを二つ使う代わりに、独自に考えたスキルを取得できます」
しかし、ナビは現状お勧めしないと続けた。
知識がない今取ったとしても無駄になる可能性が多いというのだ。
際限なくポイントが取れるなら片っ端から取れば良いが、忠告するって事は違うのだろう。
そうなると情報が欲しいが、ナビから情報を聞き出せたとしても判断材料がない。
過剰に情報を得ても余計に混乱するきもするし、これはポイントを貰ってから考えよう。
そのころには多少情報を得ているはずだ。
まずは手持ちの魔法を調べるか。
俺は画面をスライドさせ、魔法の表示に戻した。
ここからは話の筋とはあまり関係ない話です。
ナビゲータとは案内や誘導をする人の事である。
「私は教える立場という事。これは重要な役であり、私以外には務まらない仕事です」
ナビは燃えるような熱い思いで、目の前の男を見ていた。
ナビの決心、それは教える立場の者として敬語を絶やさないという事。
しかし、それを重視する為、導いてる方向が違おうとも気づかないのであった。