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3枚の封筒

作者: チグ

私は先日、某大手企業の社長に任命された。本来は喜ばしいことなのだが、正直荷が重い。理由はいくつが挙げれるのだが強いて1つ挙げるとするならば

前任が優秀すぎた

といったところだろうか。私の前任はこの企業が日本の看板を背負えるぐらいにまで1人で育て上げた手腕である。しかし何故かその社長が突然辞めると言い出した。そこで後任として私が就いた訳だ。



前任の最後の出勤日、私は前任に渡したい物があると言われ、呼び出された。

「これから君にはたくさんの困難が待ち受けていると思う。もし、君の前に自分の力では乗り越えられないだろう。その時はこの1、2、3と書かれた封筒を1枚ずつ開くといい。それまでは大切に保管しておきなさい。分かったね?順番にだぞ?」

そう社長は言い、私に3枚の封筒を渡した。私は社長の言った通りに封筒を自分の仕事机の一番下の引き出しの一番奥にしまい込んだ。



それから数ヶ月、私はとある問題の前に頭を抱えていた。会社の経営は傾き始めていた。どうすればいいものか。封筒のことを思い出すのには少し時間がかかった。私は急いで自分の机に戻り誰にも見つからないようにしまい込んだ封筒を1枚取り出した。封筒には大きく1と記されている。その封筒の中には達筆な字でこう書いてあった

「問題の責任を全て私の責任にしなさい。それを記者会見で発表しなさい。」

私は直ぐに部下に指示を出し記者会見を開いた。もちろん内容は今回の問題は全て前任のミスであったというものであった。

それからというもの会社の評判は徐々に回復していき、経営も上手くいくようになっていった。



社長の仕事にも慣れてきた2年目、私はまた別の問題に直面した。もう前任のせいにはできない。私はまた封筒に頼った。2枚目の封筒も1枚目同様、達筆字でこう書いてあった

「人事を整理しなさい」

私はそれに従い自分の部下を一斉に入れ替えた。内部からはいくらなんでもやりすぎなのではと非難された。もちろん私も同じことを思っていた。しかし前任が言っているんだ。良い方向に傾くのだろう。

そうしていると会社はまた勢いを取り戻した。その勢いに反比例していくかのように社内からの非難の声は少なくなっていった。



その問題から1年半、私はまたもや新しい問題の前に足踏みをしていた。しかし大丈夫だ。まだ私にはもう1枚封筒がある。これ通りに従えばまたきっと上手くいくだろう。私は本来、笑っている余裕がない状況の中ウキウキ気分で封筒の元へと向かった。仕事机の一番下の引き出しの一番奥。これからちゃんとしなければ、次からは失敗できないと考えながら大きく3と記された封筒を取り出し、開いた。その封筒にはこう書かれてあった


「今すぐ封筒と紙を3枚用意しなさい」


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